【ネタバレ有り】1Q84 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:村上春樹 2009年5月に新潮社から出版
1Q84の主要登場人物
青豆
本作の主人公。筋肉マッサージ、ストレッチのプロ。裏の顔を持つ。少女時代家族ぐるみで「証人会」の信者だった。
天吾
青豆同様本作の主人公。予備校の数学教師のかたわら小説を書いている。
深田絵里子
女子高校生。通称ふかえり。「空気さなぎ」の原作者。美少女。
深田保
ふかえりの父親。謎多き人物。
1Q84 の見どころ!
・作中小説「空気さなぎ」のストーリー
・キャラクターの生き生きした会話
・作中の音楽
1Q84 の簡単なあらすじ
1984年、青豆と天吾は、別の場所でそれぞれの生活を送っていました。
ある時青豆は、空に月が二つあるのを発見し、その不可思議な世界を1Q84と呼ぶようになります。
同じ頃、塾講師のかたわら小説を書いている天吾は、未完の大作「空気さなぎ」を加筆修正するという大仕事を引き受けます。
その時から二人の人生と世界のあり方が変わり、困難に直面し、過去と向き合い、それぞれの答えを導き出します。
1Q84 の起承転結
【起】1Q84 のあらすじ①
青豆は仕事に向かう途中、タクシーで流れる音楽が1926年作曲ヤナーチェックのシンフォニエッタでだと気付きますが、なぜ自分がその曲の詳細を知っているか疑問でした。
高速道路で渋滞に巻き込まれ、タクシー運転手の勧めで道路脇の非常階段から脱出します。
階段を降りながら、高校時代の親友の大塚環と二人で行った旅行中、遊びで寝たことを鮮明に思い返します。
情景は浮かぶにも関わらずそれがいつのことであったか思い出せず、頭の中ではタクシーで流れていた音楽が延々と鳴り響くのでした。
青豆は仕事現場に直行する途中で警察官の制服と拳銃が以前と違うことに気が付き、それがいつ頃変わったのか強く疑問に感じます。
そして現場ホテルに到着し、滞在する男をアイスピックを使った特殊な方法で殺害します。
彼は常習的に妻へ暴行を加えてきた男でした。
そんなろくでもない人間の殺害が青豆の裏の仕事で、普段はスポーツクラブで筋トレなどのレッスンを受け持っていました。
仕事後、青豆はバーで行きずりの男性と酒を飲み一夜を過ごします。
これはある時から青豆の習慣となっており、行動の意味は青豆にも明確に説明できないのでした。
後日、青豆は雇い主の老婦人の住む「柳屋敷」を訪れます。
ボディーガードのタマルと屋敷の番犬ブンの話や近況を話し、老婦人のもとへ案内されます。
老婦人は青豆の生徒でもあり、お互いの秘密を共有する関係でした。
裏の仕事関係の用件を済ませた帰り、タマルに警察官の装備について訊ねます。
タマルによれば過激派組織による山梨県警との銃撃事件を境に二年前変わったということでした。
事件の存在さえ知らなかった青豆は、図書館で事件を確認します。
事件は新聞の一面に大きく載っており、過激派組織「あけぼの」が山梨県警に対し銃撃戦を起こし射殺または逮捕され、県警側も三人死亡した大事件でした。
同時期に起こったNHKの集金人が大学生を刺した事件などは、それによってかすんでいました。
犯罪がらみのニュースには特に注意しているはずの自分が、そんな大事件を見過ごしたことにショックを感じ、ここ最近の周囲への違和感と関係があると考え始めます。
考えるうちに、世界は以前と同じ世界ではなくなったと仮定します。
青豆のいた1984年の世界とパラレルワールドのように存在するその世界を、1Q84と名付けます。
そして、非常階段で感じた不思議な感覚を思い返し、そこで世界が転換したと思えてならないのでした。
一方、天吾は編集者の小松から新しい仕事を持ちかけられ、話の途中発作に襲われます。
天吾は時々、母が父でない男に乳首を吸わせている記憶がフラッシュバックし、立ちくらみのような症状に苦しめられるのです。
