「おいしい水」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|原田マハ

「おいしい水」浜田マハ

著者:原田マハ 2008年11月に岩波書店から出版

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おいしい水の主要登場人物

安西(あんざい)
ヒロイン。神戸の有名大学に通う19歳。学校には友だちが少なく大人の世界に憧れている。

べべ(べべ)
カメラマンを目指す若者。

ナツコ(なつこ)
輸入雑貨店の店主。元はデザイン会社の社員。

フクダ(ふくだ)
べべのパトロン。 神戸に複数の不動産と会社を持つ。

おいしい水 の簡単なあらすじ

神戸の大学に通っている安西は、前々から気になっていたべべという青年にアルバイト先で買った写真集をプレゼントします。

べべはフクダという裏社会との関わりを持つ男から大金を受け取っていて、逆らえば本人だけでなく周りの人たちも何をされるか分かりません。

安西への思いを1枚の写真に託して、べべはどこかへと旅立っていくのでした。

おいしい水 の起承転結

【起】おいしい水 のあらすじ①

孤独な少女が迷い込んだ大人のお店

岡山県で平凡なサラリーマンの父親と専業主婦の母親との間に生まれた安西は、高校卒業後に神戸の大学へと進学しました。

関西でも有数の名門校で通っているのは育ちの良いお嬢さまばかりで、高級ブティックやお洒落なカフェに夢中な同級生たちとは打ち解けられません。

2年生になってひとりで元町北の裏通りを散歩していた時に、安西は輸入品のポストカードや画集などを販売している「スチール・アンド・モーション」というお店を発見します。

会社に勤務していた時の貯金でこの店をオープンしたナツコは、センスが良くて聡明で安西にとっては憧れの女性です。

ナツコに誘われるままにスチール・アンド・モーションで働き始めた安西は、毎月末にもらったアルバイト料のほとんどを高級なハードカバーの写真集に費やしていました。

いつものようにバイト代でロベール・ドアノーの写真集を購入した安西は、元町の商店街にあるコーヒーショップ「エビアン」でひと休みします。

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【承】おいしい水 のあらすじ②

神戸をふたりで気ままにブラリ散歩

エビアンのいちばん奥のテーブルには店のママから「べべ」と呼ばれている青年が、小さなスライド写真を並べて眺めていました。

前から彼のことが気になっていた安西は、思い切ってべべに声をかけてドアノーの写真集を手渡します。

べべがスチール・アンド・モーションに遊びに来てくれて、3冊の写真集を買っていったのは次の日の夕方のことです。

センター街の角に店を構える靴屋の前で、海岸通りを見下ろす古い銀行の前で、トアロードにたたずむパン屋の前で、異人館が建ち並んだ北野町の周辺で。

その日からふたりは神戸市内のさまざまな場所で待ち合わせをして、何をするでもなく街中を並んで歩き回りました。

安西は自分の生い立ちのことをポツリポツリと打ち明けましたが、べべは本名はおろか年齢も住んでいる場所さえ教えてくれません。

ただひとつ安西が見てしまったのは、べべがフクダという中年男性からエビアンでかなりの枚数の札束を受け取っていた場面です。

【転】おいしい水 のあらすじ③

危険なビルオーナーと囚われのカメラマン

安西がひとりで店番をしているとナツコと一緒にフクダが入ってきて、店内を横柄な態度で見渡したかと思うとすぐに出で行ってしまいました。

スチール・アンド・モーションがテナントとして入っている雑居ビルのオーナーを務めていること、この辺り一帯であらゆる商売に手を出している有力者であること、反社会的勢力とのつながりもあること。

この店も経営がうまくいっていないために、来年の2月には閉店しなければなりません。

エビアンに駆け込んだ安西は、指定席に座っていたべべにフクダとわかれるようにお願いしてみます。

何かに縛られる必要はない、自由になって好きなように好きな写真を撮ればいい。

涙を流しながら訴える安西にカメラを向けて、べべは何度もシャッターを切りました。

かつてべべがお付き合いをしていた女性はフクダによって殺害されてしまい、すでにこの世にはいません。

2度と愛する人を失いたくないというべべは、この日を最後にして安西の前から姿を消してしまいました。

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【結】おいしい水 のあらすじ④

涙がにじんだラストショット

大学の新学期が始まる頃、学生寮にいた安西にナツコからの久しぶりの電話がかかってきました。

スチール・アンド・モーションが店じまいをしてビルの取り壊しが開始された日に、ナツコは通りの前に置いてあった黒いカメラケースを拾ったとのことです。

連絡を受けた安西は寮を飛び出して、待ち合わせ場所のエビアンへと駆け付けます。

店内は数多くのお客さんでにぎわっていましたが、以前にべべが座っていた奥のテーブルだけには誰も近づきません。

大阪のデザイン会社に再就職が決まったナツコは、少しふっくらとして思ったよりも元気そうです。

ナツコにケースを渡された安西は震える指で銀の留め金に手をかけて、恐る恐るふたを開けて中を除き込みます。

海の向こうに広がる港町・神戸の美しい風景を撮った何枚もの写真の中から出てきたのは、あの日の安西の泣き顔を捉えたショットです。

間もなく19歳から20歳になる安西は、テーブルの上に落ちた1滴のしょっぱい水に気がつくのでした。

おいしい水 を読んだ読書感想

神戸のお嬢様学校に入学しながらも、いまいち同級生たちの中に溶け込むことができない主人公・安西の物足りなさが伝わってきます。

そんな彼女が偶然にも元町の路地裏で見つけた「スチール・アンド・モーション」は、まさにまだ見ぬ不思議な世界への入り口です。

ロベール・ドアノーやロバート・フランクを始めとする海岸の写真家の作品や、おしゃれな輸入雑貨には魅力があります。

大人の女性・ナツコさんに憧れつつ、べべへのほのかな恋心にときめいてしまう様子もかわいらしかったです。

残酷な現実と切ないわかれを乗りこえて、ちょっぴり成長した安西にエールを送りたくなりました。

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