海のふた(よしもとばなな)の1分でわかるあらすじ&結末までのネタバレと感想

海のふた

【ネタバレ有り】海のふた のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:よしもとばなな 2004年6月にロッキング・オンから出版

海のふたの主要登場人物

まり
美術の短大を卒業し、伊豆に戻ってかき氷屋を開いた。

はじめちゃん
まりの母の親友の娘。夏の間、まりと一緒の過ごすことになる。

まりの母
まりに、はじめちゃんのそばにいるようにもちかけた。先を見通す力がある。

海のふた の簡単なあらすじ

美術の短大を卒業した まりは、考えていた南の島への移住をやめて、故郷の伊豆へ戻ります。自分が唯一ずっと好きなものはかき氷だということに気付き、小さなかき氷屋さんを開き、少しずつ、地道に日々を送っています。そんなある日、母が親友の娘を預かると言い出し、まりに面倒を見るように言います。

海のふた の起承転結

【起】海のふた のあらすじ①

いざ、開店

美術の短大で舞台芸術を学んだものの、そこまで興味を持てず、卒業後に久しぶりに故郷の伊豆に戻ってくることになった、まり。

南の島への移住を本気で考えていましたが、その下見で、南の島のフクギ並木の近くにあるかき氷屋さんを訪れた時に、自分が唯一小さい頃から変わらず好きなものは「かき氷」だけだと気付きます。

そして、伊豆に帰ることを決意したまり。

地元に帰り、そのさびれっぷりにさみしさを感じながら、少しでも町の役に立とうと考え、周りの人の協力を得ながら小さなかき氷屋さんを開きます。

人からのもらいものや、自分で揃えたもの、自分で作ったもの。

自分の大好きなものに囲まれた「自分の店」を日々営んでいくことは、地道ではありますがとても充実しています。

まりのかき氷屋さんには、普段よく見る毒々しい色のかき氷シロップとは違う、手作りの素朴なシロップを使っているため、お客さんにそれを受け入れてもらえないこともあります。

しかしまりは自分のこだわりを大事にしながら、日々こつこつと働きます。

【承】海のふた のあらすじ②

はじめちゃんとの出会い

ある日、まりの母は、親友の娘をしばらくの間預かることにしたと言い出します。

その「はじめちゃん」は、おばあちゃんが亡くなったことにとても傷つき、さらにその後に親戚が遺産争いでもめ出した姿を見てしまい、心を閉ざしかけていました。

まりの母は、はじめちゃんの世話をまりがするように言います。

まりは初めは気が進みませんでしたが、誰かに自分の時間を捧げられることの大切さを想い、引き受けることにします。

そして、まりとはじめちゃんとの生活が始まりました。

はじめちゃんの顔には、昔家が火事になった時のやけど跡があります。

そのやけど跡だけでなく、はじめちゃんの心はおばあちゃんの死でとても傷ついており、身体はやせ細っていました。

まりはそんなはじめちゃんを見て、「この夏はみんなはじめちゃんにあげよう」と決意をします。

初めて2人で温泉に出かけた夜、はじめちゃんは、まりの店を手伝いたいと言い出しました。

そして、2人で過ごす夏が始まりました。

【転】海のふた のあらすじ③

二人で暮らす中で、はじめちゃんと、本当の「友だち」になれるかもしれないと思う出来事がいくつかありました。

まずひとつは、ふたりで視察がてらかき氷を出している喫茶店に出かけた時のことでした。

店に行く途中で、昔付き合っていた男の子にばったり出会ったのです。

その子との会話の中では、「せっかくエスプレッソマシンがあるならコーヒー氷をやってみてはどうか」というアイディアをもらいました。

そしてその直後、喫茶店では、今気になっている男の人に出くわします。

その男の子とも軽く会話をしたあと、はじめちゃんは「まりちゃんがああいう風に自然にしゃべったり笑ったりしてるところを見せられる人が、きっといいんだ。」

と、まりを素朴に思いやってくれるような発言をします。

まりはそのことに感銘を受けました。

また、まりの店をチェーン展開しないかという誘いがくるという事件もありました。

その時にははじめちゃんが電話でその話を断ってくれたのですが、その断り方から、はじめちゃんがまりの考えを大事にしてくれている様子がひしひしと伝わってきました。

そして、気が付いたら、まりにとってはじめちゃんは人生に欠かせない人になってきていました。

【結】海のふた のあらすじ④

命を吹き込む

はじめちゃんは定期的に泣いているようで、よく、泣きはらした目をしています。

ただ、泣いている姿を見せることはありませんでした。

しかしある夜、まりは眠れず、はじめちゃんの部屋をノックしてみます。

すると、泣き声が聞こえてきました。

中に入って少し話し、その夜は二人でまりの部屋で眠りました。

はじめちゃんの抱える深い悲しみを、少しだけ共有することができた瞬間でした。

ある日はじめちゃんは、まりがなにげなく描いてあった落書きの紙を持っていました。

まりは昔から、山とも海ともつかないところに住む生きものを描くくせがあったのです。

それがストレス発散になっているところがありました。

はじめちゃんはそれを一瞬で見抜き、慈しんでくれました。

そしてそれを、「ぬいぐるみにして販売したい」と言い出します。

ただのぬいぐるみではなく、それを持つ人の支えになるような、大事なものになるような、命を吹き込んだぬいぐるみです。

夏が終わり、はじめちゃんは帰っていきました。

まりはとてつもないさみしさに襲われましたが、出会いの大きさをかみしめていました。

秋が来て、はじめちゃんがつくった初めての作品が送られてきました。

それはとても素敵で、まりはそれをお店に飾りました。

ふたりが過ごしたひと夏は、ふたりにとってたくさんのものを残してくれたのでした。

海のふた を読んだ読書感想

人によって、場所や土地へのこだわり度は全く違うと思うのですが、私自身は「場所」や「土地」にこだわりがあり、そこに宿る力はとてつもないものだと思っています。

この小説を読んで、場所と人とのつながりの強さ、また、人と場所のエネルギーがうまく一致した時には人の傷を癒す力もあるということを改めて感じました。

本当に傷ついたことのある人は、その傷を癒すまでにとても強くなります。

ただ、それをひとりで乗り越えるか、だれかと乗り越えるかでは、そのあとの心の「かたさ」が大きく変わってきます。

人を信じて誰かと一緒に乗り越えられる機会があることはとても幸せなことで、それをできた相手とは、他の人とは全く違った形でのつながりが生まれます。

その事実に気付くヒントをくれるのが、この小説でした。

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