「カラフル」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|森絵都

「カラフル」

【ネタバレ有り】カラフル のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:森絵都 1998年7月に理論社刊から出版

カラフルの主要登場人物

ぼく(ぼく)
本作主人公。大きな過ちを犯して死んだ罪な魂。輪廻のサイクルに戻るチャンスを得て、自殺した少年の体にホームステイする。

ブラブラ(ぶらぶら)
天使。役職はガイド。「ぼく」の魂を再挑戦の地に導き下界での案内役を務める。

小林真(こばやしまこと)
3日前に服薬自殺を図った少年。現在危篤状態。中学3年生の美術部員。

桑原ひろか(くわはらひろか)
小林真の中学の後輩。初恋の相手。

佐野唱子(さのしょうこ)
小林真の同級生。一週間ぶりの学校で真の異変を敏感に感じとっている同じ美術部員。

カラフル の簡単なあらすじ

死んだはずのぼくの魂が、天使に行く手をさえぎられた。抽選に当選し、もう二度と生まれ変わることができなかった魂だが再挑戦のチャンスが与えられたという。ホームステイ先は小林真。自殺を図った彼にいったい何が起こっていたのか…そんな小林真として快適に暮らす工夫を始めたぼくは、少しずつ見る景色、イメージの色合いを変えていく。

カラフル の起承転結

【起】カラフル のあらすじ①

キャンバス

「おめでとうございます。

抽選に当たりました!」死んだはずのぼくの魂が、天使に行く手をさえぎられた。

大きなあやまちを犯して死んだ罪な魂のぼくは、もう二度と生まれ変わることができなかった魂だが再挑戦のチャンスが与えられたという。

再挑戦とは一定の期間、下界にいる誰かの体を借りてもう一度修行を積んでくるというもの。

その「ホームステイ」中に前世で犯したあやまちの大きさを自覚したその瞬間に修行が終了となり、輪廻のサイクルに復帰するというものだった。

ホームステイ先は小林真。

3日前に服薬自殺を図った彼は現在危篤状態。

気が付くとぼくは小林真として病院のベッドに横たわり、心の準備もしないうちにうっかり目を開けてしまった。

周囲の人影がいっせいに振り返り、両親や医師、看護師たち皆が盛り上がっている中、充血した目でぼくをにらんでいる学生服の真の兄もいた。

狂ったように息子の名を連呼する父親。

ぼくの体にしがみついて離れない母親。

こんな家族に囲まれ、真はなぜ自殺をしたのだろうか。

ガイド役の天使ブラブラの解説によると、あの日塾帰りの真は中年男とラブホテルに入る初恋の君を見てしまう。

入れ違いに不倫する母親を目撃し、自分さえよければそれでいい父親の姿を目の当たりにする。

無神経な意地悪男の兄。

平凡なあたたかい家庭のような家族は表面だけだという。

自然とぼくは家族とは距離をおき、気持ちを切り替え学校生活に復帰するが、そこには以前の真との変化に敏感に気付いて、変身の謎を追求し続ける佐野唱子にまとわりつかれる。

美術室だけが憩いの場であり真の油絵見つけ出し、未完成の絵を描きはじめた。

【承】カラフル のあらすじ②

黒の世界

ぼくはやぼったい髪を切り、前髪をムースで持ち上げた。

真の貯金をおろして流行りのスニーカーを買った。

真として快適に暮らす工夫をしていた矢先、悪いことは次々に起こる。

高校は私立でなく公立を受験するよう父親に告げられる。

兄満が医大を受験するという。

たとえ国立でも学費がかかる上に、真の私立高校の費用となると負担が大きいからだ。

母親からは、父の会社が立て直しで大変な時期だと告げられる。

受験の悩みが自殺の原因ではと疑う母に否定すると追求されたのでつい「フラメンコの先生は元気?」と口にしてしまう。

その場にくずれおちる母。

黒のパーカーを羽織り、財布を片手に家を飛び出る。

ブラブラに桑原ひろかの居場所までガイドさせると、以前のような中年男性と一緒にいて、ラブホテルの前で足をとめた。

ぼくは男が先に玄関をくぐったその一瞬の隙にひろかをさらって逃げたのだ。

繁華街まで到着して、24時間営業のドーナッツ屋を見つけてひろかを押し込むと楽しそうにはしゃぐひろかだったが、今欲しいもののために「愛人」をしているのだと。

契約だからと中年男のもとへ行ってしまう。

ついてない日はとことんついていない。

雨脚は強まりパーカーのフードをかぶり夜の街を歩き頭痛と悪寒と吐き気に襲われ小さな公園で野宿するつもりで倒れ込んでいたが、傘の柄で殴られたような頭痛に飛び起きた。

数人の黒い影がぼくを見下ろすようにベンチを囲み、実際に傘の柄でぼくはなぐられていた。

そしてパーカーのポケットから財布を取られ、横腹に強烈なパンチをくらい、往復ビンタをくらい、地面に引きずり降ろされ、誰かがぼくの背中に馬乗りになった瞬間、両足首をにぎられて、スニーカーを奪われた。

