【ネタバレ有り】空飛ぶ広報室 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:有川浩 2016年4月に幻冬舎から出版
空飛ぶ広報室の主要登場人物
空井大祐(そらいだいすけ)
航空自衛隊の隊員。階級は二尉。元・戦闘機パイロットでしたが、不慮の事故により夢を断たれ、航空自衛隊航空幕僚監部広報室に配属になります。
稲葉リカ(いなばりか)
帝都テレビのディレクター。元・警視庁付きの記者でしたが事情により自衛隊担当に異動してきたばかりです。あからさまな自衛隊嫌いで、空井たち隊員に食ってかかりますが、徐々に理解を示すようになります。
鷺坂正司(さぎさかまさし)
階級は一佐。空井が所属する航空自衛隊航空幕僚監部広報室の室長。仕事に関しては内外から「詐欺師」と呼ばれる辣腕を発揮する一方、実はアイドルが好きなミーハーな一面も。
比嘉哲広(ひがてつひろ)
階級は一曹。元々は入間の航空自衛隊の広報班に所属していましたが、鷺坂に懇願されて現在は航空自衛隊航空幕僚監部広報室に所属する、空自広報のエキスパート。
空飛ぶ広報室 の簡単なあらすじ
主人公の空井大輔は、小さい頃からずっと夢見てきたブルーインパルスのパイロットになることが現実になりかけていたある日、不慮の事故によってその夢を永遠に断たれてしまいます。戦闘機パイロットを続けることができなくなった空井は、航空自衛隊航空幕僚監部広報室に配属になります。広報室で出会う上司や同僚、また自衛隊を毛嫌いするマスコミ関係者とのやりとりから、空井が失意から立ち直り前を向いていく物語です。
空飛ぶ広報室 の起承転結
【起】空飛ぶ広報室 のあらすじ①
航空自衛隊の戦闘機パイロットとしてのキャリアを積んで5年が経ったある日、空井大祐は小さい頃からの夢であるブルーインパルスに乗るという夢を断たれました。
暴走した大型トラックが交差点を曲がりきれなかったことが原因で、空井には一切の落ち度のない不運な事故でした。
命に別状はなく右足の骨折のみでリハビリに励んだにもかかわらず、彼の足は戦闘機パイロットとしての職務を全うするには回復の度合いが足りず、結果としてパイロット資格剥奪となってしまいました。
失意の中築城基地の総務班への転属し1年が経った頃、空井は航空自衛隊航空幕僚監部広報室に転勤になります。
航空機パイロットとしての職務と広報室でのそれは、同じ航空自衛隊でありながらもまったく種類の異なるものでした。
着任してまもないある日、空井は上司の鷺坂に同席する形であるマスコミ関係者に出会います。
東都テレビディレクターの稲葉は、元・警視庁付きの記者で、自衛隊を毛嫌いしている、プライドの高い女性でした。
鷺坂には考えがあり、そんな稲葉のアテンドを広報新人である空井に任せるのでした。
【承】空飛ぶ広報室 のあらすじ②
帝都テレビのディレクターである稲葉のアテンドを任された空井は、稲葉の自衛隊への知識や理解がなさすぎることから、広報として自分の役割を自覚していきます。
そんなある日、稲葉が番組で自衛隊の特集コーナーを作ることになり、稲葉からおすすめの題材はないかと聞かれた空井は戦闘機パイロットはどうかと提案します。
しかし稲葉はその提案を却下したばかりか、戦闘機を人殺しの機械とまで言い放ちます。
小さい頃から夢見るほど戦闘機に思い入れのあった空井は、偏見で物を言う稲葉に対して激昂してしまいます。
自衛隊広報にとって「お客様」であるはずのマスコミにキレてしまった空井に対して、普段は嫌味を吐いてばかりいる先輩の片山は愛あるゲンコツをくれ、階級は下ながらも広報経験抱負な部下の比嘉は稲葉へのフォローに回ってくれました。
パイロット資格剥奪以降この時まで、空井は感情の起伏を失ったかの様子で感情を表に出すことはありませんんでした。
