「沈黙のパレード」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|東野圭吾

「沈黙のパレード」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|東野圭吾

【ネタバレ有り】沈黙のパレード のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:東野圭吾 2018年10月に文藝春秋から出版

沈黙のパレードの主要登場人物

湯川学(ゆかわまなぶ)
本作の主人公。天才物理学者。推理力に優れ、過去、いくつもの難事件を論理的に解決している。

草薙(くさなぎ)
警視庁捜査一課、係長。湯川の友人でもある。過去に、難事件を解決するよう湯川に依頼している。

並木佐織(なみきさおり)
三年前から行方不明になっていたが、火事の焼け跡から、白骨化して遺体が発見される。

並木祐太郎(なみきゆうたろう)
佐織の父親。『なみきや』という食堂を営んでいる。

蓮沼寛一(はすぬまかんいち)
二十三年前の少女殺害事件の容疑者として逮捕されるが、無罪となっている。並木佐織の遺体が発見されたのも、蓮沼の実家。

沈黙のパレード の簡単なあらすじ

行方不明となっている並木佐織の遺体が、過去に殺人罪で無罪となった蓮沼の実家から発見されます。しかし今回も、蓮沼は証拠不十分で釈放。その蓮沼が遺族の前に現れ、賠償金を要求してきたことから、佐織のために何人もが協力し、パレード当日に復讐を実行します。複雑に絡み合ったアリバイトリックを湯川が解き、佐織を殺害した犯人の解明、蓮沼殺害の犯人逮捕へとつながっていきます。

沈黙のパレード の起承転結

【起】沈黙のパレード のあらすじ①

事件発覚

静岡県のとある民家で火災が発生し、焼け跡から二体の遺体が発見されます。

一方の遺体は、その家で一人暮らしをしていた老女・蓮沼芳恵。

もう一方の遺体は、三年前から行方不明となっている並木佐織であると判明します。

佐織は東京都菊野市にある食堂『なみきや』の看板娘で、高校卒業後は歌手を目指していました。

歌がうまく、誰に対しても親切で明るい佐織は、町の人気者でした。

そんな佐織の遺体が発見されたのは、二十三年前に本橋優奈殺害事件で逮捕、無罪となった蓮沼寛一の実家でした。

当時十二歳だった被害者の優奈は、夕方に友達に会いに行くと言って行方不明になり、数年後に山中から遺体となって発見されます。

その後の捜査で、蓮沼が容疑者として浮上。

蓮沼の実家の冷蔵庫から、優奈のDNAが発見されたことで、蓮沼は逮捕されます。

ところが蓮沼が犯行を否認し、徹底的に黙秘したことにより、裁判では殺人罪が成立せず、無罪となりました。

そんな蓮沼の実家から佐織の遺体が発見されたことで、佐織殺害の犯人も蓮沼ではないかと捜査が始まります。

当時佐織が蓮沼に付きまとわれていたとの証言が、並木夫妻と佐織の交際相手だった高垣智也から得られます。

そして、佐織が最後に確認された防犯カメラに蓮沼が使用していた車が映っていたこと、家宅捜索で押収した物の中から佐織のDNAが検出されたことにより、蓮沼は逮捕されます。

しかし、逮捕された蓮沼は完全黙秘。

検察は拘留期限が切れる直前、蓮沼を処分保留にて釈放します。

そのころ菊野市では、湯川が教授として、新しい研究施設に滞在していました。

【承】沈黙のパレード のあらすじ②

復讐実行

湯川は度々『なみきや』に訪れるようになります。

ある日、湯川がなみきやにいると、蓮沼が店に姿を現します。

そして、警察に佐織殺害の冤罪を被せられそうになったと佐織の父・祐太郎を責め、賠償金について仄めかせて去っていきます。

蓮沼は、菊野市に滞在するため、昔の同僚・増村の元に住み着きます。

それを知った祐太郎の友人・戸島は、佐織の音楽の才能に惹かれ育成していた新倉直紀と、佐織の交際相手だった高垣智也に、蓮沼殺害計画を持ち掛けます。

『キクノ・ストーリー・パレード』当日、湯川は佐織の妹・夏美に案内され、パレードを見物します。

そこへ、夏美の母・真知子から、客が腹痛で倒れたため、お店に戻ってほしいと夏美に電話が入ります。

店に戻った夏美と、急病人の体調も戻り病院から帰宅した並木夫妻が店を開けていたところ、客から蓮沼が死んだことを知らされます。

蓮沼死亡を聞いた草薙は、菊野で捜査を始めます。

警察は、蓮沼殺害の動機がある関係者に当日のアリバイを聞きますが、みなそれぞれにアリバイがあります。

蓮沼の死因が特定できていないことから、草薙は湯川に現場を見せることにします。

現場は外側から鍵がかけられる引き戸で、戸の表と裏の引き手金具を外すと、四角い穴が貫通していることが分かりました。

湯川は、犯人はその四角い穴から室内にヘリウムガスを送り込み、殺害したのではないかと推理します。

しかし、現場近くの草むらから、ヘリウムガスのボンベとゴミ袋、蓮沼の髪の毛が発見されたことで、警察は、犯人が睡眠薬で眠らせた蓮沼の頭からゴミ袋を被せ、その隙間からヘリウムガスを注入したことで殺害したと考えます。

