「浪花少年探偵団」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|東野圭吾

浪花少年探偵団

著者:東野圭吾 1988年12月に講談社から出版

浪花少年探偵団の主要登場人物

竹内しのぶ(たけうちしのぶ)
ヒロイン。短大を卒業してから教職に就く。大阪の下町で育ち口は悪いが人情味がある。

新藤(しんどう)
大阪府警の捜査一課に所属する刑事。 しのぶに恋愛感情を寄せる。

本間義彦(ほんまよしひこ)
産業機器の子会社に勤務。しのぶを巡って新藤と対立する。

福島友宏(ふくしまともひろ)
しのぶの受け持ちの生徒。 母親思いで家業を助ける。

田中鉄平(たなかてっぺい)
しのぶの受け持ちの生徒。クラスのムードメーカー。

浪花少年探偵団 の簡単なあらすじ

大阪の大路小学校で教壇に立つ竹内しのぶは、人一倍の好奇心や訳ありな生徒たちのせいで次々と事件に巻き込まれていきます。

事件を通じて知り合った刑事の新藤とエリートサラリーマンの本間義彦の両方から告白されますが、どちらにもハッキリとは返事をしません。

卒業式が終わって生徒たちを見送ったしのぶは、自分自身が成長するために大学で勉強することを決意するのでした。

浪花少年探偵団 の起承転結

【起】浪花少年探偵団 のあらすじ①

たこ焼きの思い出

大路小学校の6年5組を受け持っている竹内しのぶがいつものように出席を取ると、福島友宏の返事がありません。

友宏の父・文男が死体で発見されたと連絡をしてきたのは、大阪府捜査一課の新藤刑事です。

文男はトラックを屋台にしてたこ焼きを売る仕事をしていましたが、借金がたまっていたために妻の雪江に多額の保険金を掛けていました。

昨夜は文男のトラックが午後11時30分に自宅から出ていくのを近隣住民が目撃していましたが、その時刻の雪江のアリバイは新藤が確認をとっています。

しのぶが注目したのは太田美和という国語が得意な女子児童が提出した「たこ焼きの思い出」という作文で、友宏が父親と一緒にトラックの屋台を手伝っていたことが書かれていました。

午後10時には文男は雪江に突き飛ばされて頭を打ち亡くなっていて、トラックを動かしたのは友宏で日常的に暴力を振るわれていた母をかばうためです。

雪江はパトカーに乗せられますが正当防衛が成立してすぐにでも戻ってくる見込みで、その間しのぶはたこ焼きを売りながら母の帰りを待つ友宏を見守ることにします。

【承】浪花少年探偵団 のあらすじ②

路地裏に消えた少年

テレビゲームが大好きな田中鉄平は近鉄布施駅の南側に店を構える中村電器店を愛用していましたが、ある時に購入したばかりのカセットを見知らぬ少年に盗まれてしまいました。

担任のしのぶに相談してみると、さっそく放課後に駅前商店街に足を運んで犯人を探し始めます。

しのぶたちと同じく少年の行方を追っているのは新藤刑事で、彼の父親・荒川利夫が自宅で胸を包丁で刺されて亡くなっていたからです。

しのぶは少年が市場でカマボコを万引をして捕まった現場を目撃したために、商品の代金を弁償して身元保証人になりました。

利夫はトラックの運転手をしていましたが飲酒運転で事故を起こした揚げ句にクビになり、日雇いを転々とした後でここ半年は仕事をしていません。

妻の千枝子にも見捨てられて家賃を払えなくなったために、突発的に自殺をしたのが真相です。

母親と一緒に暮らすのか他の身寄りを頼るのか分かりませんが、少年はしのぶにかすかな笑顔を見せて路地の奥へと消えていきました。

【転】浪花少年探偵団 のあらすじ③

恋の捜査線

新藤刑事はしのぶがお見合いをすると田中鉄平から聞いたために、居ても立っても居られません。

お相手は豊中にある産業機器の大手メーカーの子会社・K工業で、幹部候補生として活躍している本間義彦という青年です。

お見合い場所である地下鉄梅田駅前のホテルのラウンジまで新藤が乗り込むと、K工業の社長が殺害されたという一報が舞い込んできました。

新藤と本間はお互いへのライバル意識を取り敢えずのところ封印して、ふたりで協力して事件の謎を追います。

K工業で経理を任されているのは大原ゆり子で、彼女のマンションの灰皿に残っていた外国たばこの銘柄は工場長の田辺が吸っていたものと同じです。

帳簿を操作して600万円もの使い込みをしていたゆり子と田辺は発覚を恐れて社長を殺害しましたが、新藤たちの活躍によって逮捕されてしまいました。

事件は無事に解決しましたが、しのぶは新藤と本間のどちらとお付き合いをするのかはいまだに決めていません。

【結】浪花少年探偵団 のあらすじ④

さよならしのぶ先生

1週間後に大路小学校の卒業式が迫っている中で、田中鉄平が住む緑ハイツで発生したのは朝倉町子がベランダから突き落とされる事件です。

鉄平の部屋は101号室で、町子の部屋がある303号室の真下にあります。

その間の201号室に住んでいるのは横田という電子部品会社に勤める男で、同僚の宮本清子を殺害した容疑がかけられていましたが証拠がありません。

自分の部屋に出入りしている清子を目撃されたと勘違いした横田が、口封じのために町子を突き落としたのがすべての発端でした。

幸いにも骨折だけですんだ町子の息の根を止めようと、横田が再び301号室に押し入ったのは卒業式の当日です。

待ち構えていたしのぶと鉄平の活躍によって横田は新藤刑事に引き渡されましたが、ふたりは卒業式をすっぽかしてしまいます。

来年の春からしのぶは兵庫県の大学で内地留学制度を利用して教育について勉強するために、しばらくは教師をお休みするつもりです。

式が終わってからようやくしのぶと鉄平が小学校に着くと、卒業証書を手渡してもらうために残っていた6年5組のみんなが「仰げば尊し」で出迎えてくれるのでした。

浪花少年探偵団 を読んだ読書感想

ストーリーの舞台になっているのは南部を流れる大和川のほとりや近鉄線の沿線・布施など大阪のダウンタウンエリアで、飛び交う関西弁か心地よかったです。

幼い頃はソフトボールのチームで才能を発揮してエースで4番だったという、主人公・竹内しのぶのサバサバとした立ち振舞も魅力的でした。

わんぱく盛りな男の子や大人びた女の子たちと真正面から向き合って、時には優しく時にはキツイ口調で投げ掛ける先生としてのメッセージには心が温まります。

次から次へと舞い込んでくる難事件を、警察顔負けの推理力によって解決へと導いていく展開も痛快でした。

コメント