映画「ブラック・ジャック 劇場版」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|出崎統

ブラック・ジャック 劇場版 出崎統

監督:出崎統 1996年11月に松竹から配給

ブラック・ジャック 劇場版の主要登場人物

ブラック・ジャック(大塚明夫)
主人公。手術の腕前は世界一だが法外な報酬を要求する。国家試験も受けず医師会にも所属していない。

ピノコ(水谷優子)
孤独なブラック・ジャックにとっては心のより所。見た目は幼女だが実年齢は18歳。

ジョー・キャロル(涼風真世)
表向きは国際的な医療機関の主任研究員。刑務所のような厳しい教育施設で育てられたため肉親の愛を知らない。

エリック・カデリィ(星野充昭)
専門は脳外科で患者の人道的な治療をモットーにする。「戦う医師団」と呼ばれるグループの活動にも熱心。

ブラック・ジャック 劇場版 の簡単なあらすじ

20世紀も残りわずかとなった頃に世界中で注目を浴びているのは、「超人類」と言われる並外れた能力の持ち主たちです。

謎の疾患に倒れていく彼らを救うために孤高の名医、ブラック・ジャックは超人類の生みの親ジョー・キャロルと手を組みます。

製薬会社の陰謀によりジョーは口封じのために殺害されますが、ブラック・ジャックは彼女の意志を受け継ぎ治療法を確立するのでした。

ブラック・ジャック 劇場版 の起承転結

【起】ブラック・ジャック 劇場版 のあらすじ①

超人を救えるのは奇跡を起こす外科医だけ

棒高跳びでは引退を考えていた選手が新記録の樹立、100メートル走では女子が男子を抜き去り金メダル、水泳では20秒以上のタイム更新… 20世紀末に開催されたオリンピックでは短距離走、競泳、球技を問わず10種目以上において奇跡的なレコードが連発していました。

肉体的な能力の限界をこえた彼ら彼女たちは、21世紀の夢を象徴する「超人類」として持てはやされていきます。

あのオリンピックから2年が過ぎようとしていましたが、超人類ブームはスポーツ界だけに止まりません。

音楽、絵画、文学、物理、とジャンルを問わず常識を打ち破るほどの活躍が目覚ましいです。

そんな中でニューヨークで手術を頼まれていたブラック・ジャックの前に、ジョー・キャロル・ブレーンと名乗る女性が現れました。

ロイヤルホテルで一緒に休暇を取る予定だったピノコが連れ出されてしまったために、超人類を救ってほしいという依頼を受けるしかありません。

連れて行かれた先は極秘に20名ほどの患者が収容されていて、自身が主任を務めているセント・ジョエル研究センターです。

【承】ブラック・ジャック 劇場版 のあらすじ②

細い糸をたぐりよせ治療法をつかめ

施設内には先のオリンピックで活躍したアスリートたちが運びこまれていましたが、40名の収容者のうち既に17名が亡くなっていました。

いずれもギリシャ神話の運命の糸をつかさどる女神に因んで名付けられた「モイラ」という症候群に陥っていて、治療のために過酷な生体実験が行われています。

ペアを組むことになったのは脳外科医のエリック・カリディですが、医師免許も持たずに高額医療を続けているブラック・ジャックのことを良く思っていません。

彼が言うにはこの研究センターに出資しているのはブレーン製薬という業界一の大企業で、ジョーはそこの会長の養子だそうです。

エリックの正体は医療ボランティア「MSJ」の一員で、人道的な立場からセンターを占拠しました。

当分のあいだはMSJによって運営されることが決まりましたが、ひと足早くに逮捕を逃れたジョーの姿はありません。

超人類は進化ではなく脳内ホルモンによる一時的なもの、集中力が増し異常な能力を発揮するが一般人がその負担に耐えるのは不可能。

ブラック・ジャックは自らが立てた仮説を証明するために、エリックたちに協力しサンプルの脳下垂体を調べてみます。

【転】ブラック・ジャック 劇場版 のあらすじ③

死のワインで乾杯

患者の頭部を切開してメスを入れてみると、かすかに発光しているのは新種のウイルスと思われる物質です。

すべてを知っているはずのジョーは追われる身となっているために、MSJに内緒で潜伏先のホテルで合流して赤ワインを飲み交わしました。

彼女が開発した新薬「エンドルフ・アー」には、脳内のエンドルフィンを爆発的に分泌させて人為的に超人類を作り出す効果があります。

F1レースで有名なセビア砂漠で発見されたひと粒の砂がそもそもの始まり、試作品が完成したのが5年前、選ばれたモニターたちがオリンピックに出場したのが2年前。

彼らが一様に口を閉ざしていたのも、巨額の保証金を受け取っていたからでしょう。

厳しいドーピング検査さえパスしてしまうほどでジョーの計画は順調に進行していましたが、多臓器系不全というリスクがあったことは計算外でした。

間もなく爆発的な感染が始まり世界中がパニックに陥るはずですが、 ジョーは副作用を抑えた完璧な新薬を開発させるつもりです。

先ほどのワインの中にはエンドルフ・アーの原液息が混入されていたために、ブラック・ジャックも彼女と運命をともにするしかありません。

【結】ブラック・ジャック 劇場版 のあらすじ④

来たるべき21世紀に羽ばたくのは常人たち

セビアは第2の故郷だというエリックとともに飛行機で現地に向かうと、砂漠に仮設された診療所では高熱で苦しむジョーをピノコが看病していました。

ピノコをエリックに託しこの場でジョーのオペを決行することを選んだのは、これ以上新たな感染者を出さないためです。

すでに超人類と化していたブラック・ジャックの神業によってジョーの脳波が正常に戻りかけた頃、ブレーン製薬が雇った刺客からの銃撃を受けます。

企業の利益のためではなく21世紀のために新薬を開発したこと、合理主義や科学技術だけでは人類に未来はないこと。

伝言を残して息を引き取ったジョーを光る花の上に横たえると、ブラック・ジャックにもモイラの末期症状が迫ります。

花の茎にウイルスの抗体物資「フルジウム」が含まれていることを教えてくれたのは、文明と交わらずに古来からの暮らしを続けてきた遊牧民たちです。

フルジウムによってモイラパニックは一時的に抑えられらましたが、このまま環境破壊が進み砂漠が広がれば第2波が押し寄せるでしょう。

MSJの顧問になって戦ってほしいというエリックの依頼を、ブラック・ジャックは「仕事のやり方は人それぞれ」とお断りするのでした。

ブラック・ジャック 劇場版 を観た感想

黒いマントに半分だけ白くなった髪の毛、左側のほほに走るのは不気味なキズあと。

マンガの神様・手塚治が生み出した人気のキャラクターが、劇場公開向けのオリジナルストーリーとして命を吹き込まれています。

20年以上も前の作品ですが、オリンピックやパンデミックなどタイムリーな話題を扱っているために今でも色あせていません。

冷血かつミステリアスなヒロイン、ジョー・キャロルに、ブラック・ジャックが医師としての倫理観をぶつけるシーンは必見です。

全編を通して緊迫感のあふれる展開の連続ですが、マイペースで舌足らずなピノコが出てくるとホッとひと息つけますよ。

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