映画「淵に立つ」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|深田晃司

監督:深田晃司 2016年10月にエレファントハウスから配給

淵に立つの主要登場人物

鈴岡利雄(古舘寛治)
主人公。家業の鈴岡金属を継ぐ。若い頃には父親に反発して荒れていた。

八坂草太郎(浅野忠信)
利雄とは長い付き合い。県の施設に世話になっていて家族もいない。

鈴岡章江(筒井真理子)
利雄の妻。信心深く女性会やチャリティー活動に熱心。

鈴岡蛍(篠原桃音)
利雄の娘。オルガンの演奏が好きな小学生。

山上孝司(太賀)
八坂の息子。勤務態度は真面目。絵を描くのが好き。

淵に立つ の簡単なあらすじ

妻・章江と娘の蛍と平和に暮らしていた鈴岡利雄のもとへ転がり込んできたのは、昔の悪い仲間・八坂草太郎です。

章江を誘惑した八坂はある日突然にいなくなり、蛍には重いハンディキャップが残されます。

幼い頃に八坂と生き別れになった山下孝司とともに行方を追っていた利雄でしたが、章江は蛍と無理心中を決行してしまうのでした。

淵に立つ の起承転結

【起】淵に立つ のあらすじ①

過去のない男がひとつ屋根の下に

熱心なプロテスタント教徒の章江と家庭を築いた鈴岡利雄はひとり娘の蛍を育てながら、小さな金属加工会社を切り盛りしていました。

ある日のこと1カ月前に生活支援センターを出てきたばかりだと言う八坂草太郎が訪ねてきて、利雄のところで働かせてほしいと頼んできます。

その日のうちから鈴岡家に住み込みで働き始めた八坂のことを、章江には「古い友だち」としか説明しません。

お風呂から出ると下着姿でウロウロ、真っ暗だと眠れずに時おり悪夢にうなされる、やたらと食べるのは早いが食器はきれいに洗う。

最初の頃はどことなく浮き世離れしている八坂に困惑していた章江でしたが、いつの間にか彼に恋心を抱いていました。

間もなくオルガンの発表会を控えている蛍も、八坂に個人レッスンをしてもらってからはすっかり懐いています。

章江が初めて八坂とふたりっきりになったのは、郵便局に葉書を買いに行った帰りです。

八坂の過去についてそれとなく探りを入れてみましたが、「利雄とは腐れ縁」としか答えてくれません。

【承】淵に立つ のあらすじ②

神に代わって彼を愛する

ようやく章江の前で重い口を開いた八坂は、自らのゆがんだ正義感によって命を奪い11年ものあいだ刑務所に入っていたことを告白しました。

八坂のような罪人こそ神に愛されるべきだと考えた章江は、これまで以上に彼を理解して距離を縮めようと努力していきます。

仕事が終わった後には八坂の部屋で針仕事、週末になるとみんなでドライブや川遊び、日曜日のミサにも参加。

間もなく章江と八坂は人目を忍んで抱き合ったりキスを交わしたりするようになり、利雄はふたりの仲が怪しいのに気がついていましたが文句は言えません。

11年前の殺人事件の現場には利雄も居合わせましたが、裁判では何も言わずにすべての罪を引き受けた八坂への引け目があるからです。

発表会の前日、章江が手作りしたドレスを着た蛍はそのままの姿で外に飛び出していき夕方になっても帰ってきません。

手分けをして探し回っていると蛍は血を流した状態で公園で発見されて、利雄と章江が救急車を呼んでいるあいだに八坂はその場から立ち去ってしまいます。

【転】淵に立つ のあらすじ③

消えた八坂と消えない鈴岡家の亀裂

事件のショックから意思の疎通が不可能となった蛍は、章江に身の回りの世話をしてもらい車イスでの生活を続けていました。

利雄は信用調査会社を通じて八坂の居場所を調べてもらっていましたが、8年がたった今でも手掛かりは出てきません。

毎月かなりの額を調査会社に支払っていることが、蛍のリハビリと介護で疲れ果てている章江からすると不満で夫婦のいさかいの種です。

会社の方は一週間前に雇った山上孝司という青年が、仕事の覚えも早くてやる気もあるために何かと役に立っています。

孝司のリュックサックから章江が見つけたのは、以前に川遊びに行った時に八坂と撮った記念写真です。

母親が亡くなって遺品整理をしていた時に出てきたこと、父親は自分が生まれてからすぐに家を飛び出したために一度も顔を見たことがないこと、母に宛てた手紙に書かれていた「鈴岡金属」という会社名を頼りにここまで来たこと。

父親が八坂だと知った章江は、孝司が蛍に危害を加えるのではないかと不安になっていきます。

【結】淵に立つ のあらすじ④

崖っぷちから生還するために

依頼していた調査会社の社員が八坂とよく似た年格好の男を目撃したという庄内地方へ、利雄は章江・蛍・孝司の4人と車で向かいました。

近所を回って人に聞き込みを続けていると最近になってよそ者が引っ越してきたそうで、白いワイシャツに黒いズボンという服装の趣味も一致します。

民家から流れてくるピアノの曲は蛍が教えてもらった「美しい牧場の堤」ですが、演奏していたのは八坂とはまるで別人です。

個人経営の商店で利雄と孝司が飲み物を買ってひと休みしていると、車内にいたはずの章江と蛍の姿がありません。

将来を悲観した章江は蛍を抱きかかえながら橋の手すりから身を乗り出していて、一思いに飛び降りるつもりです。

橋の下を流れる川へ転落した章江は利雄がすぐに引っ張り上げたために辛うじて呼吸をしていましたが、体の自由がきかない蛍と彼女を助けるために溺れた孝司は意識がありません。

利雄は何としてでも全員を無事に連れて帰るために、力の限りに心臓マッサージを繰り返すのでした。

淵に立つ を観た感想

電動工具の音が鳴り響く中で溶接の作業に集中している主人公・鈴岡利雄の背後に、いつの間にかシルエットだけを現す八坂草太郎の登場シーンが不気味です。

平穏無事な鈴岡一家にじわりじわりと侵入してくる異端者を、浅野忠信が徹底的に喜怒哀楽を排除しながら演じていました。

映画の前半では八坂の顔色を伺いながらこそこそとしていた利雄が、中盤以降は強い決意を秘めて過酷な運命に立ち向かっていきます。

8年の歳月が流れて別人のように疲れはてた姿へと変貌を遂げていく、章江役の筒井真理子にも鬼気が迫るものを感じてしまうでしょう。

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