「オークブリッジ邸の笑わない貴婦人」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|太田紫織

「オークブリッジ邸の笑わない貴婦人」

【ネタバレ有り】オークブリッジ邸の笑わない貴婦人 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:太田紫織 2017年9月に新潮社から出版

オークブリッジ邸の笑わない貴婦人の主要登場人物

愛川鈴佳(あいかわすずか)
本作品の主人公。物語の中で「アイリーン・メイデイ」と呼ばれるビクトリアンメイドを務める女性。19世紀の英国貴族式生活をする女性の家政婦になる。

楢橋優利(ならはしゆうり)
オークブリッジ邸の執事「ユーリ」として、屋敷の女主人に仕える。女主人の実の孫息子。祖母のために徹底した執事の役目を果たす。

楢橋タエ(ならはしたえ)
人生の最後を北海道の東川町にある洋館で過ごすことを決めた老女。優利の祖母。屋敷内では奥様と呼ばれている。英国式に「マーガレット」と名乗る。

楢橋映人(ならはしえいと)
屋敷では「エドワード様」と呼ばれる女主人の孫息子。優利の実の弟。

スミス夫人(スミス夫人)
本名は不明。屋敷のことを理解して、色々と手助けをしてくれる地元の農家の女性。

オークブリッジ邸の笑わない貴婦人 の簡単なあらすじ

派遣家政婦として働く、愛川鈴佳は、ある日派遣会社の社長に紹介された男性から、妙な依頼を受けます。それは、東川町に行って、19世紀英国式のビクトリアンメンドになること。お屋敷の中で、男性は執事「ユーリ」、そして鈴佳は「アイリーン」と呼ばれる家政婦として奥様に仕える毎日が始まります。いくら家事が好きといっても、現代とは違う様式に戸惑う鈴佳。しかし、彼女はその中で自分の生きる意味を知ります。

オークブリッジ邸の笑わない貴婦人 の起承転結

【起】オークブリッジ邸の笑わない貴婦人 のあらすじ①

19世紀の英国式様式の生活の始まりの時

====================生まれた時から自由奔放な母と家政婦で身を立てる祖母に育てられた鈴佳。

高校を卒業した後、立て続けに母と祖母を亡くし彼女に残されたのは、母の借金でした。

借金を返すため、鈴佳は祖母が勤めていた家政婦派遣会社に入ります。

彼女は、そこで楢橋優利という青年から住み込みの仕事を依頼されます。

それは19世紀の英国様式に従って、ハウスメイド「アイリーン」として仕事をすることでした。

ここから鈴佳はアイリーンと、優利はユーリ、そしてタエは奥様と呼ばれるようになります。

東川町の奥にひっそりと佇む洋館はオークブリッジ邸と呼ばれ、本格的なビクトリア調の生活が続きます。

床をや鍋を磨く時も、酢や砂を使って磨く、アイリーンの手はひび割れすっかり昔の女性の手になっていました。

お湯を使う時はやかんで沸かす、お風呂は階上の自室まで湯を運ばなければならない、洗剤や便利な掃除道具もない19世紀の毎日が続きます。

奥様からウミガメのスープを出してほしいと言われ、コックのミセス・ウィスタリアと奔走したり、19世紀の生活を写真に撮りたいというロベルトの訪問や、奥様の孫エドワードが来たりと、忙しい毎日が過ぎていきます。

どうにか日々の生活に慣れてきた鈴佳ですが、ある日奥様に部屋で「ヒギンズ」という男性の名が入った封筒を見つけます。

たまの休みに外に出ることを許され、ある日東川町郷土館で、若き日の奥様と外国人の写真を見つけます。

それは、タエがここに最後の場所を決めた理由でもありました。

写真を見たときに、タエの気持ちを察したアイリーンは、良かれと思い、お屋敷に来た写真家のロベルトに、古い写真の修復をお願いしヒギンズの写真を奥様の部屋に飾りました。

しかし、それは奥様の逆鱗に触れ、彼女は家政婦をクビになってしまいます。

他の家で家政婦をする鈴佳でしたが、そこにユーリが現れ「あなたを迎えに来た!」と。

【承】オークブリッジ邸の笑わない貴婦人 のあらすじ②

新しいメイドとお嬢様

鈴佳が、屋敷を開けている間にもう一人のメイドエミリーが屋敷で働き始めます。

明るく機転の利くエミリーですが、彼女は通いのメイドで、しかも仕事が雑だとユーリは頭を悩ませます。

そんなある日、優利の妹エズミがあらわれます。

声楽家を目指しフランスに留学していた彼女ですが、突然の来訪に戸惑うアイリーンです。

エズミは様々なわがままを言ってあいはアイリーンを困らせたり意地悪をします。

海に行きたい、と言い出したエズミに裏の川があると教えたアイリーン。

2人は裏の川に水遊びに出かけますが、突然の大雨に遭遇してしまいます。

そこでエズミは、奥様とユーリがアイリーンばかりで自分のことを邪魔ものだと思っていると、泣き出します。

エズミの気持ちを知ったアイリーンは「自分はメイドだ」と、優しくエズミを慰めます。

少しずつ距離が縮まる2人ですが、ある晩、アイリーンがユーリの衣服のシミを抜くために、彼が服を脱いだところにエズミが現れ、2人の中を誤解してしまい、また関係が悪化してしまいます。

