「対岸の彼女」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|角田光代

対岸の彼女(角田光代)

【ネタバレ有り】対岸の彼女 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:角田光代 2004年11月に文藝春秋から出版

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対岸の彼女の主要登場人物

田村小夜子(田村小夜子)
本作のW主人公の一人。幼い子をもつ専業主婦。ママ友との付き合いに悩んでいる。もう一人の主人公・葵の下で掃除代行のパートとして働き始める。

楢橋葵(ならはしあおい)
本作のW主人公の一人。プラチナプラネットという旅行関連会社の女社長を務めている。中学時代にいじめにあい、片田舎に家族で引っ越す。進学した高校で魚子と出会う。

野口魚子(のぐちななこ)
葵の高校時代の親友。葵を軸にしたパートでは魚子との思い出が綴られていく。家が貧しく、いじめのターゲットになってしまう。

田村修二(たらむしゅうじ)
小夜子の夫。妻がパートに働きに出るのを快く思っていない。子供は可愛がるが、家事・育児の協力はない。

田村あかり(たむらあかり)
小夜子の3歳になる一人娘

対岸の彼女 の簡単なあらすじ

35歳の小夜子は3歳になる娘を持つ専業主婦です。昔から人付き合いが苦手で、母親になった今でもママ友ができず公園ジプシーをして過ごす毎日を送っていました。そんな現状を打破すべく、プラチナプラネットという旅行会社の面接へ出向きます。そこで出会ったのが、同い年の女社長の葵。家庭を持たず、仕事に打ち込んできた葵の、豪快で明るくさっぱりとした性格に惹かれる小夜子。上司・部下、既婚・独身の立場を越えて距離を縮める2人でしたが、葵には、今の姿からは想像もつかない過去があり……。

