知的生き方教室(中原昌也)の1分でわかるあらすじ&結末までのネタバレと感想

知的生き方教室

【ネタバレ有り】知的生き方教室 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:中原昌也 2014年11月に文藝春秋から出版

知的生き方教室の主要登場人物

馬爪太郎(うまづめたろう)
小説家。カルチャーセンター講師。

本田悦子(ほんだえつこ)
フリーター。19歳。

本田紀子(ほんだのりこ)
悦子の母。主婦。

山本三津子(やまもとみつこ)
編集者。馬爪の担当者。

知的生き方教室 の簡単なあらすじ

カルチャーセンター講師として燻っている小説家、小説家に憧れる主婦、彼女の娘、小説家に幻滅している編集者。4人の男女の日常生活と人間模様を描きながら、今の時代の文学界に隠されている欺瞞を暴き出していきます。

知的生き方教室 の起承転結

【起】知的生き方教室 のあらすじ①

文学界への根強い反感

馬爪太郎は少々マイナーながらも、十数年間に何冊かの著作を発表している小説家です。「馬爪」は「馬蹄のような精神で本を書きたい」という自らの信条を込めたペンネームになり、文芸同人誌のインタビューでもその気持ちを常に語っています。

近頃になって比較的由緒ある文芸雑誌「文學界」での連載が決まりましたが、相変わらず文学賞の受賞には恵まれていません。

文筆業1本では生計を立てることは難しく、地元のカルチャーセンターで開催されている「知的生き方教室」の講師をしながら何とか凌いでいます。

長らく文壇を支配している大御所作家たちや、世間一般やマスコミから持ち上げられている純文学に対しては根強いコンプレックスを抱いていました。

【承】知的生き方教室 のあらすじ②

モラトリアム悦子

本田悦子は高校を卒業した後に、いくつもの会社や店を回ってアルバイトの面接を受けました。

いずれの応募先も採用されることなく、彼女が受けた面接先は間もなく潰れたり閉店してしまいます。

1日中仕事もせずに家に引きこもりがちな娘を心配した母・紀子のアドバイスは、毎朝8時には起きてやりたい仕事が見つかるまで地元の図書館に通うことです。

図書館の本棚に並んでいる膨大な書物を手に取ってパラパラと捲ってみましたが、明るい将来に繋がるようなきっかけは見つかりません。

ようやく雇ってもらった駅前の写真屋で現像受け付けのバイトを始めましたが、カメラには詳しくなかった悦子はお客さんの撮った写真に愛着を持つことが出来ないのでした。

【転】知的生き方教室 のあらすじ③

主婦から女流作家への道のり

本田紀子はある朝自宅の郵便受けから新聞を取り出した時に、1枚の折り込み広告に惹き付けられました。

普段であればスーパーマーケットのセールのお知らせやクーポン券にしか神経が届かない彼女でしたが、白地の紙面に銀色でプリントされた「知的生き方教室」文字に言い知れない高まりを感じてしまいます。

紀子の心の奥底に湧いてきたのは、これまでの自分自身の凡庸な人生を改めて「知的生き方」に基づいて行動する決意です。チラシを片手にカルチャーセンターを訪れた際に、講師を務めている馬爪から作家的な資質を認められます。

更には自宅にまで招かれて仕事場と創作活動の秘訣を垣間見た紀子は、自身も女流作家への道を歩むことを熱望するのでした。

【結】知的生き方教室 のあらすじ④

ここではない何処かへ

小説家・馬爪太郎を担当する編集者の山本三津子は、いささか真面目過ぎるその性格が玉に瑕です。

社内での企画プレゼンから作家への作品依頼、原稿の校正に印刷所への受け渡し、書物のデザインや宣伝用キャッチフレーズの考案。

膨大な業務を抱えて休日でも出勤を余儀なくされているために、気分は鬱いでいくばかりです。最近では出社前に就職情報誌を購入するのが彼女の日課になっていましたが、このご時世ですからなかなか転職先は見つかりません。

ある日の通勤電車の中で不吉な予感を覚えた三津子は、出版社のある駅の前で途中下車をします。

無断欠勤に馘を覚悟しながらも、駅のホームから改札口をくぐり見知らぬ町へ何かを期待して繰り出していくのでした。

知的生き方教室 を読んだ読書感想

かつては飛ぶ鳥を落とす勢いで文芸誌を刊行してきた大手出版社の、現在の厳しい現状が伝わってきます。

次から次へと廃刊に追い込まれていく出版不況の過酷さと共に、純文学の作家として生活を続けていくことの難しさを垣間見ることが出来ました。

著者自身を思わせるような冴えない小説家が執筆活動をあっさりと諦めて、地元のカルチャーセンターで開催されている講座で講師を始めていく様子が皮肉たっぷりです。

現代文学がいつの間にか一般的な人たちの現実の暮らしと離れてしまい、作家自身の趣向性や独白に陥っていることについて考えさせられました。

先鋭的な文学の担い手としての強い決意と共に、これからの出版業界へ強い危機感も感じます。

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