「ツリーハウス」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|角田光代

「ツリーハウス」

【ネタバレ有り】ツリーハウス のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:角田光代 2010年10月に文芸春秋から出版

ツリーハウスの主要登場人物

藤代 良嗣(ふじしろ よしつぐ)
本作の主人公。自分の家族は、何か他の家族と違うと感じ、それが何かを探しに行きます。

藤代 ヤエ
良嗣の祖母。良嗣とヤエの息子、太二郎と一緒に若いころにいた中国へ旅行に出かけます。

藤代 慎之輔(ふじしろ しんのすけ)
良嗣の父。自分の家が嫌いで、家を出るが、いろいろ経験し、家を継ぐことを決心します。

ツリーハウス の簡単なあらすじ

藤代良嗣は、中学生になり、自分の家は、何か他家とは違うと感じるようになります。高校2年になり、将来のことを考えなければならなくなったとき、家族みんながそれぞれ好きなことをやっていて、無干渉無関心。とても楽なのだが、何か根っこがないような心もとなさを感じるようになります。祖父の死によって、祖父母は昔、中国の満州にいたことを知り、祖母と一緒に中国へ行きます。そして、祖父母は、中国から何も持たず、逃げるようにして日本に帰ってきたことを知ります。家族を作るものは、根ではなく、希望なのだと気づく。

ツリーハウス の起承転結

【起】ツリーハウス のあらすじ①

祖父の死

藤代家は翡翠飯店という中華料理店を営んでいます。

良嗣は、祖父、祖母、両親、父の弟、太二郎と一緒に生活をしています。

良嗣には、兄の基樹、姉の早苗がいます。

そして、父には妹の今日子がいます。

お店が定休日で誰も家にいない時に、良嗣が祖父が死んでいることを発見します。

家族が集まる中、良嗣は、自分の家族について考え始めます。

家族がそろって食事をすることはなく、お互いの干渉もせず、一見ばらばらのような家族で、無関心無干渉なのは楽だけれども、基盤がないような心もとなさを感じます。

お葬式のあと、祖母が一人、部屋に座っていて、良嗣が声をかけると、「帰りたいよう」と言います。

それを聞いて、良嗣は、祖父母のルーツについて興味を持ち始めます。

良嗣は、一度は就職をしたが、違和感を感じ、将来を真剣に考える時間を持ちたいという理由で、仕事を辞めます。

自分だけでなく、無職無気力人間の巣窟となりつつある藤代家のこと、自分たちのルーツを知るため、祖父と祖母が出会った異国の地、中国へ、祖母と叔父と一緒に行くことにします。

【承】ツリーハウス のあらすじ②

祖父泰造と祖母ヤエの満州時代

泰造は、中学を卒業後、満州移民の募集を知り、満州に渡ります。

一方、ヤエは小学校を卒業後、数人で東京に上京し、バーやキャバレーで勤めます。

時々来る客から満州の話を聞き、ヤエも満州に渡ることになります。

満州のバーで働いているときに泰造と知り合います。

泰造は、移民として満州に渡りましたが、厳しい環境に耐えられず、逃げてきているのでした。

そんな中、日本の戦況が悪化し、泰造がいつ兵隊にとられるかわからない状況になりますが、泰造は銃を持つことも、死ぬことも嫌だったので、ヤエと一緒に逃げます。

料理店を営む中国人の夫婦に助けてもらい、生き延びることができます。

そして、終戦を迎え、日本への引き揚げが始まります。

日本へ帰ることは、今までとてもよくしてくれた中国人に対して、薄情な行為なのではないかと悩みますが、絶対戻ってきますという言葉を残し、日本に逃げ帰ります。

帰国後、苦しい生活が続くが、中国で覚えた餃子やワンタンを売ることで生活をたて、お店を持つまでになります。

【転】ツリーハウス のあらすじ③

それぞれの人生

泰造の末息子、基三郎は、学生運動にかかわります。

逮捕をされることがあったり、北朝鮮に行きたい、世界を変えたいと言うほど、深くかかわっていきますが、ある日、「ごめんね。」

という遺書を残し、自殺します。

泰造の長男、慎之輔は、中華料理店を営む父母が昔の知り合いを家に簡単に泊めるのを嫌っています。

漫画に夢中になり、作家をめざし、家を出ます。

なかなかうまくいかず、逃げてばかりの日々を送りますが、弟の基三郎の死をきっかけに、逃げてはいけないと思い、店の後を継ぐことを決意します。

二年前に出会った女子大生、文江と再会します。

無学の自分とインテリの女子大生と交際できるわけがないと思っていましたが、恋愛関係になり、子供ができ、結婚することになります。

次男の太二郎は、学校の教師として仕事をしていますが、ある日、女子生徒を家に連れてきます。

恋愛関係とはいうものの、先生と生徒の関係で公にはできません。

そして、彼女が妊娠していることがわかると、二人で心中をしようとします。

未遂に終わりますが、太二郎は学校をくびになってしまいます。

泰造の娘、今日子は、ある日、一人の男性を連れてきて、結婚宣言をします。

【結】ツリーハウス のあらすじ④

時代の流れ

慎之輔と文江には、3人の子供ができます。

基樹、早苗、良嗣。

3人とも自由気ままな生き方をしています。

太二郎は、学校をくびになったあと、しばらくして、塾講師として働き始めますが、やがて、カルト宗教にはまっていきます。

でも、それは間違っていることに気がつき、抜け出ます。

今日子は、子供がほしいのに子供ができず、悩んでいます。

そして、夫には女がいると確信をしています。

悩んだ末、離婚し、ゴールデン街にお店を借りて、飲み屋を一人ではじめます。

中国に行った祖母は、昔の面影を探しに、とにかくあちこち歩き回ります。

そして、昔お世話になった食堂の家族を探し始めます。

探し歩いてもみつからなかったのですが、心当たりの場所にある今の食堂の店主に、昔のお礼と謝罪をします。

それを聞いて、良嗣は、祖父母の過去を知ります。

帰国後しばらくして、祖母は眠るように息を引き取ります。

良嗣は、自分たちの家族には根っこがないと思っていたが、祖父母は何も持たず出会い、何も持たずに逃げ帰ってきたのは、希望があったからだと気づく。

ツリーハウス を読んだ読書感想

現代の家族を見ると、どちらかと言えば、過干渉の家が多いかと思います。

この藤代家は、誰が何をしようと賛成も反対もしない。

そのままを受け入れるというとても自立した家族を描いています。

でもとてもあぶなかっしいことばかりする家族ばかりで、地道という言葉からは、かなりかけ離れています。

でも、いろいろ経験をすることで学んでいくというのは、普遍的なことであり、自分で気づくということが大事であると思いました。

3世代の話なので、時代背景も、戦争、終戦、学生運動、浅間山荘事件、オウム事件等が出てきます。

そのときにおこった出来事と絡み合わせて、藤代家の人がそれに翻弄されていく、のみこまれていく姿を書いているところが、面白かったです。

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