映画「キッズ・リターン」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|北野武

キッズリターン

監督:北野武 1996年7月にオフィス北野ユーロスペースから配給

キッズ・リターンの主要登場人物

ミヤワキマサル(金子賢)
不良の高校生で、シンジをボクシングの世界に勧誘します。荒っぽい性格ですが、優しい一面も持ち合わせている人物。

タカギシンジ(安藤政信)
マサルといつもツルんでいる親友で、後にプロボクサーとして活躍。

ハヤシ(モロ師岡)
プロボクサーでありながら、自堕落な生活を送る人物。

ヤクザの組長(石橋凌)
普段は子分の面倒見も良く物腰柔らかな人物だが、ヤクザらしい一面もしっかり覗かせる人物。

キッズ・リターン の簡単なあらすじ

高校生のマサルとシンジはいつも行動を共にする親友の間柄で、自由に青春を謳歌していました。

しかし、出会いや出来事がきっかけで、それぞれが別の道に進むようになり、お互いの交流も徐々に希薄になっていきます。

マサルはヤクザの道へ、シンジはプロボクサーとしての道を歩み始め、それぞれ人生で経験したことがない挫折を味わいます。

キッズ・リターン の起承転結

【起】キッズ・リターン のあらすじ①

マサルとシンジの青春

高校時代、素行が悪くいつも自由気ままに遊んで暮らしていたシンジとマサルは、ある日道端で偶然再開します。

シンジは新聞配達、マサルは無職、かつて若さくる輝きでピカピカだった二人は現在ではすっかり落ちぶれており、怠惰な日々を送っていました。

二人は現在とは違い、何の縛りもなく自由に過ごしていた高校時代を想い返します。

二人で自転車を二人乗りし、学校の授業をサボり校舎の屋上でダベったり悪ふざけをしたり、他校の生徒からカツアゲをするなど、やりたい放題の青春を楽しんでいました。

そんな彼らに人生のターニングポイントとなる出来事が発生します。

ある日、行き付けの中華料理屋でマサルが未成年にも関わらずお酒とタバコを注文し、それを見ていたヤクザのグループがマサルを咎めます。

マサルは気性の荒い性格で、ヤクザ相手でも遠慮をしません。

両者とも一触即発な状態に陥りますが、仲裁に入ったヤクザの親分の貫禄にマサルは感動します。

同じ頃、以前カツアゲをした他校の生徒が助っ人を呼んで仕返しを行い、マサルはプライドを傷つけられるのと当時に、ボクシングの世界へ身を投じます。

シンジも付き合いでボクシングジムに入門し、この出来事がシンジの人生にも影響します。

【承】キッズ・リターン のあらすじ②

それぞれの転機

街での苦い経験がきっかけで、ボクシングの世界へと足を踏み入れ、日々練習に明け暮れます。

マサルはお酒もタバコもすっかり止め、それまで自堕落な生活から一転して、人生で初めて一つの物事に心血を注ぎます。

一方でシンジも付き合いとは言えボクシングを始めたことで、自分の中に眠る意外な才能に気付きます。

ある日、軽い気持ちでスパーリングを行う二人ですが、血気盛んで暴力的なマサルよりも、普段おとなしめの性格のシンジの方が才能があり、マサルを一方的にノシてしまいます。

マサルのパンチを鮮やかに外し、カウンターを打ち込み、ジム関係者をも唸らせる才能を発揮するシンジとは対照的に、マサルはこの出来事をきっかけにボクシングから早々に足を洗います。

禁欲生活ともおさらばし、お酒やタバコにも再び手を染め、自身がプロデビューした暁にリングネームとして使用する予定だった、「ダイナマイト・キッド」という名前をシンジに譲ってから、学校にも姿を現さなくなってしまいます。

【転】キッズ・リターン のあらすじ③

ヤクザのマサルとプロボクサーのシンジ

シンジはマサルが去った跡でもボクシングはそのまま続行し、ついにプロデビューを果たします。

次第に才能を開花されるシンジですが、いつも何をする時も連れ添ったマサルが不在になってしまったことで、心にポッカリ穴が空いたような生活を送っていました。

学校にも姿を見せないマサルを毎日迎えに行きますが、それでも会うことは叶わず、相棒が居なくなったことで寂しさが募ります。

そのことも影響してか、ボクサーとして悪い見本のハヤシと交流を重ねて、人付き合いが良い性格も災いし、徐々に才能が潰れていきます。

ハヤシは、かつて新人王を受賞するなど実績もあり優秀なプロボクサーでしたが、昔とは違い節制を怠りボクサーらしくない生活を送っていました。

減量も手を抜き、お酒やタバコにも手を出すという、およそプロボクサーらしくない人物で、シンジも彼を言うことを真に受け、悪習が身に付いて行きます。

ある日、シンジは馴染みの喫茶店にてマサルと偶然再開します。

【結】キッズ・リターン のあらすじ④

挫折を経ての再開

二人の間に言葉をありませんでしたが、シンジはその様子からマサルがヤクザの世界に入ったことを悟ります。

表の世界で順調にコトが運んでいくシンジに対し、マサルはヤクザの世界で修羅の道を極めます。

下っ端からのし上がり、組での地位も子分を従えるほど確立されたマサルは、ある日シンジが通うボクシングジムにて、またいつか再開しようと告げます。

しかし、その後の二人はお互いの世界でつまずき、徐々に挫折を味わい始めます。

マサルは自身の組長襲撃事件がきっかけに、コトを荒立てないように努めていた組に反発したことにより、上層部に制裁を加えられます。

シンジは、ハヤシとの交流がアダとなり、次第に試合でも成果が見せられなくなる有り様で、ついに引退してしまいます。

それぞれの世界で酸いも甘いも色々な経験をした後、ついに退き改めて再開を果たします。

高校時代のように自転車に二人乗りし、かつての高校の校庭を颯爽と駆け抜け、シンジはマサルに問いかけます。

「俺達、もう終わっちゃったのかな?」と問うシンジに対し、「バカヤロウ、まだ始まっちゃいねぇよ!」と、高校時代の頃のようにキラキラした表情でマサルが答えます。

キッズ・リターン を観た感想

誰しもが人生で味わうような挫折と、それまで何の縛りもなく自由に過ごしていた青春時代と、複雑な大人の世界の違いが見事に描かれている作品でした。

青春の残酷さが見てとれましたが、見終わった後も落ち込むことはなく、逆に清々しい気分にさせてくれる素晴らしい作品です。

主役のマサルとシンジだけではなく、様々な人物の栄光と挫折が描かれており、その人物達のバックグラウンドも想像せずにいられない、味のある人物描写が良かったです。

また、モロ師岡さんや石橋凌さんなど、作品の脇を固めるキャスト達の演技も印象的でした。

リアリティーのある作品ですので、年齢を問わず多くの人にオススメしたい作品です。

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