しかし、その背景にユーリとエドワードの父と、エズミの父親が違うという家族の問題に関係があることを知らされます。

2人の母親は、病気の父親の死後間もなく、エズミの父と再婚したことから、エズミ自身が周囲からもあまりよく思われていないことを知っていました。

エズミは精神的なことが原因で歌を歌う時に声が出なくなる、という病気になりフランスに戻りたくないと言います。

アイリーンは、そんな彼女を優しく支えます。

【転】オークブリッジ邸の笑わない貴婦人 のあらすじ③

ちぐはぐな舞踏会と残された時間

町の人との接触を極力避けていた、アイリーンたちは、周囲の人から「怪しい人たちが住んでいる」と誤解を受け、ある日役場の人からも指摘されてしまい周辺の人の理解を得ることが大切と知ります。

庭師に買って出てくれた大葉さん、エズミに乗馬を教えてくれたビックとたくさんの知人もでき、楽しい毎日が続きます。

そんな中、フランスに戻らないエズミのために、アイリーンたちは舞踏会を開く計画を立てます。

はじめは乗り気ではなかった奥様ですが、昔の領主は領民のために祭りをした、というアイリーンの言葉に心を動かされます。

そして、奥様を説得した東川町では、本格的な祭りと夜の舞踏会が開かれることになりました。

祭りにはエズミのために今まで屋敷の在り方を理解してくれた人たちが、大勢集まります。

そこで奥様が始まりの挨拶に、かつて東川町に外国の親善使節が来たとき、通訳としてこの町を訪れたことを話すと、一気に住人の人たちから温かい目が向けられます。

優利の友人でホテルマンとして働く人や、エミリーのメイド仲間が舞踏会のための助っ人となり、舞踏会もどうにか滞りなく、と思った時に現れたのがユーリ達の母「マリア」でした。

【結】オークブリッジ邸の笑わない貴婦人 のあらすじ④

人生の計画にあなたが必要

マリアは、母が末期のがんであるにも関わらず、治療もせずにわけのわからないことをしている、と怒りをぶつけます。

舞踏会は途中でお開きになり、暗い雰囲気が屋敷を包みます。

最期の時を、治療に専念してほしいと思うマリア、そんな彼女に、自らも母と祖母を亡くしたアイリーンは自分の気持ちを伝えに行きます。

最期まで、奥様が望む時間を作ろうと、マリアも協力し、本格的なお屋敷の時間が流れます。

そして、ある日…。

奥様が旅立たれた後、エズミは留学先に戻る決意をし、アイリーンとユーリで見送ります。

その後、残された2人は奥様から送られた手紙を開け謎めいた内容に頭を悩ませます。

アイリーンの封筒には、謎めいた言葉だけ、そしてユーリの封筒には、それと対になる言葉と指輪がありました。

謎めいた言葉から、大葉さんたどり着いた2人は、彼から大きな封筒をエドワードに渡してほしいと頼まれます。

葬儀にも出なかったエドワードに怒りを覚えていたユーリでしたが、彼に封筒を渡すために函館に向かいます。

函館の夜、封筒を渡した後ユーリとアイリーンは初めて奥様を失った悲しみにおぼれ、キスをしてしまいます。

感情に流されてするものではない、と自分に言い聞かせたアイリーンはユーリに別れを告げ、合うこともなく1年が過ぎます。

その日から1年、東川町ではあのお祭りをまた開催しようと、奥様のことを残しておこうということになります。

祭りの日、エズミもフランスから戻り、てっきり2人が付き合い始めていると思っています。

オークブリッジ邸は、本格的な英国式を味わえるホテルとして再出発することになり、エミリーも戻っていました。

ユーリとは気マズイアイリーンでしたが、お互いの誤解や本当の気持ちを伝え、ユーリからプロポーズの言葉を受けます。

そして、彼女に贈られたのは奥様の指輪と奥様が執筆しエドワードが仕上げた「アイリーン」という、ビクトリアンメイドの小説でした。

オークブリッジ邸の笑わない貴婦人 を読んだ読書感想

19世紀の英国様式の生活が手に取るようにわかる内容で、思わず何度も読み返してしまいました。

アイリーンという小説は「小公女」や「若草物語」に憧れた少女の気持ちを、最期に作り上げたいという奥様の願いだった、というラストに感動してしまいました。

しっかりと調べ挙げられた内容の中でも、ところどころアイリーンとユーリのコミカルなシーンもありとても面白いです。

本当に、19世紀の物語を読んでいるような気持ちで、読むことができます。

三冊で1つの物語ですが、私は3日で三冊を一気に読み上げました。

展開も速くとにかく、すぐ次が読みたくなる、そしてラストも感動して終われる、とても素敵な物語です。

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