こんにちはレモンちゃん(中原昌也)の1分でわかるあらすじ&結末までのネタバレと感想

こんにちはレモンちゃん

【ネタバレ有り】こんにちはレモンちゃん のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:中原昌也 2013年9月に幻戯書房から出版

こんにちはレモンちゃんの主要登場人物

私(わたし)
ファミリーレストランの客。物語の語り手。

山本レモン(やまもとれもん)
「レモンちゃん」の愛称で親しまれるウエイトレス。

こんにちはレモンちゃん の簡単なあらすじ

24時間営業のファミリーレストランで、コーヒーカップを見つめ続けている奇妙な男性客がいました。店内の奥の厨房で黙々と調理に励んでいるエキゾチックな雰囲気の男と、何時しか不思議な絆が芽生え始めていくのでした。

こんにちはレモンちゃん の起承転結

【起】こんにちはレモンちゃん のあらすじ①

気だるい店内で一休み

これといって特徴のないファミリーレストランに立ち寄った私は、店内をくまなく見渡してみました。入り口付近の席には年老いた夫婦が陣取っていて、ふたりともアロハシャツのような民族衣装を身に纏っています。

夫婦の向かいのボックス席に座っているのは、窓際から射し込む夕日を浴びながらただひたすらに手に持ったコーヒーカップを見つめている男性客です。喜怒哀楽が抜け落ちた空虚な表情になり、時折意味も無しにニヤニヤとした笑いを浮かべています。

彼の背後にある窓ガラスには、突如として降り出した雨が叩きつけられていました。

私は出かける時に傘を持って来るのを忘れてしまったために、雨宿り代わりにしばらくこの店を利用することにします。

【承】こんにちはレモンちゃん のあらすじ②

雨に濡れた孤独

店の外の前にある交差点の中央分離帯には、今時珍しいレトロタイプの大きなラジカセが打ち捨てられていました。

雨脚がさらに強まっていく中でも故障することなく、延々と音楽を再生し続けています。

そこへ偶然にも通りかかったのは、飼い主が誰かも分からない可愛らしい1匹の黒い子犬です。

音を発する物体に興味津々な子犬の純真無垢な振る舞いを、私は微笑ましく見守っています。

その一方では身寄りのない野良犬がやがては辿っていくであろう、捕獲から保健所への移送に殺処分までの道のりに想いを巡らせて暗澹たる気分になってしまいました。

再び窓の外に目をやるとそこにはラジカセも犬も消えていて、私は小さな生き物の無事を願うばかりです。

【転】こんにちはレモンちゃん のあらすじ③

お店の清涼剤

お客さんが三々五々引き上げて静かになっていくと、テーブルを手際よく片付け始めていくのはひとりの若いウェイトレスです。

思わず私が背後から呼び掛けて名前を聞くと、振り向き様に「レモンちゃん」というニックネームをアピールしました。

彼女は日々のルーティンワークにも嫌な顔ひとつせずに、如何なる客に対しても常に笑顔を絶やすことはありません。

その愛称通りに自然と辺りには柑橘系の香りが漂っていて、山本レモンという本名にもピッタリです。

間もなくレモンちゃんの勤務時間が終わりを告げると、激しい雨の中を黄色い傘をさして家路へと向かっていきます。

私が店の夕刊を広げてみると、微かなレモンの匂いを感じたような気がしました。

【結】こんにちはレモンちゃん のあらすじ④

ファミレスで一体感

店先のレジ前に立ってみると、厨房にいる調理人の姿を見ることが出来ます。

私はこのファミレスに何回か来ていましたが、いつも同じ人物がそこで調理を担当していました。

黒々とした髭に衛生上のため被っている白い帽子、浅黒い肌にラテン系の顔立ち。

レモンちゃんとは正反対な性格のため、決して客に愛想を振り撒くことはありません。

かといって特に労働環境に不満があるようにも見えず、料理の腕も確かなようです。

やがてコーヒーカップを見つめていた奇妙な男が、財布を取り出してレジへ移動します。

瞬間的に彼は調理担当者と真正面から向き合い、お互いの目と目を合わせました。

ふたりの細やかな出逢いを、数少ないお客は温かい気持ちで見守るのでした。

こんにちはレモンちゃん を読んだ読書感想

ストーリーの舞台に設定されている、日本全国何処にでもありそうなファミリーレストランの気だるいムードが味わい深かったです。

マニュアル化された接客態度に、生産性を重視したドリンクやフードメニューを思い浮かべてしまいました。

お店のアイドル・レモンちゃんのように、自分自身のやるべき仕事に誇りを持っている若者には安心させられます。

殺伐とした店内の無機質さと、雨が降りしきる外の風景とのコントラストも効果的です。

加速していく消費社会の中で使い捨てにされる物や、人間の身勝手な欲望に振り回されていく小さな生命への批判も込められていました。

バラバラ見えていた登場人物たちの間に、奇妙な絆が芽生えていくラストが感動的です。

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