仕事は「空気さなぎ」という作品を芥川賞を取らせるために加筆修正する、という公にできない内容でした。
発作はそれを聞いた後に起こったのでした。
「空気さなぎ」は女子高生のふかえりが書いた小説で、物語は非凡で風変わりなものの、文章は読みづらく荒削りでした。
そこで、天吾はその許可を得るためにふかえり本人に会うことになります。
ふかえりは作品内容同様風変わりで、その上美しい少女でした。
修正を許可したふかえりは、親代わりのエビスノに会ってほしいと頼みます。
後日、ガールフレンドと電話した後、ふかえりからも電話がかかり、日曜日に一緒に会いに行くと伝えられます。
天吾は家出以来会っていない父を思い出します。
NHKの集金人だった父は、日曜日には決まって幼い天吾を集金に連れ回し、それは天吾にとって苦痛でした。
日曜日、エビスノを訪問した天吾は、ふかえりが読字障害で文字の読み書きが困難なことと、その過去を知ります。
「空気さなぎ」はふかえりの話をエビスノの子アザミがタイプして完成した作品で、リトル・ピープルにその内容を聞かれないよう注意した、と信じがたい事実を語ります。
エビスノと天吾は向かい合い、ふかえりの過去を話しますが、その間ふかえりは何も言いませんでした。
ふかえりの父、深田保とエビスノは大学教授時代、親友でしたが、学生運動のさなかで深田保は逮捕され、エビスノは辞職しました。
深田保は学生を率いて「さきがけ」というコミューンを立ち上げ、そこで農業を営み共同生活を送っていましたが、やがて穏健派と革命指向の武闘派に分かれます。
深田保は「さきがけ」にリーダーとして残り、ついに武闘派は「あけぼの」として独立しました。
時を経て「さきがけ」は閉鎖的なグループとなっていき、1979年に突然、宗教団体に認定されます。
ふかえりはその前に「さきがけ」を抜け出し、「さきがけ」の内部は謎に包まれたまま、かつ深田保の安否も不明のまま今に至ります。
「あけぼの」は銃撃事件を起こしたと聞いても、天吾はその事件の詳細を思い出せないのでした。
話を聞き終えたた天吾は「空気さなぎ」の内容はふかえりの実体験だと想定し、作中のリトル・ピープルの意味を考えます。
それが実在してもしなくても、「空気さなぎ」を修正することでその意図が明確になっていくのではと考え、エビスノもそれに賛同します。
【承】1Q84 のあらすじ②
青豆が老婦人と初めて話した時のことなどを思い出しながらホテルのラウンジで飲んでいると、見知らぬ女性に声をかけられます。
あゆみと名乗る彼女は警察官で、チームを組んで男に声をかけないかと誘います。
充実した夜を一緒に過ごした二人はその後も会うようになります。
友だちと言える人と時間を過ごしたのは環以来でした。
親友環が死んだ前後のことを思うと、青豆は今でも強い痛みを感じるのです。
環は結婚した後、夫の偏執的なまでの酷い暴力に追い詰められ、自殺しました。
夫と夫の両親は口を揃えて原因は思い当たらないと嘘をつき、検死で環の状態を見ていた警察も自殺を刑事罰にはできませんでした。
そして青豆は、男に制裁を加えることを決意します。
筋肉について熟知していた青豆は、首の急所をピンポイントでつく殺害方法を編み出し、実行します。
その時期から、青豆の行きずりの男を求める習慣が始まったのでした。
ある日青豆はあゆみと食事に出かけ、恋人の有無について話します。
青豆は十歳の時に手を握った男の子をずっと心に想っているので恋人は作らないと答えます。
その日の夜、青豆が窓から空を眺めると、月が二つ浮かんでいることに気付きます。
翌日、老婦人と食事し、老婦人の娘も環と似た理由で自殺したことを打ち明けられた日のことを思い返します。
老婦人は家庭内暴力に苦しむ女性のためにセーフハウスと相談室を開設しました。
それだけでなく、老婦人もまた、娘の夫を社会的に殺害し、かつ他の被害者の夫の一部にも制裁を加えていました。
