村上春樹「1Q84 book1・book2」のあらすじ&ネタバレ

1Q84

簡単なあらすじ

天悟と青豆、かつての二人は孤独な小学生で、クラスメイトだった。二人の物語が交互に紡がれながら一つに重なる。1984年ならぬ、1Q84年の世界で。 10歳の頃、二人だけの誰もいない教室で友情とも恋愛ともつかない一瞬のかすかな交流を重ね、二人は離れ離れになった。 お互いの存在を記憶の奥底でほのかに感じつつ、時を経て大人になり、歳をとって再び出会う。現実的な、時に非現実的な、様々な苦難を乗り越えて。

起.青豆の物語、天悟の物語

青豆はスポーツジムのインストラクターとして勤務するかたわら、日の当たることのないこの世の闇に属する仕事を抱えていた。 とある老婦人に依頼され、ドメスティック・バイオレンスに苦しむ女性を解放する_暴力で女を支配する夫を秘密裏に始末する暗殺業だ。「仕事」を終えた青豆は見慣れた日常のいつもの風景に違和感を覚える。気がつかない間に1Q84年の世界に迷い込んでいた。 一方、予備校講師で生計を立てる天悟は目をかけてくれる編集者・小松の奇妙な依頼を断りきれなかった。 風変わりな少女・ふかえりを芥川賞作家に仕立て上げる。そのためには彼女の物語を「書き直す」必要があった。彼女の書く文章は酷いもので、「てにをは」もなってない。にもかかわらずその幻想的な物語に心惹かれずにはいられない。倫理的な葛藤を抱えつつも、その書き直し=リライトに天悟はのめり込み、スキャンダラスな事件に巻き込まれる。

承.改変された物語、改変された世界

天悟はふかえりの物語「空気さなぎ」のリライトを進める。主人公は10歳の少女で、人里を離れた宗教的なコミュニティで自給自足の生活を送っている。 教団が崇める超自然的な存在リトル・ピープルが空気から糸を紡ぎ出し、少女の形をした繭のような「空気さなぎ」を作った。「空気さなぎ」が完成すると、世界には月が二つ並んで浮かんでいた。 青豆は夫の家庭内暴力を苦に自殺した友人の復讐を遂げた後、自身の娘をDVで亡くした老婦人と知り合う。老婦人はDVの被害にあった女性を保護し、加害男性に制裁を施していた。そして老婦人の依頼を受けて青豆はDV男に暴力を執行した。 仕事の後、青豆は異常なほどの性欲に苛まれる。バーで男漁りをしていると、同じく手頃な男を探している婦人警官と知り合い意気投合する。 その夜、空に二つの月が並んで浮かんでいることに青豆は気づいた。

転.改変のあとさき

計画通り、天悟のリライトした「空気さなぎ」は文学新人賞を受賞し、ふかえりは新人作家としてデビューした。17歳の美しい少女として世間の注目を集めた。その幻想的な作風が、風変わりなふかえりのキャラクターと相まって評判が評判を呼び、「空気さなぎ」は大ベストセラーになった。騒動の過熱を危惧し、ふかえりを世間から隠すことを決める。 なしくずし的に天悟はふかえりを匿うことになった。 青豆は次の依頼を老婦人から受ける。 とある宗教教団の教祖であるリーダーと呼ばれる人物を殺害する仕事だ。 教祖は閉鎖的な宗教施設において、恒常的に幼い少女をレイプしている。子宮が破壊されるほどの徹底ぶりだ。 青豆は老婦人の手配のもと暗殺を成功させ、教団の報復から逃れるため隠遁生活を強いられる。そこで考えるのは20年前、小学校の教室でたった一回だけ手を握りしめた少年のことだった。

結.重なる思い

天悟はふかえりとの奇妙な共同生活を送りながら自分の小説を書こうとしていた。そこへ介護施設に入っている父が危篤だと連絡を受ける。ふかえりを一人で自分のアパートに置き、介護施設へ向かう。事務的に葬儀と火葬を終え、生前の父が使っていたベッドをふと眺める。そこには透明な糸で作られた繭「空気さなぎ」が横たわっていた。さなぎの中には一人の少女がいる。20年前に一度だけ手を握ったあの少女だった。 青豆は隠遁生活の中で、静かに自分の過去に向き合っていた。周囲の無理解に晒されずっと孤独に打ち震えていた幼少時代を思い出し、それでもなんとか耐えられたのはあの少年の存在だと確信する。そして彼の存在を深く求め、それが叶わないことを。 青豆は静かに覚悟を決める。

感想

青豆の章と天悟の章が交互に展開する村上春樹渾身の長編小説です。構造はずいぶんと入り組んでいますが、基本は純度100パーセントのラブストーリーです。主人公の二人はともに幼少期を孤独に過ごし、無理解な周囲の大人に傷つけられてきました。そんな二人だからこそお互いの存在を強く求めていたのでしょう。流れてゆく年月の中で如何ともしがたい現実に徹底的に打ちのめされて、生活のためのくだらない仕事を無難にやり過ごしたどり着いた境地がある。問題はなに一つ解決してないし、身近な誰かもなんの脈絡もなく命を落とす。そこに意味づけをするのはあるいは簡単なことだろう。そして薄汚れた現実社会の中でどうしようもなく消耗していく。人生に絶望してこそ読むべき小説です!

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