「ハゴロモ」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|よしもとばなな

「ハゴロモ」

【ネタバレ有り】ハゴロモ のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:よしもとばなな 2003年1月に新潮社から出版

ハゴロモの主要登場人物

ほたる(ほたる)

都会で一人暮らしをしていたが、不倫関係にあった男性から一方的に別れを告げられ失恋。ふるさとに舞い戻る。

大嵩みつる(おおたか みつる)

インストラクターをしながら、バス事故で夫を失い、以来床で臥せっている母親の面倒をみながら暮らしている青年。気が向いた時に自宅でインスタントラーメンを振舞う。

るみ(るみ)

ほたるの父親が再婚しかけた女性の連れ子。霊能力を持つ独特な女性。

ハゴロモ の簡単なあらすじ

都会で一人暮らしをしていたほたるは、父親と祖母が暮らすふるさとの町へ舞い戻ります。年上男性との不倫に溺れ、一方的に別れを告げられ失恋したほたるは失意の底にいましたが、都会と違いゆっくりとした時間をふるさとで過ごすうちに本来の自分を取り戻していきます。

ハゴロモ の起承転結

【起】ハゴロモ のあらすじ①

不倫の終わり

十八歳の時から八年間続いたほたるの不倫関係は、電話一本であっけなく幕を閉じました。

相手はそこそこ名の知れた写真家で、ほたるが住むマンションは彼が密会用に買ったもので、毎週金曜日は逢瀬を楽しみました。

付き合っている間の八年はあっという間で、彼と過ごす時間を最優先していたほたるは、他に恋人を作らず、就職もせず、時間をやりくりしやすいようにアルバイトで生計を立て、海外に撮影に行くとなれば付いていき、アシスタントとして手伝ったりしていました。

終わりは唐突でした。

もともと体の弱い奥さんが夫の不倫でノイローゼになり、心臓にまで支障をきたしてきたらしく、もうこうなったらほたるとの関係を解消するしかないと、彼は説明しました。

ほたるがすがったり憤ったりしてみても、彼の中ではもう終わったことになっているのか、結局ほたる一人でだだをこねている状況が続き、了承するしか手がなくなってしまいました。

彼が密会用に買ったマンションは手切れ金としてほたるのものになりましたが、思い出がつまっているそこに独りで居るのが苦痛で、ほたるは父親と祖母が住むふるさとの町へ舞い戻ったのでした。

【承】ハゴロモ のあらすじ②

ふるさとの実家

ほたるの母親は十歳の時に交通事故で亡くなり、父親は大学の教授をする傍ら心理学やニューエイジに関する本を訳したり、世界のあちこちを飛び回る生活を送っています。

ほたるが実家に戻る連絡をした時にはカルフォルニアに滞在しており、家は留守でした。

ほたるは、祖母が営む喫茶店の倉庫で寝泊まりさせてもらい、昼間はウェイトレスとして働かせてもらいました。

喫茶店は花屋かと見間違えるほどのたくさんの蘭の鉢が、所せましと置かれているヘンテコなお店でしたが、祖母が淹れるコーヒーは熱く、濃く、苦みと酸味が丁度よいバランスでとても美味しかったので、変なお店にもかかわらず常連客はちゃんとついていました。

ほたるの生活はほぼ恋愛に費やしていたので、別れてしまった今、宙ぶらりんの状態でした。

それでも毎日、淡々と決まった時間に寝起きし働いて過ごすうちに、失恋の痛手が癒えていることに気が付きます。

ゆとりが出てきたほたるは、隣町に暮らしている義理姉妹になりかけたるみに連絡を取ります。

【転】ハゴロモ のあらすじ③

るみとみつる

るみは、ほたるの父親が再婚しかけた女性の連れ子で、霊能力を持つほたるより四つ年上の女性です。

出会った頃はほたるは大学生でした。

るみの独特な雰囲気に戸惑ったことをよく覚えています。

結局再婚話はなくなり、二人は義理姉妹にはなりませんでしたが、交流は細々と続いていました。

久しぶりにほたるの顔を見るなり、るみは、幽霊みたいに気が弱くなっていることを指摘して、それまでのほたるの生活ぶりを察します。

気の置けない知人とのお喋りは、ほたるに活力を与えます。

そして、ほたるは運命的な出会いをします。

見覚えのある顔をした青年と横断歩道ですれ違い、向こうもほたるの顔をしげしげと見てすれ違います。

お互いどこかで会ったことがあるような気がするのですが思い出せません。

青年をスルーしてその場を立ち去ったほたるでしたが、どこの誰だかが気にかかります。

そして後日、ふらっと立ち寄ったラーメン屋の暖簾がかかっている部屋で、その青年と再会します。

名前を大嵩みつるというその青年は、事故の後遺症で床に臥せっている母親の面倒をみながら、マンションの一室で時折インスタントラーメンを振舞っているそうで、ほたるはみつるを前にして、やはりどこかで会ったことがあるな、と確信するのでした。

【結】ハゴロモ のあらすじ④

再出発

みつるの母親は、数年前に起きたバス事故の被害者でした。

自殺を目論んだ運転手が、乗客を巻き添えにして山道の崖からバスごと突っ込んだその事件は、死傷者を出す大惨事でニュースにもなりました。

夫婦でバスツアーに参加予定だったみつるの両親でしたが、野生の勘が働いた母親は行くことを拒否。

母親の必死の説得も空しく、父親は一人で参加し、かえらぬ人となったのでした。

以来、母親は床で臥せるようになり、みつるが面倒をみています。

ほたるはみつると親交を深めるうちに、みつるの母親とも話をするようになります。

そして、みつると以前どこで会ったのか思い出すことになります。

ほたるは幼い頃に生死をさまよったことがありました。

その時、みつるも同じ体験をしており、二人はこの世でない場所で交流したことがあったのです。

その時みつるから預けられた手袋をみつるの母親にプレゼントしたほたるは、その後うたた寝している最中にみつるの父親から、妻に渡して欲しいものがあると託をされます。

夢の中でみつるの父親に言われた通り庭を掘ってみると、そこにはみつるの母に渡すはずだった指輪が埋まっていました。

その指輪を見て、みつるの母親は泣き崩れ、以後少しづつ元気を取り戻します。

みつるの母親もみつる本人も元気になっていく様をみて力をもらったほたるは、今度は自分の再出発を誓うのでした。

ハゴロモ を読んだ読書感想

都会の生活と恋愛にクタクタになってしまった主人公のほたるが、ふるさとに戻り本来の自分を取り戻していく様子に元気をもらえる作品です。

また、食欲そそる食べ物描写も魅力の一つで、喫茶店を営む祖母が淹れるコーヒーやチーズケーキ、みつるが作るしゃきしゃきのもやしと胡椒がアクセントのサッポロ一番、川辺で食べるたこ焼き等、読んでいてよだれが垂れてきます。

長く続いた不倫に憔悴しきっていたほたるが、食べることや人との交流によって立ち直っていく姿にじんわり胸が熱くなります。

よしもとばなならしく、登場人物が全員ちょっとづつ壊れているのも微笑ましいです。

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