「邪眼鳥」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|筒井康隆

邪眼鳥(筒井康隆)

【ネタバレ有り】邪眼鳥 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:筒井康隆 1997年4月に新潮社から出版

邪眼鳥の主要登場人物

入谷精一(いりやせいいち)
生前に歌手として何枚かのレコードを残す。

入谷英作(いりやえいさく)
精一の長男。商社マン

入谷信子(いりやのぶこ)
精一の長女。元編集者で現在は無職。

入谷雅司(いりやまさし)
精一の次男。宝石鑑定士。

入谷春子(いりやはるこ)
精一の後妻。

邪眼鳥 の簡単なあらすじ

莫大な財産を何処かに隠したまま入谷精一が亡くなり、3人の子供たちはその行方を追っていきます。手掛かりとなるのは昭和の初め頃に父が吹き込んだ1枚のレコードと「夏の初戀」、幼い頃に家族でバカンスを過ごした軽井沢にある別荘です。財産の行方に憑りつかれていく3人は、いつしか時空を超えた不可思議な体験をするのでした。

邪眼鳥 の起承転結

【起】邪眼鳥 のあらすじ①

懐かしの歌手の大いなる遺産

昭和初期に歌手として活躍した入谷精一が76才で亡くなったのは、桜が咲き始めた春先のことでした。

8年ぶりに実家の広大なお屋敷に足を踏み入れた長男の英作は、父親の再婚相手・春子の45才とは思えない美貌に驚かされます。

火葬場から戻って身内だけになると、12畳のお座敷に近所の料理屋から食事が運び込まれて早めの夕食です。春子の隣にいる入谷家の専属弁護士・工藤喜久雄が、葬儀の段取りから遺産相続まで全てを取り仕切っていました。工藤が預かった遺言書が発表されて、長男・英作、長女・信子、次男・雅司がそれぞれ1000万円ずつ相続することが決まります。生前の精一は家族に「でかいヤマをアてた」と意味深に語っていて、3000万を遥かに上回るはずです。食後に春子は「夏の初戀」という、生前に精一が吹き込んだ1枚のレコードをかけます。

この曲の中に隠し財産の手掛かりがあると睨んだ英作たちは、レコードをテープ録音したものを自宅で昼夜となくリピート再生するのでした。

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【承】邪眼鳥 のあらすじ②

聞き覚えのあるメロディーとあの人のそっくりさん

商社に勤めている英作は、仕事がらみで狸穴のロシア大使館の職員をしている友人を訪ねる機会がありました。

彼の執務室をおいとまして大通りでタクシーを拾うつもりが、西洋風の建物が立ち並ぶ昭和初期の面影を残した裏通りから「夏の初戀」のメロディーが聴こえてきます。

「NAMIDA」と看板を掲げた小さなバーに入ってみると、ノスタルジックな店内のカウンターの中で英作を出迎えたのは春子に瓜二つの女将さんです。真鍋千鶴とフルネームで名乗るその女性は英作を見てもこれといった反応をしないために、恐らく春子とは赤の他人でしょう。

レコードや蓄音機を始めとするアンティークに造詣が深い千鶴にとっては、入谷精一の「夏の初戀」はお気に入りの1枚だそうです。

英作は精一と自身の関係を、どうしても彼女に伝えることが出来ません。義理の母親そっくりな女将の作ったハイボールを飲みながら亡き父親の歌声を聴いているうちに、英作は知らないうちに涙を流してしまうのでした。

【転】邪眼鳥 のあらすじ③

若き日の父との邂逅と長女の悲劇

信子は幼い頃に父親に連れて行かれた軽井沢の別荘に、遺産の手掛かりがあると睨んでいました。

別荘へと向かう白樺に囲まれた散歩道を歩いていた信子が聞いたのは、「夏の初戀」の調べです。

閉店した喫茶店の蓄音機から流れているようで、早速この土地を管理している不動産会社に問い合わせます。

ずいぶん前に女店主がいざこざに巻き込まれて亡くなった訳あり物件のため、つい最近出版社から退職金を受け取った信子には出せない値段ではありません。

当然の如く信子は土地と建物を購入して喫茶店を経営することになり、店内で父のレコードをかけ続けていました。

ある時に店を訪れたお客さんは、紛れもなく若き日の精一です。

精一は戦時中に軍部の宝石や貴金属を強奪して追われているようで、大きなトランクを持っています。

間もなく闖入してきた憲兵は精一に向けて発砲しますが、流れ弾に当たったのは信子です。

薄れていく意識の中で信子は、昔この地で亡くなった喫茶店の女店主が自分のことだと気付くのでした。

【結】邪眼鳥 のあらすじ④

時空を超えて再会出来るはず

父が若い頃に軽井沢の別荘で強盗騒ぎがあったことを突き止めた雅司は、信子の後を追って現地へと向かっていました。

別荘には既に信子の姿はなく、やけに古いタイプのトランクが置き去りにされているばかりです。

中にはルビーの指輪やダイヤモンドが剥き出しのままで大量に詰め込まれていて、宝石鑑定士の雅司の見積もりでは時価30億円を超えることは間違いありません。

その場に駆け付けた若き日の精一に、賊と間違われて雅司は銃撃を受けてしまいます。

雅司が自らの父によって命を奪われようとしていたその時、実家では奇妙な現象が続いていました。

誰もいないはずの豪邸に鳴り響く侵入警報装置のブザー音、何かを伝えようとするかのように点滅する庭園灯。

長らく入谷家に仕えてきたお手伝いさんが気味悪がって次から次へと暇乞いをする中でも、春子は自分の部屋で招待状を書きながら死んだはずの夫と行方不明になった義理の子供たちとの再会を待ち望んでいるのでした。

邪眼鳥 を読んだ読書感想

入谷精一の葬儀の席で久しぶりの対面を果たすことになった、美魔女の母・春子と血のつながりのない子供たちとのぎこちない会話や気まずいムードが味わい深かったです。

精一の遺言状から明らかになっていく、莫大な遺産を巡る争奪戦に引き込まれていきました。

亡くなった父親が若き日の姿で息子や娘の前に出現するシーンにも何とも不気味ですが、それ以上に生きている人間の欲深さの方がたちが悪いのかもしれません。

過去と現在が入り乱れていく幻想的な展開の中でも、全てを受け入れて愛する家族との再会を渇望する春子のラストシーンには胸を打たれます。

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