12人の浮かれる男(筒井康隆)の1分でわかるあらすじ&結末までのネタバレと感想

12人の浮かれる男(筒井康隆)

【ネタバレ有り】12人の浮かれる男 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:筒井康隆 1985年10月に新潮社から出版

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12人の浮かれる男の主要登場人物

陪審員1号(ばいしんいんいちごう)
私鉄の駅長。議長であるため自分の意見は述べない。

陪審員2号(ばいしんいんにごう)
内科医。無罪派。

陪審員3号(ばいしんいんさんごう)
保険会社の勧誘員。無罪派。

陪審員4号(ばいしんいんよんごう)
喫茶店店主。有罪派。

陪審員5号(ばいしんいんごごう)
銀行員。有罪無罪どちらでも良い。

12人の浮かれる男 の簡単なあらすじ

陪審員制度が採用された近未来の日本で、12人の男たちが陪審員室に集められています。優秀な弁護士によって被告のアリバイが証明されているために無罪は確実でしたが、せっかくマスコミの注文が集まっているのに簡単に結論を出してしまっては面白くありません。暴走していく陪審員たちによって、評決は思わぬ結果へと向かうのでした。

12人の浮かれる男 の起承転結

【起】12人の浮かれる男 のあらすじ①

評決の前に協議をしよう

10畳ほどの陪審員室には粗末な会議用テーブルがコの字の形に並べられていて、12脚の木製椅子に石炭ストーブの他は何もありません。

冷え切った室内を暖めるために、陪審員9号は火掻き棒を握りしめてストーブを灯そうと悪戦苦闘しています。

普段は私鉄で駅員さんとして働いている陪審員1号が真ん中の席に腰かけたのを見て、三々五々それぞれの席に着きました。

被告は近所でも親孝行で評判な心優しい好青年、亡くなった父親の方はアルコール依存症気味で何かとトラブルが絶えない鼻つまみ者。

陪審員1号の宣言によって協議に入りますが、被告の人柄を考慮しつつアリバイも証明されているため無罪は確実です。

陪審員2号は内科医としての自身の知識をひけらかしたくて、取り敢えず直ぐには評決に入らずに落ち着いて協議をすることを提案します。

陪審員3号は殺された父親に生命保険金が掛けられていなかったことに着目して、ちゃっかり勤め先の保険会社の宣伝を始めてしまいました。

【承】12人の浮かれる男 のあらすじ②

加熱する議論

陪審員4号はしがない喫茶店の経営者でしたが、前評判を覆して有罪判決に持ち込み世間を驚かされることを考えていました。

陪審員5号は午後5時から婚約者との約束があるために、早めに裁判が終わりさえすれば有罪無罪どちらでも構いません。

陪審員6号は陪審員法違反を犯してまで被告の母親と接触していたために、やたらとその家族の内情に詳しいです。

商社マンの陪審員7号は推理小説マニアで、何とか被告側のアリバイを崩すトリックを模索しています。

陪審員8号は今までタバコ屋を細々とやり繰りしてきた冴えない人生でしたが、陪審員に選ばれたことで初めての生き甲斐とトキメキを感じていました。

陪審員9号は一向に火が付かない石炭ストーブと格闘していて、協議にはまるで興味を示しません。

陪審員10号は小学校で教頭先生をしているためか1番に沈着冷静で知性的です。

他の陪審員たちがその場の雰囲気でコロコロと意見を変える中でも、ただひとり被告の無実を信じているのでした。

【転】12人の浮かれる男 のあらすじ③

未だに白黒付かない

陪審員11号は理髪店の店主でしたが、つい最近になって自分の店を継がせるつもりだった息子が工業デザイナーになりたいと言い出して落ち込んでいました。

裁判が始まる前からプライベートな恨みを持ち込んでいて、被告に父親殺しの罪を擦り付けたくて仕方ありません。

最後の陪審員12号はこれまでのところ無言を貫いていましたが、どうやらハンディキャップを抱えているようで言葉を発することができません。

本来であれば陪審員の義務を免除されるはずでしたが、裁判所のコンピューターによる入力ミスによって選ばれてしまったのでしょう。

一通り意見を聞いた陪審員1号が全員を見渡して評決に移ると、陪審員10号を除いた11人が有罪に挙手しています。

1人でも異なった意見の陪審員がいる限り、何度でも競技を繰り返さなければなりません。

遂には乱闘騒ぎにまで発展した陪審員たちをピタリと鎮めたのは、教科書の卸売業に携わっているという陪審員6号の衝撃的な告白でした。

【結】12人の浮かれる男 のあらすじ④

裁くものが裁かれる時

2年ほど前に来年度の教科書の納品業者を決める寄り合いに参加した陪審員6号は、競争見積もりを賄賂で落札した悪質な同業者を懲らしめました。

その男の贈賄先が瑞ヶ丘第二小学校になり、現在でも陪審員10号が教頭として備品購入を任されている学校です。

突如として泣き崩れた陪審員10号は、全てを告白します。

妻がガンになって手術代が必要であったこと、折り合い悪く息子の大学入学まで決まっていて業者からリベートを受け取ってしまったこと。

収賄の弱みを握られてしまった陪審員10号は、言われるままに有罪に鞍替えするしかありません。

ようやく評決が決まったことを陪審員1号は廊下で待機していた裁判所職員に伝えて、その他の陪審員は喜び勇んで陪審員室を飛び出していきます。

無実の青年を自らの汚職のせいで有罪にしてしまったショックからか、陪審員10号は立ち上がることが出来ません。

そんな彼に陪審員6号は手を差し伸べて、「悪いことをしなきゃ世間は渡れねえ」と慰めるのでした。

12人の浮かれる男 を読んだ読書感想

裁判員制度が施行される20年以上前の作品ですが、一般人が人を裁く危険性についてブラックユーモアたっぷりに描かれていて考えさせられました。

無実の被告を自分たちが注目を集めたいがために有罪にしてしまう軽薄さには、今の時代におけるフェイクニュースや炎上騒ぎを連想してしまいます。

ただひとり清廉潔白と法の遵守を貫いていた陪審員10号の威厳が、脆くも崩れ去ってしまうクライマックス近くのシーンが印象深かったです。

誰しもが後ろ暗い過去を抱えて生きていかなければならない、世知辛い世の中について思いを巡らせてしまいました。

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