「お気に入りの孤独」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|田辺聖子

「お気に入りの孤独」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|田辺聖子

【ネタバレ有り】お気に入りの孤独 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:田辺聖子 1994年1月に集英社文庫から出版

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お気に入りの孤独の主要登場人物

風里(ふうり)
三十一歳のファッションデザイナー。東神戸に住む金持ちの御曹司・涼から熱烈に迫られ、結婚をする。現在結婚三年目で、金銭的余裕がありながら、仕事を続けている。

水野涼(みずの りょう)
ヨーロッパ家具を扱う会社の御曹司。お坊ちゃん育ちがにじみ出ており、素直で親しみやすい雰囲気。大のマザコンで結婚してからも、実家に入り浸り、口を開けば『オカーチャン』を連呼する。風里と結婚する前に付き合っていた女と切れておらず、結婚後も関係を続けている。

中園新一(なかぞの しんいち)
京都在住の研究所勤めの年下男性。知人の写真展でたまたま出会い親しくなる。涼の女性関係に悩む風里は、中園の柔らかな口調と独特な雰囲気に癒されるようになる。

マダーム(まだーむ)
涼の母親で風里の義母。才色兼備の派手な美人。中年ながらみずみずしく、自らの美貌と財力に自信をみなぎらせている。涼のやることなすことすべてに口を挟み、結婚後も関係を続けているマリ子を黙認し、面倒もみている。

荒井マリ子(あらい まりこ)
風里の前に涼が結婚を前提に付き合っていた女性。マダームが結婚に反対し、一旦別れるが復縁。風里と結婚した後も関係を続けいている。

松下晴衣(まつした はるえ)
風里と同い年の友人で新聞記者。独身で不倫している。相手は風里も見知っている北丘。

お気に入りの孤独 の簡単なあらすじ

ファッションデザイナーをしている風里は、アンティーク家具を扱う会社の御曹司・水野涼から熱烈に迫られ、結婚を承諾。現在結婚三年目で、玉の輿に乗り、セレブな生活を満喫しているかのように思われがちな風里ですが、実情はだいぶ違っています。旦那の涼はボンボン育ちで素直ところが魅力ですが、いかんせんマザコンが過ぎて、口を開けば『オカーチャン』。最初はそれも可愛いと思っていた風里でしたが、だんだんと義母の存在が大きくなっていきます。それに加えて、涼の結婚前から続いている女の陰もちらつくようになり……。

お気に入りの孤独 の起承転結

【起】お気に入りの孤独 のあらすじ①

義母

ファッションデザイナーをしている古賀風里は、仕事でアンティーク家具を扱う会社の御曹司・水野涼と出会い、付き合う仲に。

涼はボンボン育ちがにじみ出ているような男で、仕事柄気難しい男たちに囲まれている風里は、涼のいかにも素直そうなところが気に入り、プロポーズを承諾します。

結婚後も仕事を続けて良いというのも結婚の決め手でした。

涼の実家は絵にかいたような金持ちで、庶民の風里には馴染まない部分は多々ありましたが、涼から紹介された義母は中年には見えないくらい瑞々しく上品な美人で、風里の仕事についても、近い将来の子供についても、全面的に協力すると応援してくれました。

風里の母親はすでに他界し、父親は再婚しているので実家は疎遠になっており、優しく上品な義母とこれから女性同士の付き合いをしていくのだろうと考えていた風里でしたが、結婚三年目を迎える今、当初は自分がいかにおめでたい考えを持っていたか思い至るようになりました。

義母(以下、マダーム)は、最愛の息子を嫁に独占されるのを嫌い、仕事を持っている、しいては結婚後も仕事を続けることを望んでいる女を配したかったのだと風里は考えます。