老婦人は青豆に協力を求め、青豆が受け入れた時から、狂気に似た関係が生まれたのでした。
食事を終えた後、青豆はある命がけの仕事の相談を受けます。
仕事はなんと「さきがけ」のリーダーを殺害するというもので、コミューン内での幼い少女へのレイプが発覚したためだと言うのです。
セーフハウスに保護された十歳の少女はつばさと言い、何も言わずうつろな目をしていました。
子宮を破壊された状態だと知った青豆が思わず誰にやられたのかと聞くと、「リトル・ピープル」と答えるのみでした。
リトル・ピープルが何なのか、全く分かりませんでした。
その夜、寝ているつばさの口から五人のリトル・ピープルが出現し、空中から取り出した白い糸で白い物体を大きくしていく、という作業がひっそりと行われたのでした。
「さきがけ」はクリーンな宗教団体ではないと踏んだ青豆は、警察官のあゆみに調査を頼みます。
あゆみは引き受け、「さきがけ」の謎の資金ルート、内部で生活する子ども達は成長していくにつれ口数が減りうつろな表情になり学校に通わなくなっていくことが多いことなどが徐々に明らかになります。
その後、セーフハウスで番犬ブンが何者かに惨殺される事件が起こります。
一方、エビスノを訪ねた帰り道の天吾は、小学生の同級生だった女の子を思い出します。
宗教団体「証人会」の信者の家に生まれた彼女は、その特殊な生活から皆から無視されていましたが、一度天吾は困っている彼女を反射的に助けたことがありました。
ある日彼女と天吾が教室にたまたま二人きりになった時、彼女に手を握られたことがあり、その情景は忘れたことがありませんでした。
天吾は自分が彼女を求めていることに気が付きます。
天吾はガールフレンドと過ごし、それから自分の発作の元となる記憶について考え始めます。
天吾は、自分の父親は本当の親子同士ではなく、母親の乳首を吸う男こそが本当の父親ではないかと、昔から感じていました。
外見的にも内面的にも父と天吾に共通点は全くなかったからです。
それに、父から大切にされた記憶はないどころか、自分の中の何かを憎まれているのではと感じることが多々あったからでした。
世間では「空気さなぎ」は新人賞を取り、ベストセラーとなっていました。
記者会見を終えた数日後、ふかえりから電話があり、天吾はエビスノとふかえりと三人で会うこととなります。
エビスノはふかえりの両親と連絡がつかない今、正式な後見人にはなれません。
もしもこのベストセラー騒ぎで両親が出てくると強制的にコミューンに連れ戻される危険があるのではと天吾は懸念します。
エビスノは両親もふかえり関係で世間の注目を集めることは望んでいないとし、また注目こそがメディアをやがて「さきがけ」の内部に向けさせるきっかけとなるとし、そうなることを望んでいました。
さらに「さきがけ」が宗教団体へ変貌する過程にクーデターが起き、多くを知るリーダー、深田夫婦は監禁されているのではないかと推察します。
それに対しふかえりはリトル・ピープルがやってきたからだと言い、エビスノはリトル・ピープルが一体何なのかを「空気さなぎ」によってつかめるのではないかとも言います。
天吾は「空気さなぎ」に登場する架空の存在のはずのそれが、現実に作用していることと、「さきがけ」の実態の怪しさに、この件は危険だと感じ始めます。
しばらくして、ふかえりが行方不明になったと小松から連絡が入ります。
【転】1Q84 のあらすじ③
青豆が「柳屋敷」を訪ねると老婦人は思い詰めた様子で、つばさが部屋からいなくなった、と言います。
誰かに連れて行かれたわけでなく、自分の意思でここから出て行ったというのが老婦人の見解でした。
「さきがけ」のリーダーがこれまでレイプした少女はつばさを含め四人まで特定した老婦人は、さらに驚くべきことを口にします。
彼は一番最初に、自分の実の娘を犯したと言うのでした。
