「親友交歓」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|太宰治

太宰治「親友交歓」

【ネタバレ有り】親友交歓 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:太宰治 1946年12月に新潮文庫から出版

親友交歓の主要登場人物

私(わたし)
罹災して東京から故郷の津軽に避難している。ある日、平田と名乗る男に訪ねられ、めちゃくちゃな話をする平田に付き合わされることになる。

平田(ひらた)
突然私の家にやってきた小学校時代の親友。クラス会を開いて、大量のお酒を集めたいと私に相談しに来る。

女房(にょうぼう)
私の妻で、子どもとともに津軽へ避難してきた。都会出身ではあるが、垢抜けているわけではなく愛想がない。

親友交歓 の簡単なあらすじ

昭和21年の9月のはじめに、小学校時代の同級生である平田という男が私の家にやってきました。平田は小学校のクラス会を開催して、2斗(約3.6リットル)のお酒を集めようと私に相談してきたのです。平田は滅茶苦茶な自慢話ばかりして、大事なウイスキイをたらふく飲み、私や私の妻をかき乱して行きました。玄関まで平田を送りに行き、別れるときに耳元で「威張るな!」と激しく囁いたのでした。

親友交歓 の起承転結

【起】親友交歓 のあらすじ①

小学校時代の同級生「平田」

昭和21年の9月のはじめ、津軽の生家で一人ぼんやりと煙草を吸っているところに、平田という男が訪ねてきました。

その顔を、私は微かに見覚えがあったので家の中へ案内しました。

しょっちゅう喧嘩をし、二人で傷を付け合ったと面白そうに話す平田ですが、私にはそんな傷は一つもありませんので、ただただ微笑んで平田の話を聴いていました。

平田が私の元にやってきたのは、クラス会を開催するにあたって、2斗のお酒を集めたいという準備や相談をするためでした。

すると突然「お前のところに酒はないのか。

かか(私の妻)のお酌で一ぱい飲ませろ」と言いました。

つまらない思いになりながら私は奥の部屋にある書斎に案内しました。

平田はまた「かかのお酌で酒を飲ませろ」と言いましたが「女房はいない」と嘘をつきました。

私は押入れから半分ほど入っているウイスキイを、机に置いてある茶呑茶碗に注ぎました。

「まむし焼酎に似ている」「60パーセントくらいかな? たいして強くない」などと、平田は何の風情もないことを言い、ウイスキイを飲み干すのでした。

【承】親友交歓 のあらすじ②

支離滅裂な話

私は2本目のウイスキイを出し、平田も平然と飲み始めました。

さすがに私も嫌な気分でした。

昔から浪費癖のある私ですが、このウイスキイにだけはケチになれるのでした。

当時は三流品でも、今となっては一流品の秘蔵のお酒なのでした。

1ダース譲っていただいたゆえに破産してしまいましたが、後悔は一切せずに、井伏さん(井伏鱒二)と一緒に飲んでみたいとも思いながら少しずつ大事に味わっていました。

平田にお酒を飲ませろと言われたときには日本酒も残っておらず、残り少ないウイスキイを出したのですが、こんなに無遠慮に飲まれるとは思っていなかったのです。

それにまた、平田の談話というものも、しっくり私の心に響かないものばかりでした。

平田が酔えば酔うほど、「俺が東京で暮らしていたころは」と大声で言い、同じく東京で過ごしていた私の「女絡みのしくじり」を弱みのように考えて、それにつけ込んでいるようで、その態度にも一種のつまらなさを感じました。

酔いを覚まさせようと梨をむいてすすめましたが、梨には目もくれずウイスキイを飲むばかりでした。

【転】親友交歓 のあらすじ③

悪酔いする平田

突如、平田の話が政治に飛びました。

平田は政治が嫌いだと話していましたが、人情は持っていると自信家に言いました。

「お前の兄貴とは何でもないが、お前は俺と同級生であり親友だろう。

だから俺はお前の兄貴に一票入れた」「人情一つだけを忘れなければそれでいいと思う」私はいよいよ興醒めましたが、さらに平田は、私の先祖はただの油売りだったという話や、平田の兄が新聞に載っている話や、自分の一族の自慢話ばかりをして、ついには「お前のお酌では飲まん、かかを呼んでこい」と騒ぎ始めました。

私はそれをなだめて、妻を呼びました。

社交辞令で、妻はお酌をしました。

妻にも同じような話をするので、早々に妻を部屋から追い出すために「酒の肴をもらってきなさい」と言いつけました。

妻を逃がした後も、妻の大事にしている毛布を寄越すようにしつこくせがまれ、妻がお膳を運んできてくれたときも、聴いていて気持ちの良い話ではないことばかり話し、「子どもが奥で泣いているようですから」と逃げる妻に対して「お前のかかはいかん! かかの部屋はどこだ。

お前たちの寝室を見せろよ!」と怒鳴りました。

【結】親友交歓 のあらすじ④

良いところが微塵もない男

ここでようやくはっきりと、私は「この男に大事なウイスキイを飲ませるのはつまらんことだ!」と思うのでした。

「ひとつ歌でもやらかそうか」と平田が言うので私は期待して「ぜひ一つ」と頼みました。

平田が歌を歌うことで、この5、6時間を少しでも楽しい思い出にしたかったからです。

しかしその歌すら無惨なもので、「後半は忘れたのでもう帰る」と立ち上がりました。

私は引きとめませんでした。

ウイスキイはもらっていくと言うので、角瓶の残りのお酒を茶呑茶碗に注ぎましたが、最後の1本が押入れにあることを見破られ、それを取りだして平田に手渡しました。

このウイスキイの値段を教えてやろうかと思いましたが、しぶしぶではありますがごちそうしておいて今更言えませんでした。

小学校時代には5、6人の親友がいましたが、この平田という男は、私の記憶に一切なかったのです。

その自称親友との交歓を半日もしてしまったのです。

玄関まで彼を送っていき、別れ際に平田は私の耳元で激しく、「威張るな!」と囁いたのでした。

親友交歓 を読んだ読書感想

「わけのわからない話。」

この感想に尽きます。

理不尽で、めちゃくちゃで、理屈だけでは説明できない出来事を、きっと誰もが一度は体験するでしょう。

文中で〈彼のその日のさまざまの言動をそのまま活写し、以て読者の判断にゆだねたほうが、作者として所謂健康な手段のように思われる。

〉とありますが、結果として、読み手もどう解釈すべきか悩まれる作品となってしまったように思います。

語り手の〈私〉が〈修治〉と呼ばれていることや、罹災して津軽の生家に避難していることなどから、私小説的要素の強い作品と見ていますが、あまりに〈私〉の思考を千々に乱すため、平田という男が本当に実在し、めちゃくちゃな話をされて、自分や妻を不快にされて、酒を飲まれて帰られたのか、とさえ思いました。

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