フェミニズム殺人事件(筒井康隆)の1分でわかるあらすじ&結末までのネタバレと感想

フェミニズム殺人事件(筒井康隆)

【ネタバレ有り】フェミニズム殺人事件 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:筒井康隆 1989年10月に集英社から出版

フェミニズム殺人事件の主要登場人物

石坂(いしざか)
小説家。

新谷早苗(しんたにさなえ)
産浜ホテルの支配人の妻。

竹内史子(たけうちふみこ)
衣料品メーカーの開発担当部長。

長島(ながしま)
不動産会社を経営する。

宮田(みやた)
和歌山県警の警部。

フェミニズム殺人事件 の簡単なあらすじ

作家の石坂が今年の夏休みを過ごす場所は、風光明媚なリゾート地・南紀海岸にある産浜ホテルです。シェフが腕によりをかけて振る舞う豪華なディナーを堪能しつつ、支配人の新谷夫妻の心の籠ったおもてなしを受けることが出来ます。大学教授に大企業の重役まで個性豊かな招待客との時間を楽しむはずが、哀しい事件に巻き込まれてしまうのでした。

フェミニズム殺人事件 の起承転結

【起】フェミニズム殺人事件 のあらすじ①

リゾートテイスト溢れるホテル

小説家の石坂が和歌山県南紀へ夏季休暇で訪れるのは、実に6年ぶりです。

滞在先は無人の砂浜に面した崖上に建っている産浜ホテルという名前の会員制リゾート施設になり、オーナーの新谷氏と妻・早苗さんと久しぶりの再会を果たしました。

6年前に泊まって気に入っていた角部屋の6号室は会社社長の小曽根氏と妻・美代子が使っているために、石坂は5号室に案内されます。

石坂の右隣の席には美代子夫人、左隣にキャリアウーマンでフェミニストの竹内史子、正面は小曽根氏、小曽根氏の右に不動産会社経営の長島氏、左に石坂の大学時代の友人・松本。

6人の招待客が席に着いて夕食がスタートします。

オードブルの伊勢海老からメインディッシュの鱸に最高級ワインに〆のデザートまで、全てが6年前と変わりません。

ただひとつ気掛かりなのは、早苗さんが石坂の持っていた赤革の手帳を見て酷く取り乱してしまったことです。

食後に長島氏は1号室、竹内史子は2号室、松本は3号室へとそれぞれ引きあげていくのでした。

【承】フェミニズム殺人事件 のあらすじ②

優雅なバカンスが一転して

午前7時にベッドに横たわってぼんやりと煙草を吹かしていた石坂が聞いたのは、食器とグラスの割れる激しい音です。

朝食を部屋まで運ぼうとした早苗さんが助けを求めてきて、長島氏が1号室で亡くなっていることを告げました。

新谷支配人が全従業員に指示を出して館内を隈なく捜索しますが、侵入者は見つかりません。

早苗さんの通報を受けて駆けつけてきた和歌山県警の宮田警部の調べからは、産浜ホテル全体と長島氏の客室が密室であったことが判明します。

亡くなった長島氏は不動産会社のビルの他にも、別荘を所有していて如何わしい商売にも手を出していたようです。

宮田警部の立会いのもと、ロビーのテーブルには長島氏の遺品がズラリと並べられています。

長島氏が肌身離さず所持していた赤革の手帳が紛失していることに気が付いたのは、衣料品メーカーに勤務していて他人の持ち物には目ざとい竹内史子です。

石坂の持ち物と同じタイプになり、早苗さんが気にしていた例の手帳でした。

【転】フェミニズム殺人事件 のあらすじ③

第2の悲劇と結び付く被害者たち

長島氏の別荘でお葬式が行われるために、一同を代表して新谷支配人が参列することになりました。

泊まり込みで警備の指揮を執ることになった宮田警部を、石坂たちは夕食の席に招いて労をねぎらいます。

丸顔でやたらと愛想が良くて愛妻家だというその人柄は、凡そ殺人捜査のエキスパートらしくありません。

その一方では長島氏はこの土地でも屈指の名士のために、マスコミが注目する今回の事件を解決出来なかった場合には降格は免れないようです。

長島氏の別荘については何か掴んでいるようでしたが、地元住民としては外部の石坂たちに対して口を濁しています。

竹内史子は石坂と松本を誘い合わせ、翌朝別荘に忍び込んで手掛かりを探るつもりです。

3人が計画を練っている間に、早苗さんが何者かに殺害されてしまいます。

早苗さんが衣装道楽のためにお金に困っていたこと、長島氏の裏ビジネスに加担して高額な報酬を受け取っていたこと、赤革の手帳は顧客のリストであることが明らかになっていきます。

【結】フェミニズム殺人事件 のあらすじ④

第3のターゲットと真犯人

別荘に侵入した石坂たちは、この場所を隠れ蓑にして大掛かりな組織買春が行われていたことを確信しました。

更に竹内史子は地元紙の記者と協力して犯人の正体に迫ったようでしたが、あえなくホテルの自室で刺殺体となって発見されます。

ダイニングルームに集まったのは、生き残った石坂・新谷支配人・美代子夫人・小曽根氏・松本・宮田警部です。

警察の監視下で竹内史子が殺されてしまったことを烈しく糾弾したのは、知らず知らずのうちに彼女のことを愛してしまった松本でした。

県警に寄せられていた買春行為に関する密告を握りつぶしていたのは、他ならぬ宮田警部です。

警部の妻までが買春に手を染めてしまったために、斡旋者の長島氏、協力者の早苗さん、調査を開始した竹内史子の3人の殺害を決行したことを自白します。

宮田警部がかつての部下によって逮捕されることで事件は幕を閉じ、石坂は2度と訪れることはないであろう産浜ホテルとその優秀なスタッフに別れを告げるのでした。

フェミニズム殺人事件 を読んだ読書感想

ストーリーの舞台に設定されている和歌山県南紀海岸沿いの豊かな自然と、ひっそりと佇む産浜ホテルが思い浮かんできました。

ホテルの中ではオーナーからシェフに客室係までが、それぞれの仕事に誇りを持って取り組んでいることが伝わってきます。

食事のシーンに登場する地元の海の幸を活かしたメニューも、一品一品が丹念に描写されていて実に美味しそうです。

最高級のホテルには似つかわしくない、凄惨な殺人事件と背後にあるドロドロの人間模様に圧倒されます。

物悲しいラストには、愛すべきホテルとの別れが惜しまれるような気持ちが湧いてきました。

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