【ネタバレ有り】ホンキイ・トンク のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:筒井康隆 1969年7月に講談社から出版
ホンキイ・トンクの主要登場人物
築井(ちくい)
主人公。コンピューター技師。
プリンセス・ミオ(ぷりんせす・みお)
バカジア国の当主
テレガーベラ・ポリ(てれがーべら・ぽり)
公爵。
ホンキイ・トンク の簡単なあらすじ
コンピューター技師の築井はある時に、上司から海外出張の辞令を受け取ります。出向先は会社から格安コンピューターを買い付けた、人口僅か30000人足らずの新興国・バカジアです。不安定な政情に置かれているこの国では全ての意思決定を人間ではなく機械に任せているために、築井は思わぬトラブルへと巻き込まれていくのでした。
ホンキイ・トンク の起承転結
【起】ホンキイ・トンク のあらすじ①
チーフ・オペレーターからの呼び出しを受けた築井は、普段は滅多に立ち入ることのない本社へ向かいました。
築井は語学堪能でしたが、コンピューター技師としてはまだまだ半人前で重要な取引先を任されるほどではありません。
上司から押し付けられたのは少々訳ありな案件になり、通訳もプログラマーもなしで見知らぬ国に行きコンピューターを組み立てるという無理難題です。
1ヶ月ほど前にバカジアという南ヨーロッパの国から、NG100型を買いたいという申し出があったのがそもそもの始まりになります。
NG100型は商品リストの中でも最も安価なコンピューターで、バカジア政府でも何とか購入可能です。通常であれば現地には複数のスタッフが派遣されるはずですが、予算の都合上ひとりで現地に向かわなければなりません。
今回のプロジェクトを成し遂げた暁には恋人との媒酌から新居まで全て面倒を見てくれるというチーフの言葉を信じて、築井は小型貨物船に乗り込んで出航するのでした。
【承】ホンキイ・トンク のあらすじ②
日本を出てから3週間後の昼過ぎにようやくバカジアにたどり着き、海岸沿いに用意されたリゾートホテルにひとまず落ち着きました。
チャイムの音を聞いた築井が客室のドアを開けてみると、金髪にブルーの瞳の美しい女性が目の前に立っています。
20代の前半かと思われるほどの若さですが、彼女こそがこの国の国家元首であるプリンセス・ミオです。好奇心旺盛なミオはコンピューターに興味津々な様子で、盛んにNG100型についての情報を築井から聞き出そうとします。
西側の資本主義国につくのか東側の共産主義国につくのか、世界の環境保護を重視するのか自国の工業化を優勢するのか、軍備増強をアピールするのか軍縮に転じるのか。この国の官僚たちの意見が一致したことはこれまで1度もなく、議会でも延々と議論が繰り返されるだけで一向に進展しません。
一国の決定をコンピューターに委ねるという試みは、世界でも類の見ないものとなり国際社会の注目を集めていくのでした。
【転】ホンキイ・トンク のあらすじ③
翌朝からは日本から輸送してきたパーツをお城の中に搬入して、NG100型の組み立て作業がスタートしました。
築井はミオに付きっきりでコンピューターに関する知識や操作方法を伝授しますが、密かに彼女に思いを寄せているテレガーベラ・ポリは心穏やかではありません。
由緒正しい家柄に生まれた公爵とのことですが、何かにつけてふたりの間に入り込んで築井に絡んでくるから厄介です。女王の権限によってコンピューター室への立ち入りを禁止にして組み立てを終えて、何とか記者団への御披露目に漕ぎ着けます。
国内のカジノを禁止した次の日には賭博オリンピックの開催を決定、農地もない癖に農地改革を宣言、爆弾の作り方さえ分からない癖に核実験登録の申し込み。
NG100型は日本からの長時間の船旅せいで、中枢回路の調律に狂いが生じていたようです。
バカジアは世界各国からの笑い者になってしまい、築井は自社製品の評判を落としたとして会社を馘になってしまうのでした。
【結】ホンキイ・トンク のあらすじ④
NG100型が次から次へと打ち出していく奇想天外な政策によって、バカジアは世界一の人気国になり連日観光客が押し寄せるようになりました。
それはまるでアメリカの西部開拓時代に生まれた、調律の狂ったピアノで歌うウェスタン・ソング「ホンキイ・トンク」のように愛されるようになります。どうやらミオは築井に内緒でコンピューターに細工をして、わざと調律を狂わせていたようです。
仕事も婚約者も失って日本に帰る訳には行かない築井は、ミオに泣きついてこの国に永住することを思いつきます。そんな中で週刊誌に浮上したのが、築井とミオの密会疑惑です。コンピューターのレクチャーの合間に食事を供にしただけでしたが、外国人である築井へのバッシングは鳴りやみません。築井がバカジアを追われてほとぼりが冷めると、ミオはちゃっかりテレガーベラとの婚約を発表します。
築井は今でも世界各国を放浪していて、コンピューターの調律を狂わせることだけは一流なようです。
ホンキイ・トンク を読んだ読書感想
50年以上前の作品になりますが、テクノロジーと人間性との危うい関係性が描かれていて今の時代に繋がるものがありました。
人工知能の職場への参入や自動運転システムの導入など、現実の世界の方がSF小説を追い越していくような不思議な気がします。
全てをコンピューターに任せて自分の頭で考えることを放棄してしまう危険性と供に、今も昔も変わることのない人類の愚かさや滑稽さがユーモアたっぷりです。
音階の外れたピアノが思わぬメロディーや新しいタイプの音楽を生み出していくように、人間にしかない想像力と独創性を大切にしたいと思いました。
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