ニートピア2010(中原昌也)の1分でわかるあらすじ&結末までのネタバレと感想

ニートピア2010

【ネタバレ有り】ニートピア2010 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:中原昌也 2008年2月に文藝春秋から出版

ニートピア2010の主要登場人物

草吹大輔(くさぶきだいすけ)
ノンフィクション作家。著書「引き籠り悲喜こもごも」がベストセラーになる。

小島(こじま)
サラリーマン。極端に屈折した性格の男。

ニートピア2010 の簡単なあらすじ

草吹大輔は遡ること3か月前に、全国各地でくすぶっている若者たちのインタビューをまとめた「引き籠り悲喜こもごも」を出版しました。発売開始と同時に書籍はベストセラーとなり、草吹はあらゆるメディアから時代の寵児として祭り上げられていきます。更には厚生労働省の主催によって2010年に開催されることとなった、不就労者のための大規模な国家プロジェクトへと巻き込まれていくのでした。

ニートピア2010 の起承転結

【起】ニートピア2010 のあらすじ①

草吹の突然の成功

草吹大輔は細々と取材を続けながら、二流の週刊誌に書きなぐりのような原稿を売りつけていたノンフィクションライターです。

かつては自分自身の才能に疑問を抱きつつ、世の中の誰からも必要とされていないような深い孤独感や不安を感じていました。

そんな草吹にようやく転機が訪れたのは、40歳を超えてからです。

全国各地を渡り歩いて、引きこもりの若者たちひとりひとりと向き合い真摯な姿勢で話を聞きます。

雑誌に掲載されたインタビュー記事を纏めて単行本化したのが、「引き籠り悲喜こもごも」です。

出版されるや否やたちまちベストセラー書籍となり、草吹は時代の寵児と持ち上げられてありとあらゆるメディアから脚光を浴びていくのでした。

【承】ニートピア2010 のあらすじ②

不愉快な知人とほろ苦い思い出

ある日の午後のこと、草吹は薄汚れたコンクリートで固められた屋上の片隅に設置されているプラスティック製の長椅子に横たわっていました。

西日の射し込み具合から察するに、時間は午後3時から4時くらいになっているようです。

喉が渇いたために飲み物を探していますが、安っぽいコップに入った生ぬるい水しかありません。

気がつくと黒いフレームの地味なメガネをかけて、白地にカラスのイラストがプリントされたTシャツを着た知人男性・小島が目の前に佇んでいました。

相も変わらぬ趣味の悪いファッションに呆れつつ、彼を退屈させないように気を配りながら会話を交わします。

小島への生理的な嫌悪感から、草吹の脳裏に3か月前のほろ苦い記憶が甦るのでした。

【転】ニートピア2010 のあらすじ③

忘れられた一大プロジェクト

この場所は本来であれば厚生労働省によって2010年に開催される大規模なイベント、「ニートピア2010」の企画準備室になるはずでした。

「引き籠り悲喜こもごも」で一躍時の人となった草吹に、ニートやフリーターに代表されるような社会問題の解決に悩まされていたお役人たちは目を付けます。

政府と文化人たちが協力して無職の若者たちをサポートする試みが大々的にスタートしましたが、その直後に発覚したのが実行委員たちによる運営費の使い込みと夜逃げです。

我が国初のプロジェクトと銘打ったものの、計画は志半ばで頓挫してしまいます。

今では草吹を始めとする一部の立ち上げ人を除いては、「ニートピア2010」のことを覚えている者はいません。

【結】ニートピア2010 のあらすじ④

国家による負の遺産

一時は文筆家として自らの仕事にやりがいを感じていた草吹でしたが、「ニートピア2010」の失敗によって以前の無気力状態に戻ってしまいました。

何時しか自身の運命を変えることとなった代表作、「引き籠り悲喜こもごも」への愛着も薄れていきます。

近頃では街中を歩いていて書店に立ち寄った際に、自分の著作が並んでいるのを目撃した途端に虚無感と羞恥心に包まれてしまう始末です。

「ニートピア2010」に関しては当事者の草吹にさえ不可解な点があり、その他の関係者も口を噤んで多くを語ることはありません。

開催予定地の中心に建設途中で打ち捨てられたグロテスクな煙突を眺めていた草吹は、アウシュヴィッツの焼却炉を連想してしまうのでした。

ニートピア2010 を読んだ読書感想

「他者とは常に、結局忌まわしいとしか形容できない漠然とした何かしか与えてくれない」という草吹のセリフには皮肉がたっぷり込められています。

自らの才能を信じることが出来ずに小説を書くことに対しても悩んでいた、若き日の著者の姿が思い浮かべてしまいました。

小説家として文学賞に輝く前にはミュージシャンから映画評論家まで闇雲に職に手を出していた、自身のほろ苦い過去にも繋がるものがあります。

どの仕事を選んで如何なる道を歩いていくのかは世間一般の評価や周りの人たちによる導きではなく、自分自身の意志によって決断することを考えさせられます。

働くことの厳しさばかりではなく、好きなことを職業にできる素晴らしさも感じました。

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