一方の湯川は、二十三年前の本橋優奈の事件にかかわりのある人間が、蓮沼殺害に関係しているのではないかと内海に進言します。

湯川が蓮沼殺害について調べていると知り、祐太郎、戸島、智也、新倉夫妻は動揺します。

【転】沈黙のパレード のあらすじ③

アリバイトリックと犯人逮捕

発見されたヘリウムガスのボンベは、パレード当日に盗まれたことは分かっていますが、盗んだ犯人の手がかりが見つからず、捜査は難航します。

湯川と内海は、発見されたボンベは犯人が仕掛けたフェイクの可能性があり、やはり蓮沼は現場の小部屋に充満させたをヘリウムガスで殺害されたのだと考えます。

本橋優奈の関係者を調べていたところ、優奈の母・由美子の兄が、蓮沼が菊野で身を寄せていた増村だと判明します。

湯川は、蓮沼の殺害に増村が関わっていると推理します。

湯川らは遺体発見時の状況を再現し、引き戸の四角い穴から室内に液体窒素を流し込むという実験により、凶器はヘリウムではなく液体窒素であると断定します。

翌日、戸島が経営する工場に捜査が入り、貯水タンクの液体窒素が減っていることと、防犯カメラの映像から、パレード当日に戸島が液体窒素を持ち出したことが分かります。

液体窒素を運ぶ方法を、パレードで使用された出し物の宝箱であると考えた警察は、智也から、戸島に協力を依頼されて液体窒素を運んだとの供述を引き出します。

そんな折、新倉直紀が蓮沼殺害の自供をします。

新倉が自供したと聞いた増村は、優奈殺害事件と由美子の自殺から蓮沼を恨んでいたこと、復讐しようとしたが思いとどまったことを警察に話します。

そして祐太郎の回想により、蓮沼殺害の計画を、祐太郎・戸島・増村の三人で立てたことが分かります。

パレード当日、客が腹痛を訴えたために計画は中止になるはずでした。

しかし、戸島から計画について聞かされていた新倉直紀が、単独で計画を実行してしまいます。

死に際の蓮沼から、店を出禁にされた仕返しに佐織を犯してやろうと公園で押し倒したところ、誤って殺害してしまったと聞いた新倉は激怒し、予定外に蓮沼を殺害してしまったのだと自供します。

【結】沈黙のパレード のあらすじ④

佐織殺害事件の真相

事件の真相にたどり着いた湯川は、一人で新倉留美のもとを訪ねます。

湯川は留美に、佐織殺害の真犯人は他にいて、蓮沼は真犯人からお金を脅し取るために、佐織の遺体を隠したのではないかと言います。

湯川の推理は、蓮沼は死体遺棄罪の公訴時効が成立する三年を待ち、実家のゴミ屋敷に放火。

自分が逮捕されることで真犯人にプレッシャーを与え、脅迫していたというのです。

祐太郎が蓮沼を監禁して真相を問い詰めるという計画を知った真犯人が、蓮沼が真実をしゃべってしまう前に、自分たちが蓮沼を殺害することにしたのだと言います。

その真犯人は、留美でした。

留美は、佐織と智也が交際していることで、恋にうつつをぬかし、修行に身が入らなくなることを危惧していました。

ある日、留美に公園に呼び出された佐織は、歌手を目指すことをやめたいと言います。

さらに佐織は、今の生活を、ストーカーに見張られているみたいで息が詰まると続けます。

新倉夫婦が命懸けで取り組んできたことをストーカー呼ばわりされ、カッとなった留美は、佐織を突き飛ばし転倒させてしまいます。

そのまま動かなくなった佐織を置いて逃げた留美が再び現場に戻ると、佐織が髪につけていたバレッタを残し、遺体はなくなっていました。

その後は湯川の推理通り、脅迫されていた留美が夫の直紀に打ち明け、蓮沼殺害の計画を実行したのです。

しかし湯川は、佐織殺害の真犯人は留美ではないと考えていました。

根拠は、佐織の倒れていた公園に血痕がなかったこと。

つまり蓮沼が、運んでいる途中に意識を取り戻した佐織の後頭部を殴打し、殺害したというのです。

湯川は、現場に落ちていたバレッタに血液が付着していなければ、致命傷は留美ではない別人のものだと主張できると言います。

こうして事件はすべて解決し、研究が一段落した湯川も、菊野から去っていきました。

沈黙のパレード を読んだ読書感想

登場人物が多く名前が覚えきれないので、物語の内容を正しく理解するのが大変でした。

また、蓮沼殺害の動機に二つの事件が絡み合っているため、新しい事実が判明するたびに、何度も前のページとを行き来しながら読み進めましたが、結局、最後まで犯人やトリックを見破ることは出来ませんでした。

蓮沼殺害に関わっていた人それぞれに違う動機があり、一人の人間を殺害するのに、いくつもの復讐を同時に成し遂げられている点が、物語が複雑になり、素晴らしいなと感じました。

容疑者であり被害者の蓮沼が、徹底的に悪人であるため、復讐されてスカッとする面もありました。

最後に佐織殺害の真犯人が新倉留美ではなく、やはり蓮沼の可能性が高いということが分かる点も、ある意味でハッピーエンドに近いので、読後感も良かったです。

ガリレオシリーズが好きで、小説もドラマも読んだり見たりしているため、途中のセリフに過去の作品を連想させるようなものを発見したときは、嬉しく感じました。

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