リーダー殺害が成功した場合仕事を辞め遠くへ行き、顔と名前を変える必要がありました。
失敗すれば惨殺されるかもしれません。
青豆は覚悟を決め、タマルに拳銃の調達を頼みます。
老婦人は殺害の状況を整え日にちと時間、場所等の手はずを整え始め、青豆もタマルから拳銃を受取り、準備を進めていました。
そんなある日あゆみが殺されたニュースが飛び込みます。
あゆみはおそらく行きずりの男にホテルの一室で手錠で腕を縛られ、首を絞められました。
青豆は大塚環が死んだ時以来の涙を流し、あゆみをもっと受け入れてあげれば良かったのだと悔います。
その後、タマルからリーダー殺害の手はずが整ったと連絡が入ります。
青豆はリーダーの筋肉マッサージを受け持ったトレーナーとして彼らと待ち合わせし、その途中で密かに殺害するという手はずでした。
青豆は感情を必死に抑え、リーダー殺害に向かいます。
いよいよ死が近いと思い、青豆は天吾のことを想います。
小学生の時教室で手を握り合った記憶は、全てを失った後でも残ると考えます。
リーダーと青豆はホテルの一室で向き合い、青豆は真実を知ります。
リーダーは一見して普通ではない雰囲気をまとい、人の心を読み、世界の状況を把握していました。
1Q84にはリトル・ピープルが存在し、彼らにより彼とふかえりは普通ではない能力を手にし、二人は交わり、彼らの代理人になった流れを語ります。
リーダーとふかえりはセットで役割を果たしました。
ふかえりは知覚し、リーダーが受け入れる者となり、リーダーがリトル・ピープル代理人となり、ふかえりはそれに反発する存在でした。
それにより世界のバランスが保たれ、そのためにふかえりは空気さなぎから自分の分身を生み出しますが、分身は概念であり実体とは違うと言います。
さらに、レイプ被害者の少女もまた実体のない存在で、リーダーはたしかに彼女と交わったが、概念の中で行われたものだと言います。
女たちは巫女として交代で交わり、その間リーダーは体が麻痺し、感覚は消えます。
麻痺状態は神聖な状態と考えられ、女たちは後継者を求め交わりますが、彼女たちには月経がないのです。
また、あゆみの死について、リトル・ピープルは世界のバランスのための善悪を超えた存在であるためその犠牲になったとし、その事実はリサーチャーに調べさせたことだと言います。
リーダーは特別な能力の代償に、全身が激痛に襲われる持病を抱えていました。
青豆は戸惑いつつも、手はず通りに筋肉マッサージを施します。
通常の人には耐えられない痛みにも身動きせず、それは普段彼が感じている痛みの激しさを物語っていました。
そして、青豆の目的を読み、殺されることを自ら望みます。
殺すことが本当に正しいのか悩む青豆に、小説「空気さなぎ」にはリトル・ピープルに反抗する力があると言い、自分を殺すことは天吾の命を助けると青豆を説得します。
しかしその代わりに青豆はこの世界から消えなければならなくなるだろうと伝えられます。
天吾への愛を優先させた青豆は、ついに殺害を実行します。
一方、天吾のもとに牛河と名乗る怪しい男の訪問が相次いでいました。
男は自らをリサーチャーだと言い、天吾とふかえりの関係性をつかんでいました。
そこで天吾に作家活動のための助成金を渡すと何度もセールスし、天吾は何度も断ります。
天吾がふかえりと組んで作家活動を行うことはリサーチャーにとって都合が悪いことのようでした。
リサーチャーに力はなく、クライアントの指示に従うのみだと言い、クライアントの素情はひた隠しにしていました。
その上天吾が断った場合、天吾とその周囲に良くない影響が及ぼされると脅しをかけますが、一体何が起きるのか、具体的なことははぐらかされるのでした。
天吾はふと青豆のことを考えました。
彼女に手を握られた後の天吾は彼女を観察するようになります。
そして彼女が「証人会」の信者としてでなく、普通の少女として周囲から受け入れられ、仲良く話ができたらどんなに良いだろうと考えます。