涼と仕事を天秤にかけて、どちらを選択するか悩むような女なら、可愛い息子をそばに置いておくことができるから。

しかし風里は、マダームの思惑を理解しても、マダームを嫌ったり避けることはしません。

そんなこともあるか、くらいに留めて付き合いを続けています。

涼は、マダームが望んだとおり、結婚してからも実家に入り浸り、マダームの料理を食べ、おしゃべりに興じています。

極度のマザコンなのです。

仕事で忙しい風里は、そんな旦那も可愛いと思いながら、結婚生活をそれはそれで楽しんでいます。

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【承】お気に入りの孤独 のあらすじ②

火種

ある日、風里は昔の友人から誘われ、一人、写真展に出向きます。

そこで、京都弁を話す年下男性と知り合います。

中園新一と名乗る彼は、独特な雰囲気の持ち主で、鳶色の目玉が美しい青年です。

風里は中園とお茶を楽しみ、連絡先を交換して別れます。

涼は『オカーチャン』が口癖ではあるものの、妻の風里にも口豆に愛情を示し、素直で単純な男なので、風里はそんなところが愛しく、良きパートナーとしてやってきました。

マダームとも、涼を差し出すことで波風立たせることなく関係を続けてきたのですが、マダーム主催の婦人会で風里に近づいてきた北丘という男から、涼の女性関係について聞かされます。

風里と結婚する前に、結婚前提として付き合っていた女性のことです。

その女性は兄弟が多く、身内の問題を持ち込まれることを嫌ったマダームが、二人の結婚に反対し別れさせたというのです。

その点、風里は実家がなく都合が良く、その上仕事に情熱を注ぐタイプだったので、尚良かったというわけです。

そのことについては、風里の予想内のことだったのですが、その別れた女性が水野家に乗り込んできたという話は初耳で、内心驚愕します。

マダームが尻ぬぐいし、涼とその女性の関係がいまだに続いているというのは、風里には信じられない話で、素直がとりえで、隠し事など到底できないと思っていた涼が、そんな爆弾を隠し持っていたことに風里はただただ驚くばかりです。

【転】お気に入りの孤独 のあらすじ③

妻という立場

北丘から涼の話を聞かされた風里でしたが、出張から帰宅した涼をいつものようにあたたかく出迎えます。

涼は数日ぶりの風里との対面が嬉しいらしく上機嫌です。

和やかな雰囲気で食事をとり、何も知らない涼は、疲れが出たのか先に寝室で休みを取ります。

しかし風里は、気が休まらず、一人バーボン片手に物思いにふけります。

そして、安心しきった顔で寝ている涼の頬を叩き、『御影の家を訪ねてきた女の人の名前なんて言ったっけ』と問います。

寝ぼけている涼は反応しません。

頭に血が上り、あの女から電話かかってきてるよと怒鳴ると、『マリ子から?』と涼が答えます。

具体的に名前を知ると、もう止まりません。

根ほり葉ほり質問をぶつける風里に、涼は半泣きです。

途中、涼の体から蕁麻疹が出て、かゆみと風里の鋭い探りに泣きだしてしまいます。

風里に全身をさすってもらいながら、マリ子について洗いざらい話した涼は再び眠りにつきましたが、後日風里はマダームから、あまり涼をいじめるなとやんわり注意を受けます。