対岸の彼女 の起承転結

【起】対岸の彼女 のあらすじ①

出会い

 35歳の小夜子は3歳になる娘を持つ専業主婦です。

昔から人付き合いが苦手で、母親になった今でもママ友ができず公園ジプシーをして過ごす毎日を送っていました。

そんな現状を打破すべく、プラチナプラネットという旅行会社の面接へ出向きます。

そこで出会ったのが、同い年の女社長の葵。

家庭を持たず、仕事に打ち込んできた葵の、豪快で明るくさっぱりとした性格に惹かれる小夜子はパートとして働く決意をします。

仕事内容は家庭の掃除代行。

他人の家のお風呂場やキッチン、リビング等あらゆる部屋を掃除します。

最初は置いてきた娘が気がかりだった小夜子でしたが、次第に仕事にのめりこんでいくように。

仕事終わりの葵とのおしゃべりも楽しく、働きに出て正解だったと前向きな気持ちになります。

 対して、もう一人の主人公・葵パートは、中学時代に同級生からいじめに遭い、横浜から群馬へ家族で引っ越しをした場面から始まります。

現在の小夜子パートとの葵とはうってかわって、周囲を気にし遠慮がちな高校生の葵。

進学先の女子高ではうまくやろうと、自分を抑え、クラスに溶け込むことに必死です。

その中に、クラスのどのグループにも所属せず、自由気ままに振舞う野口魚子がいました。

帰り道、魚子に声をかけられ、半ば強引に家についてこられた葵でしたが、この日を境に2人は親しくなります。

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【承】対岸の彼女 のあらすじ②

それぞれの日々

 掃除代行業務にも慣れ、俄然やる気に満ちる小夜子でしたが、夫の修二や姑はあかりを預けてまでやる仕事ではないと不満顔です。

家庭と仕事の板挟みになりながらも、葵以外の職場スタッフとも掃除現場で顔を合わせ、会社に溶け込んでいく小夜子。

歓迎会をひらいてもらった夜に、葵の自宅で飲みなおすことになります。

同級生の2人は既婚・独身の立場の違いはあれど、共通の話題も多く盛り上がります。

楽しい時間を過ごした小夜子は、もっと葵と親しくなりたいと思うのでした。

 高校生の葵は、おとなしいグループに所属し、クラスで浮くことは回避しました。

魚子は相変わらず、グループには入らず気ままに過ごしていましたが、学校が終わると2人は河原で寄り道し、話すことが日課になっていました。

いじめられた経験から、グループに所属しておかないと、いざという時痛い目を見ると魚子を説得しますが本人はどこ吹く風で、とりあいません。

葵はそんな魚子と学校で仲良くすることは、いつか自分を不利な状況に置きかねないと、学校では親しくしないようにしていました。

【転】対岸の彼女 のあらすじ③

現実逃避

 掃除代行業務を開始しましたが、仕事依頼はなかなか来ずチラシ配りをして宣伝する日々です。

小夜子は葵に変わらず好意を持っていましたが、スタッフが葵への不満を口にする場面を度々目にするようになります。

ある休日、娘の保育園の運動会に参加していた小夜子のもとへ、葵が駆けつけます。

初めての受注がとれたことの報告でした。

抱き合って喜ぶ小夜子と葵。

葵から、お祝いと称して急遽これから娘のあかりも連れて一泊旅行をしようと提案されます。

迷った小夜子でしたが、運動会をドタキャンした夫へのあてつけのつもりでその提案にのります。

運動会終わり、宿の手配をし、海ではしゃぐ3人でしたが、小夜子の胸に一抹の不安がよぎりました。

このまま夫と話し合いもせずに逃げてしまっていいのかと。

冷静になった小夜子は葵に帰る申し出をしますが、葵は一泊くらい大丈夫だと言って引き下がりません。

葵の気分を害さないよう言葉を選んで説得する小夜子でしたが、葵はついに怒り出し、2人は決別してしまいます。

結局、葵だけ宿に泊まり、小夜子とあかりはその日のうちに帰宅することになりました。

 高校生の葵が危惧した通り、魚子はいじめのターゲットになってしまいます。

いじめを受けながらも飄々としている魚子は、学校で葵に頼ることはありませんでした。

暗い学校生活を送る2人でしたが、夏休みが始まります。

2人は夏休み中にリゾート地で住込みのアルバイトをします。

そこでの日々は鬱々とした毎日とはかけ離れたものでした。

夏休みも終わりが近づき、住込み先を後にした2人でしたが、魚子が頑なに帰りたくないと訴えます。

初めて見る魚子の姿に戸惑う葵でしたが、現実から逃げることを受け入れます。

家には帰らず、かつて住んでいた横浜で、元同級生を恐喝しながらラブホテルで泊まる生活を送ります。

しかしそんな暮らしで次第にお金はなくなり、金策に疲れた2人はビルから飛び降りるのでした。

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【結】対岸の彼女 のあらすじ④

再出発

 海で別れて以来、それまで抱いていた葵への好意をすっかりなくした小夜子は、スタッフから高校生の時に葵が友人とビルから飛び降り事件を起こしていたことを聞きます。

新聞沙汰にもなったそのニュースを小夜子は覚えていました。

レズビアン疑惑まで持ち出し、葵を罵倒するスタッフを前に、葵に対する信頼を失くした小夜子はかつてのようにかばう気持ちは起こりません。

後日、小夜子が出社するとプラチナプラネットのスタッフ全員が一斉に退職しており、小夜子もこれを機に仕事を辞めます。

しばらくは専業主婦に戻った小夜子でしたが、葵のことが気になり、以前歓迎会後にお邪魔した葵の自宅を訪ねます。

書類に囲まれ茫然とした日々を送っていた葵でしたが、小夜子の励ましを受け、一から再出発することに決めます。

 飛降り自殺をはかった葵と魚子でしたが、一命をとりとめました。

病院に搬送され、その後自宅に戻った葵でしたが、事件以来、魚子とは連絡がつかなくなっていました。

誰に聞いても教えてもらえず、魚子の行方を案じていた葵でしたが、父の計らいで魚子と再会することが叶います。

事件前と変わらず、くだらないことで笑い合う2人でしたが、対面の時間は短くあっという間に過ぎてしまいました。

葵は魚子に、かつて学校終わりの河原で話した『19歳になったらシルバーリングを贈る』というものを、シルバーよりも強いプラチナリングを贈る約束をして別れます。

対岸の彼女 を読んだ読書感想

初めて読んだのは高校生の頃だったので、主婦・小夜子に関しては近い将来自分にも起こりうる母親特有の悩みと、仕事の人間関係の煩わしさに思いを馳せるくらいでしたが、葵パートは日常の息苦しさがリアルで読んでいて苦しかったです。

学生の頃は友達みんなまだ「何者」でもなく、横一直線に並んだ状態でしたが、社会に出て歳を重ねていくにつれて、結婚して子供を産み家庭に入る子、結婚しても働き続ける子、結婚せず仕事に打ち込む子と、それぞれの生き方を選び、「何者」かになっていきます。

今はなんでも話せる友達とも、10年後には理解し合えることができなくなっているかもしれないとぼんやり考えていました。

高校生だった私も現在は小夜子と同じ小さい子供を持つ専業主婦です。

予期していた通り、学生の頃は横一列に並んでいた彼女たちはそれぞれの世界で生きています。

ただ違っていたこと、それは立場が違う彼女たちとも付き合っているということです。

昔のようにすべて共感できるわけはありませんが、小夜子と葵のように立場を越えた友情が存在することは今の私の希望になっています。

今になって思うことは『対岸の彼女』は大人女性の教科書だったなということです。

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