しかしそのようなことはないまま青豆は転校しました。
それから、天吾は自分が青豆に対して何もしなかったことを悔やむことになります。
成長してからもその想いは消えず、一瞬でも青豆と触れ合った時間と心の震えを、ほかのどんな女性にも感じることはできませんでした。
同じ頃、ガールフレンドと連絡が途絶え、安否不明となります。
それについて牛河に問うと、自分たちは何もしておらず、天吾とふかえりの二人が病原体のような役割を果たしているのだと告げます。
助成金を受け取ればそれはなくなると考えられましたが、それも状況が把握できない天吾にとって信じられないことでした。
身動きのとれなくなった天吾は、ケアセンターにいる認知症の父に会いに行きます。
父は天吾のことが分からず、私には息子はいないと天吾に言います。
それは病気のせいばかりだと天吾には思えず、父は真実を語っていると直感しました。
さらに自分の父は誰なのかと問うと、母は空白と交わり自分が空白を埋めたと言います。
天吾は自分の推測が正しければ、父を憎む必要がなくなると伝えます。
父が血のつながりがない自分を育てたことと、今真実を語ったであろうことに感謝します。
天吾が病室を出る時、父の涙を見たのでした。
後日、失踪中だったふかえりから電話が入り、天吾のアパートにかくまわれることになります。
ふかえりはエビスノが用意してくれた隠れ家に身を潜めていたようでした。
ふかえりはリトル・ピープルが騒いでおり、異変が起きようとしていると言いました。
【結】1Q84 のあらすじ④
リーダー殺害後逃走に成功した青豆は、老婦人のはからいで高円寺のアパートに身を潜めます。
そこは天吾の住むアパートのすぐ近くでした。
青豆はアパートに用意されていた小説「空気さなぎ」を読みます。
コミューンに住む少女は死んだヤギの口から出てきた7人のリトル・ピープルを目撃し、一緒にまゆのような物体を作ります。
そして完成したまゆ、つまり空気さなぎの中をのぞくと、少女自身が横たわっていました。
彼らは空気さなぎの中の少女をドウタと呼び、少女本人はマザとなったと言いました。
少女は自分の分身と一緒に生活することはできないと思い、ドウタが目覚める前にコミューンを抜け出します。
父親にはそれが分かっていたようでした。
それから空には月が2つ出現します。
保護された先で学校へ行き、一人の少年と仲良くなります。
ある時、少年の部屋に空気さなぎが現れ、その中から分身ではなく黒い三匹の蛇が出てくる夢を見ます。
数日後、少年は突然病気のため療養所に送られます。
少女はそれが彼らの警告なのだと思い、また彼らは彼女自身や保護者には手を出せないのだと気付きました。
少女は学校へ行かず自分の空気さなぎを作り始めます。
リトル・ピープルは通路を通ってきたため、自分も通路を作り、その逆方向にある場所へ行けるのではないかと考えたのです。
物語は、少女が通路の扉を開くところで終わっていました。
青豆はリーダーの話と小説の内容から、つばさも実体ではなくドウタであり、「さきがけ」ではドウタが同じように何人か作られたのが事実だと確信します。
そして青豆自身は「空気さなぎ」の反リトル・ピープル作用によって1Q84への通路を通ってしまったと考えます。
その夜、青豆が考え事のために外を眺めている時、近所の公園に天吾の姿を目撃します。
青豆は悩んだ末にそこに向かいますが、到着した時すでに天吾は立ち去った後でした。
それでも深く感激し、あることを決心します。
自分が1Q84にやってきた通路だと思われる高速道路の非常階段に行き、1984年に行けるのか確かめに行くことでした。
しかし、そこにはもうすでに非常階段は消えており、やるべきことは全て終えたと感じ拳銃を取り出します。
青豆は拳銃を口に突っ込み、引き金に力を入れました。
一方、リーダーの死と同時刻、天吾とふかえりは交わります。
