「我らが隣人の犯罪」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|宮部みゆき

我らが隣人の犯罪(宮部みゆき)

【ネタバレ有り】我らが隣人の犯罪 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:宮部みゆき 1990年1月に文藝春秋から出版

我らが隣人の犯罪の主要登場人物

三田村誠(みたむらまこと)
主人公。中学生1年生。父・母・妹の智子と4人暮らし。

橋本美沙子(はしもとみさこ)
誠の右隣の隣人。無職。

毅彦(たけひこ)
誠の叔父。病院の事務員。

田所(たどころ)
誠の左隣の隣人。喫茶店の経営者。

我らが隣人の犯罪 の簡単なあらすじ

三田村誠は学校の成績もルックスもごくごく平凡な中学1年生で、家族4人で郊外のタウンハウスに住んでいます。右隣の部屋に住んでいる女性はやたらとうるさいスピッツを室内で飼っていて、三田村一家がいくら苦情を持ち込んでもまるで相手にしません。平穏無事な暮らしのために、誠は妹と叔父と共に隣人の愛犬の誘拐計画を企てるのでした。

我らが隣人の犯罪 の起承転結

【起】我らが隣人の犯罪 のあらすじ①

困ったご近所さんを懲らしめるために

三田村誠の自宅は3世帯が入居するタウンハウスの中央で、左側には田所という名前の喫茶店を経営する夫婦が住んでいました。

右隣の部屋には橋本美沙子という女性が独り暮らしを送っていましたが、これといった仕事をしていません。

どうやら彼女は週末になると訪ねてくる中年男性に、この分譲住宅を買ってもらったようです。

美沙子はミリーと名付けたスピッツを飼っていましたが、散歩に連れ出すこともないために1日中部屋で泣き叫んでいます。

近頃では誠の妹・智子が寝不足気味なために、学校を休みがちになってしまうほどです。

誠がミリーを「始末」することを本気で考え始めたのは、母の弟で私立病院の事務局で働いている毅彦が訪ねてきた時でした。

元々この建物は大きな一戸建てで、内壁で仕切って複数の世帯用に改装してあるために天井裏から隣室に忍び込むことができます。

毅彦は勤務先から麻酔薬を持ち出して、美沙子がテニスに行く水曜日の午後に決行するのでした。

【承】我らが隣人の犯罪 のあらすじ②

屋根裏で見つけた思わぬ隠し事

当日にミリーを盗み出すはずだった誠たちは、屋根裏に隠されていた通帳と印鑑まで発見しました。

預金額は3000万円を上回る程で、脱税に使っていた隠し口座のようです。

ミリーが装着していた首輪とベストを外して、戦利品の通帳と印鑑と共に誠の机の中に閉っておきます。

ミリーが居なくなったことに気が付いた美沙子はパニックに陥りますが、自分たちの脱税が発覚してしまうために警察に通報することが出来ません。

勢いづいた毅彦が閃いたのは、奪い取った印鑑と通帳を楯に取って2000万円もの身代金を要求することでした。

札束はゆうパックの1番小さい箱に詰め込ませて、美沙子の部屋に保管しておくように指示を与えます。

ミリーのベストをタウンハウスの駐車場に落としておいて、美沙子を誘いだした隙にゆうパックをすり替えるトリックです。

毅彦は自信満々のようでしたが、美沙子のバックに付いている海千山千のパトロンによって苦汁を嘗めさせられることになるのでした。

【転】我らが隣人の犯罪 のあらすじ③

お金よりも価値のあるもの

すり替えたゆうパックを目の前にした誠や智子ばかりではなく、震える手で箱を開ける毅彦も興奮を抑えることができません。

期待に満ち溢れた3人が見たものは、1番上の5枚を除いては全て札束の形に切り揃えた新聞でした。

普段から大金を扱い慣れている者には敵わないことを思い知らされた誠たちは、50000円とポケットマネーを合わせて豪華な食事に出かけます。

暫くたってから誠が新聞を読んでいる時に見つけたのは、ラブホテルから風俗店までを手広く経営する不動産屋の脱税を報じる小さな記事です。

経済的な援助を失った美沙子は、その後すぐに何処かへ引っ越して行きました。

誠たちが手に入れたのはたった50000円でしたが、今度の騒ぎを起こしてもうひとつ得をしたことがあります。

以前から病弱で塞ぎこんでいた智子が、みるみるうちに明るく健康体へと変わっていったことです。

犯罪に手を貸してすっかり吹っ切れたようで、元気に学校へ通うようになるのでした。

【結】我らが隣人の犯罪 のあらすじ④

手の中に転がり込んできた幸運

一連の騒動から2ヶ月経ったある日のこと、誠たちのタウンハウスに税務署の捜査員たちがやって来ました。

一向が乗り込んだのは三田村家でもなく右隣の空き家でもなく、左隣の田所夫妻の家になります。

屋根裏に隠されていた通帳と印鑑は美沙子の持ち物ではなく、田所のものだったようです。

ふたつの脱税行為を意図せずに摘発することとなった誠たちでしたが、美沙子と彼女のパトロンが2000万円を用意してまで取り返そうとしていた物の正体だけは分かりません。

ミリーは毅彦が勤めている病院の犬好きの患者さんにもらわれていき、今では首輪が誠の引き出しに残されているだけです。

ようやくピンときた誠はカッターナイフを握りしめて、首輪の裏側にある不自然な縫い目を切り裂きます。

中から出てきたのは、小指の爪ほどの大きさがある6つの光り輝くダイヤモンドです。

普段は世の中の不公平を嘆いてばかりの誠でしたが、たまには良いことも転がり込んでくることを実感するのでした。

我らが隣人の犯罪 を読んだ読書感想

ありきたりなご近所トラブルがエスカレートしていき、思わぬペット誘拐事件へと発展していく展開に引き込まれていきます。

学校のテストや宿題そっちのけで綿密な犯行計画を練り上げていく、好奇心旺盛な主人公の三田村誠がユーモアたっぷりです。

一見すると病弱で頼りにならないイメージの妹・智子が、意外な活躍を披露していく後半パートも痛快でした。

暴走していく甥っ子たちを諌めるどころか、自ら率先して加担していく叔父の毅彦には笑わされます。

事件の予想外の顛末と共に、少年少女たちが成長していくようなクライマックスが清々しかったです。

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