「翔ぶ少女」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|原田マハ

「翔ぶ少女」

著者:原田マハ 2014年1月にポプラ社から出版

翔ぶ少女の主要登場人物

阿藤丹華(あとうにけ)
ヒロイン。震災時に右足を負傷。勉強全般が得意。

阿藤逸騎(あとういつき)
丹華の兄。 料理が上手。

阿藤燦空(あとうさんく)
丹華の妹。おしゃれで友だちが多い。

佐元良是朗(さもとらこれあき)
心療内科「さもとら医院」の院長。 愛称は「ゼロ先生」。丹華たちの養父。

佐元良裕也(さもとらゆうや)
是朗の息子。 心臓外科の先生。

翔ぶ少女 の簡単なあらすじ

震災で両親と死別した阿藤丹華を引き取ってくれたのは、神戸で心療クリニックを開業していた「ゼロ先生」こと佐元良是朗です。

心臓の病に倒れたゼロ先生を救うために、丹華は絶縁状態になっていた息子の裕也に会いに行きまます。

丹華の体に秘められた不思議な力を目の当たりにした裕也は手術を引き受け、親子は和解を果たすのでした。

翔ぶ少女 の起承転結

【起】翔ぶ少女 のあらすじ①

被災地に舞い降りた天使

1995年1月17日の火曜日に淡路島北部を震源地にして発生した阪神淡路大震災によって、阿藤丹華は両親と死別しました。

兄の逸騎と妹・燦空と途方にくれていた丹華を引き取ってくれたのは、神戸市長田区で心療内科を開業している「ゼロ先生」こと佐元良是朗です。

地震で妻を亡くしたゼロ先生は丹華たちを養子として引き取って、仮設住宅で4人一緒に暮らし始めます。

倒壊した実家から逃げる時に大ケガをした丹華の右足は、震災から2年以上が経過しても良くなりません。

さらには両側の肩甲骨が異様に盛り上がって皮ふが裂けて、小さな白い羽のようなものまで生えてきました。

1週間ほどすると肩甲骨の痛みはすっかり消え失せて、1対の羽は微かな血のあとを滲ませて丹華の背中から落ちます。

病気やケガで苦しんでいる人、困っている人を助けてあげたい、大人になったら医者になりたい。

宿題や学校の授業で分からないことがあったら徹底的に付き合ってくれるゼロ先生と共に、丹華は猛勉強をするようになりました。

【承】翔ぶ少女 のあらすじ②

震災によって引き裂かれた家族の絆

ゼロ先生が急に胸が苦しくなって救急車で長田区にある総合病院に搬送されたのは、大地震の発生から6年がたって丹華が中学2年生になった時です。

投薬と応急措置でどうにか持ち直しましたが、ゼロ先生は先天的な心臓疾患を抱えているために早く開胸手術を受ける必要があります。

手術ができる医師は神戸市内には見当たらず、東京の大学病院に勤務しているゼロ先生の息子・佐元良裕也に頼むしかありません。

土曜日の朝早くに丹華は逸騎と東京行きの新幹線に乗って、都心にある裕也先生の勤務先を訪問します。

佐元良親子の仲を決定的に引き裂いたのは、ゼロ先生の妻であり裕也先生にとっては母親でもある昭江を巡る1件です。

震災の起こったあの日の朝、ゼロ先生と昭江は自宅で就寝中でしたが裕也先生は神戸市立三宮病院で当直についていました。

ゼロ先生が倒れた自宅の中に昭江を残して他の被災者の救出にあたっていたことを、裕也先生は今でも許していません。

丹華と逸騎が涙を流しながらお願いしたのにも関わらず、裕也先生は自分の父親の手術を断り面談室を逃げるように出ていきます。

【転】翔ぶ少女 のあらすじ③

父と子をつなぐ翼

駅近くのビジネスホテルに泊まっていた丹華は、カーテンの隙間から街の明かりがこぼれていたために真夜中に目を覚ましました。

卵の殻が少しずつ割れていくような密やかな音がすると、着ていたパジャマを突き破って羽が背中から出てきます。

裸足で非常口から外に出て夜空を見上げているといつの間にか丹華の体は空中に浮いていて、向かう先は裕也先生の病院です。

5階の窓から羽を生やしたまま部屋の中に入ってきた丹華を見て、驚きの余り裕也先生は声を出せません。

今すぐにでも裕也先生を連れて神戸まで飛んでいくと宣言した途端に、丹華の目の前は真っ暗になりました。

気がつくと病院のベッドの上に寝かされていて、ホテルの部屋から消えた丹華を追ってきた逸騎が側に立っています。

裕也先生は丹華がパジャマのまま裸足で歩いてきたと誤魔化してくれたようで、羽のことは誰にもばれていません。

「僕も君たちと父のもとへ飛んでいこう」という、裕也先生の温かな声が丹華の耳に聞こえてきました。

【結】翔ぶ少女 のあらすじ④

地に足が着いた丹華

がれきの山と化していた長田の街も、10年の歳月が過ぎる頃には見違えるように綺麗になっていました。

裕也先生に心臓を手術してもらいすっかり良くなったゼロ先生は、街の復興カウンセラーとして神戸のあちこちで活躍しています。

逸騎は高校卒業後に調理の専門学校へ進学して、ゆくゆくは神戸の有名なフレンチレストランで見習いシェフをするつもりです。

中学生になった燦空はファッションに夢中なようで、多くの仲間に囲まれながら学園生活を送っていました。

地元の高校に通っている丹華は3年生になったばかりで、神戸大学の医学部への合格を目標にして毎日勉強に励んでいます。

3人きょうだいが生まれ育った場所には喫茶店「もくれん」ができて、放課後に立ち寄ってコーヒーを飲みながら参考書と問題集を広げるのが丹華の日課です。

4年前のあの日のあの夜に裕也先生のもとへ飛んでいって以来、背中に羽は生えてきません。

丹華は愛する家族や友だちや大好きな人たちと、この街で地に足を着けて生きていくことを決意するのでした。

翔ぶ少女 を読んだ読書感想

ギリシャ神話に登場する勝利の女神・ニケを思わせるような主人公、阿藤丹華の成長していく姿が魅力的でした。

本格的なムニエルから長田の名物・そばめしまで料理のレパートリーが豊富な兄・逸騎と、ちょっぴりおませな妹・燦空もかわいらしかったです。

血縁のつながりがない3人を我が子のように愛情を持って育て上げていく、ゼロ先生の人間性には胸を打たれます。

被災地で復興に励む人たちをリアルなタッチで描きつつ、後半にはファンタジーも用意されているので驚かされるでしょう。

阪神淡路大震災から25年が過ぎた今だからこそ、若い世代の皆さんに手に取ってほしい1冊です。

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