涼が泣きついたようです。

正妻という立場は絶対だし、優雅な生活を送れることに感謝すべきだとマダームは説き伏せますが、風里は納得いきません。

もやもやが募る中、友人の晴衣から京都で遊ぼうと誘いがきます。

新聞記者をしている晴衣は多忙の身ながら、合間を縫って不倫相手とデートにも勤しんでいるらしく、その夜は不倫相手からすっぽかされたようです。

京都と聞いて、風里は前に写真展で顔見知りになった中園を思い出し、連絡をとってみます。

風里からの誘いに喜んで応じた中園は、風里と晴衣を夜の京都に案内しようとしますが、晴衣の相手の都合がつき、風里と中園二人で京都に繰り出すことになります。

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【結】お気に入りの孤独 のあらすじ④

恋の終わり

中園と過ごした夜の京都は、涼の女性関係やマダームの言葉を忘れさせるほど、風里には心弾む楽しい時間でした。

しかし夢のひとときはあっという間に過ぎてしまいます。

日常に戻ると、マリ子の存在が次第に風里を苦しめていきます。

涼が仕事で留守の間に風里に贈り物を寄越しますが、それは荒井マリ子名義の小包でした。

涼の丸っこい文字で書かれたそれを風里は呆然と見つめます。

ちょくちょく中園と落ち合うようになった風里。

彼とのお喋りは息抜きになっていました。

そしてクリスマスの夜、食事に誘われます。

風里とずーと二人きりでいたいと言う中園に、風里は、中園は自分が独身だと思い込んでいることに気が付きます。

結婚していることを打ち明けることができず、かと言って手放すこともできずにいた風里ですが、夜のバーで飲み、門限を聞かれた風里は、門限はないが家庭があると答えます。

それまでの柔らかかった中園の雰囲気は一変し、風里は既婚者ということを黙っていたことを詫びますが、もう中園とは会えないだろうという思いが悲しさになりこみ上げてきます。

帰路に着くと、出張の為涼は不在で、一人ベランダでブランデーを飲んで寂しさを紛らわせる風里は、背の高い女性に腕を貸された涼がタクシーから降りくるところを目撃します。

しばらくして女性は一人タクシーに乗って消えていき、涼が部屋に入ってきました。

また蕁麻疹が出ているようです。

先ほどの女性がマリ子だと勘づいた風里は、今夜マリ子の家に泊まる予定だった涼に『マリ子に看病してもらえばいい』と意地悪を言いますが、涼はかゆみに悶えて、全身をさすってくれと懇願します。

薄情なマリ子は変な病気だったら嫌だと言って、涼を送り届けたらしいのです。

マリ子と痴話げんかをして、蕁麻疹が出たと騒ぐ涼を風里は冷めた目で見降ろします。

涼はマリ子と別れる気はないらしく、かといって風里と別れる気もなく、なにかあると『オカーチャン』に泣きつき、始末をしてもらっています。

風里はというと、あの後中園に電話してみましたが、冷たく拒絶されてしまいました。

年が明け、マダーム達と別荘で過ごす毎年恒例の正月イベントがやって来ました。

出掛ける間際にマリ子から無言電話があり、涼はいそいそと掛け直して、マリ子の機嫌をとっていたことを風里は知っています。

いよいよ我慢の限界で、涼に別れを切り出した風里は、別荘でもマダームから注意を受けます。

夫婦の問題だと返す風里に、『これは家族の問題で、あんな気の良い涼ちゃんの舵も取れないなんて……』とマダームから叱責されます。

しかし風里にはもう熱意もなく、すべてが遅かったと気が付きます。

結婚当初、疑いが萌したその時に、涼ではなくマダームに詰め寄るべきだったと思うのです。

涼は不機嫌な風里を避け、ますます実家に入り浸り別居状態が続きました。

風里は、ライバルはマリ子ではなく、マダームだったと感じるようになっています。

風里と仲直りする為、久しぶりに二人が済む家に戻ってきた涼はマダームが作った手料理をタッパーに詰め、帰宅します。

そんな涼に、風里は東京行きを告げ、離婚を改めて切り出します。

風里の言葉に『オカーチャンに相談せんと……』と混乱し慌てふためく涼に、風里は『もう、蕁麻疹出しちゃだめよ』と優しい言葉をかけるのでした。

お気に入りの孤独 を読んだ読書感想

結婚の難しさを描いた本作。

玉の輿に乗り、夫に愛されながら、優雅な生活を送る風里に降りかかる、息子にべったりな義母と他の女性の陰。

癒してくれる年下の男の子との出会い。

マザコンで、女性にだらしない夫に腹立ちながら、夫婦で乗り越えるべき壁に立ち塞がる義母が手強い手強い。

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