「ナミヤ雑貨店の奇蹟」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|東野圭吾

「ナミヤ雑貨店の奇蹟」

著者:東野圭吾 2012年3月に角川書店から出版

ナミヤ雑貨店の奇蹟の主要登場人物

敦也(あつや)
主人公。児童養護施設「丸光園」で育つ。部品工場をクビになり現在は無職。

翔太(しょうた)
丸光園出身。コンビニでアルバイト中。

幸平(こうへい)
丸光園出身。働いていた自動車修理工場が倒産して今は無職。

武藤春美(むとうはるみ)
IT部門とコンサルト業を手掛けるオフィス・リトルドッグの社長。

浪矢雄治(なみやゆうじ)
雑貨店の店主。

ナミヤ雑貨店の奇蹟 の簡単なあらすじ

自分たちが育った施設を買収から救うために敦也・翔太・幸平の3人は、社長の武藤春美の家に押し入ります。

逃走中に逃げ込んだのは過去と手紙のやり取りができるナミヤ雑貨店で、3人は32年前の武藤社長と文通をします。

彼女が悪質な地上げ屋ではなく施設を救おうとしていたことを知って、敦也たちは罪を償うことを決意するのでした。

ナミヤ雑貨店の奇蹟 の起承転結

【起】ナミヤ雑貨店の奇蹟 のあらすじ①

孤独な3人が逃げ込んだ先は愛される雑貨屋さん

敦也が物事ついた時には母親の側には不特定多数の男たちが出入りしていて、彼らから訳もなく暴力を振るわれていました。

警察から児童相談所へ連絡が入って、敦也は養護施設「丸光園」に預けられて、同じような境遇のふたりの少年・翔太と幸平に出会います。

施設を出てそれぞれ別の場所で働き始めた3人が、丸光園が取り壊されるという話を聞いたのは8月の初めのことです。

丸光園の買収を進めている女社長・武藤晴美の別宅を突き止めた敦也たちは、9月12日の午後11時に押し入って金目の物を運び出そうとしました。

帰宅した武藤と鉢合わせをしたために彼女を縛り上げてハンドバッグを奪い、付近にあった1軒のあばら家に隠れます。

ここはかつて浪矢雄治という年配の男性がひとりで切り盛りしていた雑貨店ですが、店主がなくなってからは誰も住んでいません。

夜に相談ごとを書いた手紙をシャッターから郵便受けに投げ込んでおけば、翌朝には店の裏にある牛乳箱に回答が入っている「ナヤミ解決の雑貨店」として週刊誌に載ったこともあります。

【承】ナミヤ雑貨店の奇蹟 のあらすじ②

時をかける悩み相談

背後で物音がしたために敦也が振り返ってみると、郵便口から投げ込まれた白い封筒が落ちていました。

「月のウサギ」と記されたその手紙には悩み相談が書かれていて、日付は日本がモスクワオリンピックをボイコットした1980年になっています。

質の悪いいたずらかと思いましたが、この家に敦也たちが上がり込んでから1時間以上経過したはずなのに時計の時刻は2分しか進んでいません。

翔太が携帯電話からネットに「ナミヤ雑貨店」と検索してみると、9月13日が浪矢雄治の33回忌で午前0時から夜明けまで一夜限りの復活が告知されていました。

この家の中と外では時間的に隔絶されていて郵便投入口と牛乳箱が過去とリンクしていることを確信した3人は、店主に代わって1枚ずつ返事を書いていきます。

オリンピックに出場するか余命幾ばくも無い恋人の側にいるのか悩む女性、実家の魚屋を継ぐのかミュージシャンとしての夢をかなえるのか悩む青年。

親身になって相談ごとに答えているうちに敦也は不思議な喜びを感じていましたが、夜明け前で1時間ほどとなったために次の手紙を最後にしなければなりません。

【転】ナミヤ雑貨店の奇蹟 のあらすじ③

丸光園に迫りくる危機

最後の相談者は「迷える子犬」というペンネームを使っている19歳の女性で、お世話になった人に恩返しをするためにとにかくお金を稼ぎたいとのことです。

彼女が自分たちと同じ恵まれない境遇で丸光園の出身者だと知って親近感が湧いてきた敦也は、1980年以降に起こる金融相場の情報を提供しました。

1986年以降の不動産物件やゴルフ会員権の値上がり、1990年代のバブル崩壊、2000年代のコンピューター・ネットワークの普及。

3人のアドバイスに素直に従った迷える子犬は、「オフィス・リトルドッグ」という巨大企業を立ち上げて経済的にも社会的にも成功を掴んでいきます。

その一方では幼い頃に両親と死別して行く宛のなかった彼女を、引き取って育ててくれた丸光園への恩を忘れることはありません。

先代の館長が亡くなってからは運送業を営んでいる息子が2代目となって何とか維持してきましたが、近頃では副館長が主導権を握って補助金の不正受給にまで手を出している有り様です。

【結】ナミヤ雑貨店の奇蹟 のあらすじ④

真っ白な手紙は未来への地図

武藤晴美のハンドバッグの中を漁っていた翔太は、「ナミヤ雑貨店様へ」と手書きされた1通の封筒を見つけました。

今から32年前の1980年に本名を隠して出した手紙、お金を稼ぎたいという願い事をかなえてくれた不思議なアドバイス、これからは自分が多くの人たちを救っていくという決意。

武藤社長こそが迷える子犬で丸光園を存続させるために奔走していたことを知った敦也は、押し入った家に戻って盗んだものを返却し自首することに決めました。

太陽の光が射し込み始めた頃に裏口から出た3人は、牛乳箱に入っていた1通の封筒を取り出します。

それは先ほど敦也が郵便口から投入した何も書いてない便箋に対する、浪矢雄治からの返答です。

わざわざ白紙を送ったということは地図がないということ、あなたたちの地図は真っ白で可能性は無限に広がっているということ。

人生を悔いなく燃やし尽くしてほしいという店主からのメッセージを受け取った、3人の瞳はキラキラと輝いたのでした。

ナミヤ雑貨店の奇蹟 を読んだ読書感想

モスクワオリンピックのボイコットやビートルズの解散を始めとする、1980年代の世相が然り気無く取り入れられていました。

1990年代の好景気やその後のバブル崩壊、さらにはITビジネスの発展もストーリーに絡んでくるのが面白いです。

過去と現在をつなぐ重要な役割りを果たすことになる、ナミヤ雑貨店の郵便受けや牛乳箱にもノスタルジックな雰囲気が漂っていました。

店主・浪矢雄治の人間味あふれるアドバイスが、地域の人たちから愛されていたことが伝わってきます。

不幸な生い立ちと貧しさが原因で犯罪に加担してしまった3人の若者たちが、何度でもやり直せる人生の素晴らしさに気がつくラストも感動的です。

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