どういう形であれ空井の剥き出しの感情を引き出したことは、上司である鷺坂が空井に稲葉のアテンドを任せたひとつの狙いだったのです。
またそういう空井の姿は、記者でいられなくなって捨て鉢になっていた稲葉にとっても、のちのち影響を与えるものになっていくのでした。
【転】空飛ぶ広報室 のあらすじ③
その後も東都テレビのドラマへの協力や、稲葉も交えた広報室の懇親会などで、徐々にお互いへの親近感や理解を深めていった空井と稲葉でしたが、自衛隊が自主制作した広報CMに関する東都テレビの対応に関してすれ違いが起きてしまいます。
CMの内容は自衛隊のソフトパワーにスポットを当て、ある女性自衛隊員とその父親の真実のエピソードをもとにしたものでした。
撮影当日にはある奇跡も重なり、コンセプト通りドキュメンタリータッチに仕上がったCMは、稲葉の厚意もあり帝都テレビの夕方のニュースの特集で取り上げられるなど、幸先のよいスタートを切ったかのようにみえました。
ところがある就職支援団体の代表者が、CMに対して戦争賛美であると意見を述べ、CMのエピソード自体の信ぴょう性まで問うような批判を展開したのでした。
その代表者が東都テレビの番組でさらに自衛隊に対して一方的な侮辱をしたにもかかわらず、生放送の番組中に東都テレビ側からの訂正や謝罪は一切ありませんでした。
後日事態を知って謝罪のために広報室を訪れた稲葉に対して、空井の腹の中に積もり積もっていたマスコミへの不信感を、過去の稲葉の失言を掘り返す形でぶつけてしまい、これまで築いてきた稲葉との信頼関係にも大きなヒビが入ってしまうのでした。
【結】空飛ぶ広報室 のあらすじ④
CMに関する一件があって以降、稲葉は広報室に足を運ぶことはなくなり、空井の側から型通りの謝罪メールを打ちそれに稲葉も返信をする、という中途半端な形で手打ちが成立した状況に陥っていました。
そんなとき、稲葉の同僚であるバラエティ番組のディレクターから仕事の依頼が舞い込み、実現がほぼ確実になったため空井から稲葉へお礼と報告を入れるよう鷺坂は指示します。
ためらう空井に、鷺坂はある新聞に乗っていた読者の投書欄の切り抜きを渡します。
その投書には、空井と稲葉が疎遠になったきっかけである一方的な自衛隊批判に対しての反対意見が書かれており、ペンネームからそれは稲葉が書いたものであることは明らかでした。
そのことでなおさら稲葉に顔向けできないと落ち込む空井でしたが、意を決して稲葉へ電話をかけ、すれ違っていた2人の関係はようやく雪解けのときを迎えました。
稲葉は以前のように広報室に出入りするようになり、空幕広報室のドキュメンタリーを空井中心に制作したいという企画を打ち明け、空井もまたパイロットではなく広報官として初めて報われたような気持ちになれたのでした。
空飛ぶ広報室 を読んだ読書感想
この小説の中に「自衛官も1人の人間なんです」というセリフが出てきます。
この小説を読むまで、別段嫌悪感もなければ、災害派遣で活躍する姿をニュースなどで目にしても被災状況などに比べると印象が薄い、というのが自衛隊に対する私の正直なイメージでした。
それなので自衛隊の方々がこんなにも理不尽な思いをしていることも知りませんでした。
今回の小説の題材は自衛隊でしたが、自分が気づかないところで職業差別をしてないだろうか、知らずに誰を傷つけるようなことをしていないだろうか、ということを意識するようになりました。
また、当初希望していた職種につけなかったとしてもそれぞれの持ち場で職務を全うする、そんな空井と稲葉の姿に励まされました。
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