「花々」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|原田マハ

原田マハ「花々」

【ネタバレ有り】花々 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:原田マハ 2009年3月に(株)宝島社から出版

花々の主要登場人物

難波純子(なんばじゅんこ)
島を旅する29歳。旅をしながらも安住の地を見つけるべく懸命に生きる主人公。

山内成子(やまうちしげこ)
都市開発企業プロジェクトリーダー。仕事一筋のサバサバした性格の女性。

奈津子(なつこ)
純子のアルバイト先の先輩。永遠の旅人。

知花子(ちかこ)
成子が加計呂麻島で出会ったカフェのオーナー。自分の意見をハッキリと正直に言う女性。

花々 の簡単なあらすじ

母も仕事も捨て故郷から逃げ、沖縄の島を旅する純子。その純子とは逆に、沖縄の島を出て東京でバリバリと働くキャリアウーマンの成子。生まれも育ちも全く違う二人が、ひょんなことから出会い、ある目的のために奄美の島を旅することになります。二人が旅先で出会う様々な人との交流のなかで、自分自身の悩みや葛藤と共に成長してく物語。

花々 の起承転結

【起】花々 のあらすじ①

与那喜島・鳳仙花

沖縄の与那喜島の村営アパートに住む純子は、田中庄司が経営するダイビングショップに勤めて半年あまり。

島には都会に飽き飽きしフラリとやってきたまま、そのまま居ついてしまう三十歳手前の女性が大勢います。

その一人に分類されてしまうのが嫌な純子でしたが、逃げるように沖縄にやってきて居ついてしまったのには変わりありません。

ここでずっと暮らしていくのかなと考え始めたころ、アルバイト先の先輩である奈津子から庄司がダイビングショップを閉めて島を出ていくらしいという話を聞かされます。

ダイビングショップのある浜に巨大リゾート開発の話が持ち上がり、庄司は立ち退きに同意したのだといいます。

その話を聞いた夜、純子は自分が故郷を捨てたことを考えていました。

女手一つで兄と自分を育ててくれた母親が認知症になり、看護師の仕事と母の介護に疲れ果てるなか、母から「あんただれ?出ていきなさい」と言われてしまったこと。

母も兄も仕事も捨てて沖縄に逃げてきてしまった事を思い出していました。

そんな事を考えていた時、奈津子から「明日、島を出ます」というメールを受け取りました。

純子はアパートの裏に咲いていた鳳仙花を持って奈津子の見送りに行きます。

奈津子は「島のものを持ち出してはいけない。

持ち出した人に災いが起こるから」と言い、鳳仙花を受け取らずに島を去っていきました。

そんな奈津子を見送った帰り、純子は山内成子という女性から頼まれて彼女を車に乗せることになります。

送ってくれたお礼にと成子は、奈津子が歌っていた島唄の意味を純子に教えます。

それは「ホウセンカの花で指先を染めるように、親の言葉を胸に染めなさい」という意味でした。

【承】花々 のあらすじ②

与路島・サガリバナ

純子がひょんなことから知り合い意気投合した成子は、与那喜島を出て東京の大手都市開発企業で働くキャリアウーマンでした。

仕事一筋で夫に愛想をつかされた結果、現在はバツイチ。

幼馴染の元カレで大手リゾート会社に勤める照屋俊一から、与那喜島のリゾート開発を進めているという話を聞き複雑な気持ちになります。

郷里は永遠に変わらない場所で、自分が何かをもたらそうと思ったことがなかったからです。

でも自分なら、もっと違う形で郷里をプロデュースできるとも考えました。

そこで成子は会社で企画を通し、純子を島の現地調査をするアルバイトとして雇います。

純子が向かったのは奄美大島の離島・与路島で、親子が営む民宿に泊まることになりました。

息子は漁師をしながら民宿を手伝う開大。

母親は島で唯一のノロでした。

ノロとは、はるか昔には琉球王国の祭祀も司っていたという奄美諸島の伝説の巫女です。

親子が作った夕食を3人で食べた後、純子は開大からサガリバナが咲いているから見に行こうと誘われます。

以前、成子から与路島にはサガリバナという木があると聞いていましたが、盛りはもう過ぎているので咲いていないと思っていた純子。

しかし、夕食のとき開大の母が、純子の頭の上に、一つだけサガリバナの花を見たのだといいます。

半信半疑で開大と一緒に宿を出た純子は、夜の闇の中に浮かぶ白いサガリバナを見つけます。

そして開大の口から驚くことが語られます。

「故郷に残してきた大切な人のところへ帰れ。

この花が落ちるころ、その人の命が尽きる」と。

【転】花々 のあらすじ③

加計呂麻島・ハンカチの花

成子は加計呂麻島でカフェのオーナーの知花子と知り合います。

知花子は一人娘を亡くした後、夫と離婚して淡々とした日々を過ごしていましたが、50歳を過ぎたころ勤務先の早期退職に応募しマンションも処分して加計呂麻島にやって来たというのです。