ふかえりはそれが儀式的なものだと言い、天吾は気が付くと裸になり、なぜか身体は麻痺状態になっていました。
天吾はこの世界で異変が起きていることを確信し、混乱しつつも受け入れざるを得ません。
その間青豆のイメージのようなものが天吾の頭に浮かび、握られた手に彼女の感情のパッケージを届けられていると感じます。
パッケージはその時開く必要はなく、時が来れば開けば良いという無言のメッセージが伝わってきたのでした。
天吾は青豆が自分の知らないことを知っていると感じ、やがてイメージの中の青豆は立ち去ります。
天吾は出版社に電話をしますが、小松は会社を体調不良で突然休み、音信不通と知らされます。
そんなことはこれまでの小松にはあり得ない出来事でした。
ただ事ではないとふかえりに話しますが、ふかえりは何も言いませんでした。
そして次は自分に何かが起きるのではと言うと、ふかえりはオハライをしたから失われないと答えるのでした。
青豆に会わなければならないと強く感じた天吾は、青豆の行方を探し始めます。
しかし電話帳を調べ、小学校の名簿を見ても、結局行方はつかめません。
ふかえりに相談すると、青豆はすぐ近くにいるものの探し回っても会えず、青豆の方から天吾を見つけると予言します。
天吾はその意味を考え、もう一度青豆に手を握られた情景を思い浮かべます。
何度も考えるうち、窓の外には昼間にしては大きく、はっきり見える月が見えたことを思い出します。
それから公園へ行き、滑り台の上から夜空の月を眺めます。
そしてよく見ると月が二つ浮かんでいることに気が付きます。
その様子は天吾が「空気さなぎ」で描写した月の様子と全く同じでした。
天吾がふかえりに二つの月について話すと、当然のように私たちは二人で本を書いたからだと答えます。
さらに天吾は受け入れる役割を果たしていると聞きますが、自分がどのように変わったのか確信できませんでした。
そこにケアセンターから父が昏睡状態にあると連絡が入ります。
翌日、父のいる施設に向かい、父にこれまでの人生と自分について一方的に語ります。
話しかけることが容体を良くするという理由もありましたが、ほとんど自分のためでした。
父が目覚める気配はなく、検査のためにベッドから移動していきます。
天吾は看護師のすすめで少し休み、しばらくして病室に戻りました。
ドアを開けてベッドを見ると、父が寝ていたそこに白い大きなまゆの形の何かが出現していたのです。
天吾はそれが空気さなぎだと気付き、中には自分の分身が入っていると予測し、中を見る決意を固めます。
月と同じように、天吾が描写した空気さなぎそのままの姿でした。
恐る恐る中をのぞくと、中には天吾ではなく、少女の姿の青豆が目をつむり安らかな表情で横たわっていました。
その手にはぬくもりがあり、 青豆の感情のパッケージのぬくもりと重ね合わせます。
時を経て、天吾は青豆がくれたパッケージの中身を見ることができたように感じました。
空気さなぎがゆっくり消えていった後にもぬくもりは消えませんでした。
天吾はこの新しい世界を生き抜き、青豆を見つけ出そうと誓ったのでした。
1Q84 を読んだ読書感想
情報が多く、難解な作品ですが、キャッチ―でユーモアある表現や登場人物の生き生きとした話し口調に引き込まれる作品です。
設定はとてもユニークで、ファンタジー要素あり、SF要素あり、サスペンス要素ありで、作者の丁寧な描写から成り立つ独自の世界観を楽しめると思います。
物語が最後までどのように転ぶか予測できず、ここまで不思議な気分にさせられる小説もあまりないのではと思います。
また、登場人物も個性的で、それぞれのトラウマにも焦点が当てられます。
作中の物語「空気さなぎ」の内容が作中に影響し、トラウマを乗り越えようとする主人公たちの考え方の変化にも注目です。
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