反撃しては顎を殴られ、何度も取り返そうと起き上がり体当たりするも、地面にたたきつけられそのたびに笑われた。

意識を失う寸前、「何しているんだ、やめろ!」遠くで満の声が聞こえ、気を失う。

【転】カラフル のあらすじ③

カルフルな世界

あの夜、満の呼んだパトカーでとなり町の救急病院に運ばれ、迎えに来た両親に連れられ帰宅。

4日めに熱もひき顔の腫れもだいぶ引いて代わりに不気味な青あざがあらわれてきた。

5日めには体力も回復し動作も楽にできるようになってきた。

その日の夕方佐野唱子が見舞いに来た。

その夜夕食を運んできた母親が思いを綴った手紙を手渡していった。

自殺未遂以来フラメンコの先生とは会っていないこと。

14年間息子を誇りにしてきた思い。

唱子に心を打ち明けたように自分に対しても心をぶつけてほしいとの思い。

翌週には学校へ登校した。

クラスメイトの反応は2か月ほど前とは少し違っていた。

「久しぶり」「もういいの?」と声をかけてくれる。

以前スニーカーの値段を聞いてきた早乙女くんは「前はかまえている感じがしたけど今は楽にみえる」と教えてくれる。

そして超穴場の靴屋に翌日案内してくれた。

気のおけない間柄になり、一緒に勉強することになり受験生らしい毎日がはじまった。

12月、父親から川釣りに誘われ山へ。

真が自殺を図った時にもっといろんなことを話しておけばよかったと・・・父の人生の波乱万丈を。

いいことがいつまでも続かないように悪いことだってそうそう続くものじゃないと。

そして過去の恨みや自分への嫌気も一瞬のうちに吹き飛んだと。

真が生き返ったその瞬間。

病院でも先生はほぼ望みがないと言うが若い命を救ってやりたいと、懸命にみなが手を尽くしてくれて、その熱意に応えるように奇跡的に生き返ってくれたその時、人間って良くも悪くも大したものだと思ったのだと。

そして「父さんだけじゃなくあの一瞬に未来を動かされた人間もいる」それが医者になりたいといいだした満だった。

その満は今年の医学部はあきらめて一年間勉強し直して来年奨学金の試験を受けると言い出したという。

その代わり、真を私立に行かせてやれと。

ぼくの中にあった小林家のイメージが少しずつ色合いを変えていく。

【結】カラフル のあらすじ④

光彩

真の高校受験の話については、自分の気持ちを家族に打ち明けたことによって、一件落着。

しかし、打ち明けた気持ちはぼくの気持ちであって、真の気持ちではない。

そして家族3人の愛情もすべて真に向けられたものであって、ぼくへのものじゃない。

「この家の人たちに本物の真を返してやりたい」とブラブラに相談をもちかけたところ、前世でのあやまちを24時間以内に思い出せば、ぼくは元のルールに乗っ取り輪廻のサイクルに戻り、その体には真の魂が戻るようにできると持ちかけられる。

「しっかり目を開け。

ちゃんと見ろ。

ヒントはいたるところにある」とブラブラは言い残して消えてしまう。

なんの収穫もないまま時間だけが過ぎていく。

タイムリミットまで約15時間。

学校に到着する。

友達の早乙女くんには根回しをする。

もし、おれが明日、いきなり暗くて無口な昔のオレに戻っていても、しばらく見捨てないで長い目で見守ってくれないか。

タイムリミットまであと9時間。

美術室へと足を進めた。

落雷の豪音がとどろいたのは、ちょうど美術室の扉に手をかけた時だった。

真っ暗な部屋から悲鳴を上げて出てきたのは唱子だった。

唱子は真のことを変化したとまとわりついていたが、元の姿に戻ったのだと気づいたと話してくれた。

すごく変わったけど、根っこのところは変わってない、それは小林くんの描く絵は変わってない。

独特の色使い、筆のタッチやキャンバスに向かう目つきまで。

その言葉にぼくの瞳に映るすべてが急にあざやかな光彩を放ちはじめた。

佐野唱子、君は小林真を救った。

ぼくは殺人を犯した。

ぼくはぼくを殺したんだ。

ぼくは自殺した小林真の魂だ。

カラフル を読んだ読書感想

魂が「ホームステイ」して修行する。

それで輪廻のサイクルに戻れるなんて本当にラッキーと思いきや、それは厳しい世界だった。

ただそこに身を置くことが厳しいのだけでなく、家族の想いを知るにつれ、「代役で引き受けるには荷が重すぎる」とぼくが思うのも無理はない。

父親の話は、本物の真が聞くべきだった。

満の声を、死んだ真に聞かせてやりたかった。

表面しか知り得なかった家族の心のうちを知ることによって、イメージが少しずつ色合いを変えていく。

それは黒だと思っていたものが白だったという単純なものでなく、一色だったと思っていたものがよく見ると実にいろんな色を秘めている。

角度次第ではどんな色だって見えてくる。

ぼくがそう気付いたように、物事を色で捉えてみると世の中の景色が一変すると私は思う。

わかっているのに、トラブルの当事者になってしまったり、心に余裕がなくなると、途端に物事を単色に捉えがちになっている。

世界はカラフル〜視野を広げてと意識するように、思考の世界にも彩りを添えてとらえていきたい。

きっと、今よりもずっと明るい未来がそこに見えてくる。

生命と心とコミュニケーションの大切さを通してカラフルな世界が広がる作品である。

コメント

  1. 川上 より:

    天使は「ブラブラ」ではなく「プラプラ」です