風の歌を聴け(村上春樹)の1分でわかるあらすじ&結末までのネタバレと感想

風の歌を聴け(村上春樹)

【ネタバレ有り】風の歌を聴け のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:村上春樹 1979年7月に講談社から出版

風の歌を聴けの主要登場人物

僕(ぼく)
物語の語り手。大学生。

鼠(ねずみ)
僕の友人。大学生。

ジェイ(じぇい)
「ジェイズ・バー」のバーテン。

風の歌を聴け の簡単なあらすじ

時は1970年の8月8日、東京の大学に通っていた「僕」は故郷の海辺の街に帰省していました。かけがえのない友人からの意外な告白、偶然に出会った不思議な女の子との束の間の交流、行き付けのバーの美味しいビールに変わらないフライドポテト。8月26日までの短い期間に、僕の中には忘れ難い夏の思い出の数々が刻まれていくのでした。

風の歌を聴け の起承転結

【起】風の歌を聴け のあらすじ①

3年前に遡る僕と鼠の衝撃的な出会い

僕と鼠との出会いは今から3年ほど前の、大学生になったばかりの春先のことです。午前4時過ぎに飲酒運転のフィアット600で動物公園の猿の檻に突っ込んでしまったために、3年がかりで高額の補修費を払うはめになりました。お気に入りの車はあっけなく大破してしまいましたが、運転していた鼠と偶然にも乗り合わせていた僕にはかすり傷ひとつありません。

この事故がきっかけになってすっかり意気投合したふたりは、チームを組んで行動を共にしていきます。

海辺の町で生まれ育った僕はひどく無口な少年で、心配した両親によって知り合いの精神科医の家に連れていかれる程です。毎週日曜日になると僕は電車とバスを乗り継いで診察に通うことになり、コーヒー・ロールやクロワッサンなどのお菓子を摘まみながら治療を受けます。

14歳になった途端に堰を切ったようにお喋りになりますが、一時的な熱が収まると平凡な少年に戻りました。

そんな僕にとって鼠は、初めてできた友達です。

【承】風の歌を聴け のあらすじ②

行き付けのバーと出会った女性

1970年の8月8日、大学が夏休みに入って地元に帰省していた僕は午後のプールで泳いでいました。

一旦家に引き返して食事を済ませると、行き付けのお店「ジェイズ・バー」を訪れます。

いつものように鼠と会ってお喋りをしたかったのですが、ビール3杯で1時間ほど粘ってみても姿を現しません。

顔を洗うために洗面所に行った僕が発見したのは、床の上で眠りこけていた左手の指が4本しかない若い女性です。

バーテンのジェイと傷の手当てをした僕は、バッグの中に入っていたハガキの住所を手掛かりに彼女を自宅アパートまで送り届けました。港にある小さなレコード店で働いている彼女と、僕は次の日からデートをするようになります。

5年前に父親が脳腫瘍で苦しみ抜いた末に亡くなったこと、治療に莫大なお金がかかり家族はバラバラになってしまったこと、生き別れになった双子の妹がいること。

海沿いの道を一緒に歩きながら、彼女は自身の過去を少しずつ語り始めていくのでした。

【転】風の歌を聴け のあらすじ③

プールサイドで打ち明けた鼠の一大決心

数日後に僕は鼠を誘って、山の手の旧華族のお屋敷をリノベーションしたホテルのプールに遊びに行きました。

交通の不便な小高い丘にあり夏も終わりかけていたために、25メートルレーンには10人ほどのお客さんしかいません。

たっぷりと泳いだ後にデッキ・チェアに並んでコカ・コーラでひと息ついていると、鼠は僕に大学へ戻らないことを告げます。

彼の父親は家庭用洗剤や虫除け軟膏の事業に手を出してお金持ちになった世渡り上手でしたが、かえって鼠には重荷になっているようです。

父のお膝元を出てどこか知らない街に行き、小説を書くことが鼠のこれからの目標でした。

普段はスポーツ新聞とダイレクトメールくらいしか読まない鼠は、当然ながら1行もかけていません。

しかし鼠は、書くたびに自分自身が啓発されていくような素晴らしい作品を目指しています。僕は車で鼠を家まで送り届けてから、ひとりでジェイズ・バーに立ち寄ってジェイの手作りのフライドポテトを食べるのでした。

【結】風の歌を聴け のあらすじ④

夏の終わりとそれぞれの旅立ち

8月26日、東京に帰る前に僕はスーツケースを抱えたまま「ジェイズ・バー」に顔を出しました。

まだ開店していませんでしたが、ジェイはビールをご馳走してくれた上にお土産のフライドポテトまで持たせてくれます。夜行バスに乗り込んだ僕は窓の外を流れていく夜景を眺めながら、まだ暖かいフライドポテトを食べました。

ジェイズ・バーは道路拡張計画に引っ掛かって一時は取り壊しの危機に晒されてしまいますが、リニューアルオープンして今でもひっそりと営業を続けているようです。 鼠は現在執筆活動に打ち込んでいて、毎年クリスマスになると小説のコピーを僕にプレゼントしてくれます。

指が4本しかない彼女は働いていたレコード屋を辞めてしまい、アパートも引き払ったためにあの夏以来会っていません。

結婚して東京で暮らしている僕は、夏になると故郷の街に戻ります。

いつか彼女と一緒に歩いた海沿いの道を独りで辿って水平線を眺めますが、不思議と涙は出てこないのでした。

風の歌を聴け を読んだ読書感想

1970年代の神戸を思わせるような、山と海に挟まれた街並みが味わい深かったです。

外国船員が置いていったペーパーバックを安売りする古本屋や、ビーチボーイズのLPを並べたレコード店などノスタルジーに満ち溢れていました。

主人公が行き付けにしている「ジェイズ・バー」の、地元の人たちから愛され続けている店内のムードも伝わってきます。

バーテンダーのジェイがじゃがいもを剥いて手作りする、揚げたてのフライドポテトも実に美味しそうです。

夏の終わりと共に、登場人物がそれぞれの道のりを歩んでいくクライマックスが哀愁たっぷりでした。

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