「東海道戦争」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|筒井康隆

東海道戦争(筒井康隆)

【ネタバレ有り】東海道戦争 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:筒井康隆 1994年12月に中央公論社から出版

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東海道戦争の主要登場人物

俺(おれ)
物語の語り手。SF作家。

山口(やまぐち)
俺の友人。大阪の放送局のアナウンサー。

邦子(くにこ)
俺のガールフレンド。女子大学生。

東海道戦争 の簡単なあらすじ

大阪市内で家族と共に暮らしている小説家の「俺」はある朝、見慣れた地元にただならぬ緊迫感を感じます。突如として東京が大阪へ侵攻するという不気味なニュースが飛び交い、警察だけでなく自衛隊まで出動するほどのパニックぶりです。些細なデマから幕を開けた東京と大阪の衝突は、何時しか日本列島を二分する「東海道戦争」へと発展していくのでした。

東海道戦争 の起承転結

【起】東海道戦争 のあらすじ①

ある日突然に崩れ去る日常

締め切りに追われていたSF作家の俺は夜を徹して原稿を書き上げて、ようやく明け方になって編集者に渡す連載作品を完成させました。

仕事が終わった途端に朝っぱらから大量のお酒を飲みますが、目が冴えて一向に寝付けません。

買い置きしてあった催眠剤を8錠ほど飲み込むと、ようやく昼過ぎになって睡魔が訪れます。

俺が目覚めたのは次の日の朝になって、裏の家の真空管ラジオからやけに興奮した男性アナウンサーの声が響いてきたからです。放送局に行って原稿料を受けとらなければならないことを思い出した俺は、酔いざまし代わりのコーヒーを沸かして2杯飲みます。リビングには誰もいないために、同居している弟たちは会社へ出勤した後で母親は買い物にでも出掛けたのでしょう。俺がただならぬ気配を察知したのは、家を出て駅へ出るまでの見慣れた道のりを歩き始めた時です。巨大な軍用機が爆音を響かせて飛び交い、日本刀や猟銃を背負った男たちがトラックに乗り込んでいました。

【承】東海道戦争 のあらすじ②

いつの間にか始まった戦争

自宅のある千里山から放送局の最寄り駅である梅田までは、通常20分程度のはずが1時間以上かかってしました。

東海道新幹線は不通になっているようで、車内では東京からやって来た女性が「スパイだと思われて殺される」と泣き出す始末です。

駅構内で物々しい重装備をした青年将校にそれとなく訪ねてみても、「東海道戦争」という意味不明な言葉が出てくるばかりでさっぱり事情が伝わってきません。駅から梅田新道を5分ほど歩くと、テレビ中継車や乗用車のごった返す放送局にたどり着きます。

大騒ぎの局内で友人のアナウンサー・山口から聞かされたのは、何とも不可思議な東海道戦争の勃発です。東京が大阪への進撃を開始したいうデマが広まったのは、ちょうど俺が眠りについた昨日のお昼頃になります。

同時刻に東京でも大阪の武装蜂起の噂が囁かれていてあれよあれよという間に日本国内は分断状態です。上司から最前線の取材を命じられた山口と一緒に、俺もついていくことにしました。

【転】東海道戦争 のあらすじ③

戦争という名の擬似イベント

高槻では既に東京からの先着隊との衝突が起こっているようで、俺は山口の運転する社用車に乗り込みました。

前線までの舗装道路は軍用車や民間車で埋まっているために、途中からは徒歩で向かうしかありません。

ラッパを吹く自衛官に馬に乗って刀を振り回す憲兵、電線を引いて撮影をするマスコミ関係者からテントを張って花火を打ち上げる若者グループまで。

そこは戦場というよりもお祭り騒ぎのようでもありイベント会場のようでもあります。

レインジャー部隊の一員で見覚えがあるのは、俺の友達で大学の山岳部に所属している邦子です。

空気銃を片手にゲリラ掃討作戦に加担すると息巻く彼女に対して、俺は家に帰って学業を続けるように説得しますがまるで耳を貸しません。

中継車がやって来てテレビカメラが運び込まれると、山口はマイク片手にインタビューを敢行します。

仕出し弁当が配られて酔っぱらいまで現れて、最早何のために集まっているのか分からなくなってしまうのでした。

【結】東海道戦争 のあらすじ④

戦地で味わうリアルな痛み

明け方近くに毛布にくるまってウトウトしていた俺は、遠方から聞こえてきた爆音を聞いて目を覚ましました。警察官が手榴弾を2個ずつ配布していて、いつの間にか俺は最前線に守備兵として配置されることになります。急ピッチで積み上げられた土嚢の向こうから出現したのは、戦争映画でしか見たことがない装甲車や戦車の大群です。

一目散に逃げたした俺はやっとのことで放送局の車に到着しますが、既に定員オーバーで山口は乗せてくれません。

負傷者を緊急搬送する病院車を取り囲んでいる一団の中には、「おうちへ帰りたい」と泣き叫ぶ邦子の姿もありました。俺が彼女に向かって両手を差し伸べようとした途端に、敵の装甲車の砲口が火を吹いて邦子は木っ端微塵の肉片になってしまいます。爆風の巻き添えを喰らった俺も既に左腕を失っていて、助かる見込みはありません。

せめて邦子の生命を奪った装甲車を道ずれにと、俺は最後の力を振り絞って手榴弾の信管を引き抜くのでした。

東海道戦争 を読んだ読書感想

インターネットやSNSが普及する遥か前に発表された風刺小説になりますが、デマや妄想が独り歩きする危険性を鋭く捉えていました。

遠い国や地域で今現在でも発生している戦争に対して、無関心になってしまうことについても考えさせられます。

著者自身を思わせるような好奇心旺盛なSF作家が、取材がてらに戦地を見に行くつもりが気が付くと兵隊として徴用されている展開がブラックユーモアたっぷりです。

テレビや映画のスクリーンを通してしか知らなかった戦争の恐ろしさを、自分自身の肉体で存分に味わうことになるクライマックスが圧巻でした。

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