いつまでもくよくよしていたら娘が天国に行けない。

自分の好きなように生きようと思ってカフェを始めたという知花子の話に感動する成子。

成子も自分がバツイチであること、同級生が与那喜島の開発を手掛けた事に触発され「女性のための島の宿」を企画しようとしていることなどを、矢継ぎ早に話していきます。

一人旅の女性が、ふらりと泊まれて何かを吸収して帰れるような美しくて知的な宿。

それが成子なりの故郷をプロデユースする方法でした。

しかし黙って聞いてくれた知花子から「やめたほうがいい」と言われてしまいます。

続けて「あなたは、その同級生の向こうを張りたいだけ。

彼に故郷の島を乗っ取られたみたいで悔しいんじゃないの」と成子の本心を見抜かれてしまいました。

知花子はそんな成子に、加計呂麻島を選んだ理由を教えます。

知花子は友達に加計呂麻島でのお見合いパーティーに連れてこられ、そこで白いハンカチで汗をぬぐう男性に興味を持ちました。

その男性は、浜木綿一といい島でハンカチに似た花の栽培をしているのだといいます。

東京に戻った知花子のもとに木綿一からハンカチの白い葉が送られてきて、そこから二人は折り目正しい文通を始めます。

文通が一年ほど続いた後、弁護士から知花子に封書が届きました。

その手紙は木綿一が亡くなり、加計呂麻島の土地を知花子に相続させるという内容でした。

木綿一はお見合いに参加した時は既に余命一年で、土地を相続してくれる相手を探していたというのです。

その話を聞いたあと、カフェの裏庭一面に咲くハンカチの花畑を見せてもらった成子は、その幻のような美しさに言葉を失ったのでした。

【結】花々 のあらすじ④

旅人廃業

純子はノロである開大の母のお告げに従い、与路島を出て岡山に向かう途中で母が亡くなったことを知ります。

認知症だった母が遺したノートには拙い字で、何度も「じゅんこあいたい」という言葉がつづられていました。

この母のノートを読んで、純子はもうどこへも行かない、母と暮らした岡山を安住の地にするのだと決めました。

旅人を続けられなくなったというメールを受け取った成子は、「純子ちゃん、いっぱい泣いてください」とハンカチの花を入れた長い手紙を送ります。

純子が暮らす岡山の問屋町は、気持ちのいい場所を求める人々が集まり自発的に発展させた「地域密着セルフ開発地区」です。

与那喜島は大型リゾート開発という荒療治しかなかったけれど、自分の故郷の町がこんな形で息を吹き返したのを見て純子は素直に嬉しいと感じていました。

そんな町の花屋で純子は働いています。

面接で南の島で見た花々の話をしたところ、オーナーに気に入られすぐに働きはじめることになったのです。

今の純子の楽しみは、庄司・奈津子・成子たちとの手紙のやり取りでした。

その日もお気に入りのカフェで成子からの手紙を読んでいると「出張で広島に行くついでに、お店に寄ります」と書いてあり、なんと目の前に成子が現れたのです。

この時「女性のための島の宿」の企画を白紙に戻したと聞いた純子は「いい企画だったのに」と残念がり、成子は「それで十分よ。

ありがとう」と言ってそのまま東京に戻っていきました。

純子はそんな成子を見て、「冬を超えた人の強さがある。

だから凛として咲いているのだ」と感じます。

店に戻ると、成子が置いていった鉢植えがありました。

お互い自分の居場所がみつかったら純子に見せたいと、成子が言っていたハンカチの花の鉢植えでした。

花々 を読んだ読書感想

この作品を読んでみて感じたことは「ゆったりとした空気感」でした。

それは表紙の絵や、ゆとりのある行間、登場人物たちの距離感を持った人との接し方にも表れていたと思います。

やはり、その空気感を味わいに南の島に行きたくなる小説です。

タイトルにあるように、この小説では色々な花のストーリーが展開されていくのですが、その中で一番心に残ったのはハンカチの花のストーリーです。

知花子がハンカチの花畑に亡くなった娘が居るような気がして涙が止まらなくなってしまった時、木綿一の「泣きたいだけ泣けばいい。

ハンカチはいっぱいあるから」という優しさがズシンと胸に響く素敵なストーリーでした。

そして、純子も成子も自分の居場所を見つけたと感じられるラストが効いている作品だと思いました。

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