悲惨すぎる家なき子の死(中原昌也)の1分でわかるあらすじ&結末までのネタバレと感想

悲惨すぎる家なき子の死

【ネタバレ有り】悲惨すぎる家なき子の死 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:中原昌也 2012年4月に河出書房新社から出版

悲惨すぎる家なき子の死の主要登場人物

俺(おれ)
売れない小説家。物語の語り手。

小森翔太(こもりしょうた)
俺の知人。何かにつけて他人から嫌われる性格。

悲惨すぎる家なき子の死 の簡単なあらすじ

冴えない作家の「俺」は、近所の空き地だけを心の拠り所にして小説を書き上げようとしていきます。しかしながら不愉快な知り合いや横柄な管理人の訪問に悩まされてしまい、いつまでたっても作品が完成することはないのでした。

悲惨すぎる家なき子の死 の起承転結

【起】悲惨すぎる家なき子の死 のあらすじ①

空き地は創作の源

細々と執筆を続けていた俺は、初夏を過ぎたある日近所のスーパーに買い物に出掛けました。

帰り道に自宅のマンションの隣にある、長い間空き地になっているスペースを散歩してみます。

俺の書斎の窓はちょうどこの空き地に面しているために、時折仕事の手を休めながら外の風景を眺めるのは気分転換にピッタリです。毎日のように自分の部屋から見ていた場所ですが、実際に足を踏み入れたのは今回が初めてになります。

打ち捨てられた白い椅子とテーブルからは、かつてはこの地にマイホームを構えて悠々自適な暮らしを送っていたあろう住人の姿が浮かんできます。

面識もない家主が辿った悲惨な運命に思いを巡らせつつ、俺は次回作の構想に役立てるのでした。

【承】悲惨すぎる家なき子の死 のあらすじ②

みんなから疎まれた末に

経済的な理由により早く原稿を書いて出版社に渡さなければなりませんが、相変わらずアイデアが涌いてきません。

心の中に引っ掛かっているのは、地味な服装でか細い話し声が特徴的な小森翔太でした。電話の受話器が苦手だという特異な体質になり、深夜に何の連絡もなしに人の家を訪ねてくる非常識ぶりです。その時にはたまたまインターホンが故障していたために、俺が出てくるまでドアを叩き続けていました。万事がこの調子のため、周りの人たちは彼に対して何かと辛く当たります。

ある時には駅前のバス停で、見ず知らずの中年女性からハンドバッグで顔面を殴られてしまったほどです。常日頃からノイローゼ気味な小森は、ある日突然に姿を消してしまいます。

【転】悲惨すぎる家なき子の死 のあらすじ③

招かれざる客

俺が住んでいる地区はとある宗教団体が本拠地を置いていたため、周辺には関連施設も多く布教活動が活発でした。

そんな勧誘行為以上にやっかいなのが、マンションの管理組合長を名乗る老人の存在です。締め切りに追われていて忙しい日に限って、つまらない要件で訪ねてきます。

デジタル放送の工事にやたらとこだわる老人は、午前6時からドアホンを鳴らし外から梯子を使ってベランダに浸入してくるほどの偏執ぶりです。テレビをまるっきり見ない俺は、頑なにアンテナ設置を拒み業者を家に入れることはありません。

心機一転新しい静かな環境で仕事をすることも選択肢の1つでしたが、家賃の未払いが続いている貧乏作家にとって引っ越しは夢のまた夢です。

【結】悲惨すぎる家なき子の死 のあらすじ④

何処へも行けない

思い余った俺が電話をかけて相談したのは、長らく音信不通となっていた両親です。

お金に関しては異常なほどの執着を示す父と母でしたが、息子の置かれている不条理な境遇には同情を寄せています。

「引っ越し代貸してやる」の言葉に誘われて久しぶりに実家へと向かい、自分名義の満期預金を解約するために母親と地元の銀行へ同行します。

貯金額は数百万円を越えていたものの、家に帰ってから母が手渡されたのは薄っぺらい封筒に入れられた2万円です。僅か2万では荷物を運ぶために車を出してくれる友人にお礼をするだけで終わりになり、敷金礼金は払えません。

俺は未だに例のマンションの中で、珍客たちに苦しめられながら嫌々小説家を続けているのでした。

悲惨すぎる家なき子の死 を読んだ読書感想

2010年前後に時の政府が推し進めていた地デジ化政策や文筆家としてのワーキングプアの実態など、数多くの社会問題を取り上げた奇妙なストーリーには考えさせられます。

やたらめったらデジタル放送の工事を押し付けてくる、マンションの管理組合長の老人の滑稽さが印象的でした。

住人の留守中に勝手に他人の部屋に忍び込んで、設置工事を敢行する姿には鬼気迫るものがあります。

今の時代にテレビを全く見ることもなく、インターネットにも興味を持たない少数派の人たちに注がれている著者の優しさ溢れる眼差しが微笑ましかったです。

最後までアナログ放送にこだわり続けている頑固一徹な主人公の生きざまからは、個人の思想と選択の自由についても考えさせられました。

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