「君のクイズ」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|小川哲

「君のクイズ」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|小川哲

著者:小川哲 2022年10月に朝日新聞出版から出版

君のクイズの主要登場人物

三島玲央
主人公。クイズオタクでクイズ番組にも出ている

本庄絆
「頭の中に世界が入っている」というほどの記憶力を持つ。主人公と番組でクイズ対決をする。

坂田泰彦
クイズ番組の総合演出。番組が盛り上がる事を強く考えている。

本庄裕翔
本庄絆の弟。大学受験勉強中。

桐崎さん
三島玲央とお付き合いをしていた女性。

君のクイズ の簡単なあらすじ

三島玲央はクイズ番組で本庄絆と対決しています。

あと一問で勝敗が決まるという時、本庄は問題文を一文字も聞かずにボタンを押して回答し、正解します。

どうしてそんな事が出来たのか、ヤラセだったのか、三島は徹底的に調べます。

そしてヤラセではなかった可能性に行き着きます。

彼の人生が正解に導いたのだと。

しかし実際はお金の為のいわばパフォーマンスであり、自分も番組もそれに利用されていたという事に気付くのでした。

君のクイズ の起承転結

【起】君のクイズ のあらすじ①

「0文字押し」

三島玲央は今、クイズ番組「Q-1グランプリ」のファイナリストとして、ステージに立っています。

対戦相手は本庄絆です。

両者一歩も引かない接戦で、ついに最後の問題になりました。

これに答えられた方が優勝、一千万円を獲得する事になります。

緊張が走り、アナウンサーが「問題ー」と言ったところで、ボタンが点灯した音が聞こえて来ました。

間違えて押してしまったのか、慌ててランプを確認すると、本庄のランプが赤く光っていました。

誰しもがミスだと思い、三島も本庄に同情しました。

しかし本庄は、「ママ、クリーニング小野寺よ」と口にしました。

一文字も読まれていないクイズの答えを出したのです。

周りはざわついていますが、本庄はもう一度「ママ、クリーニング小野寺よ」と口にします。

それから10秒ほどのじかんがあって、「ピンポン」という正解音が鳴ります。

その瞬間に本庄の優勝が決まりました。

三島は呆気に取られてステージの上で棒立ちしていました。

【承】君のクイズ のあらすじ②

三島が解くクイズ

番組放送後、SNS上ではさまざまな意見が飛び交っていました。

ヤラセだと怒るコメントと同じくらい、本庄を讃えるコメントがありました。

しかし出演者たちはそんな状況に困惑しています。

納得のいかない彼らは番組に説明を要求しました。

それに対し番組側は、演出面で不適切な部分があった事が分かった事、期待を裏切られたように感じさせてしまって申し訳ない、本庄絆からは優勝辞退の申し出があり優勝金全額とトロフィーを返却されている事を伝えて来ました。

三島はこの筋の通っていない説明に納得いきませんでした。

自分で思っている以上に怒っている事に気づき、自分で調べるしかないと思います。

本庄本人に説明を求めるメッセージを送っても、返事は来ませんでした。

三島だけでなく、他のすべての人と連絡を絶っているというのです。

三島はこれからクイズを解きます。

「なぜ本庄絆は第一回「Q-1グランプリ」の最終問題において、一文字も読まれていないクイズに正答できたのか?」

【転】君のクイズ のあらすじ③

見えてくる答え

三島は、本庄が出演していたクイズ番組の映像を可能な限り集めました。

さまざまな映像を見て、最後にもう一度、本庄のこと、自分自身のことを思い出しながら「Q-1グランプリ」決勝戦の映像を見てみる事にしました。

一つひとつ問題を振り返っていく中で、三島は自分が答えた問題と自分の過去の経験を思い出します。

幼い頃の兄との会話や、父親が趣味で集めていた本、学生の頃お付き合いをしていた桐崎さんという女性と過ごした日々、、。

クイズとは覚えることだけでなく、何かしらの思い出がそこにはついてくるのだと感じました。

また、彼の問題文の一文字目でボタンを押すなどの「不自然な早押し」も、改めて映像を見てみると、アナウンサーの口の動きで先が読めたり、よくよく考えてみると答えが一つに絞られる問題がある事に気づきます。

だんだんと0文字押しがヤラセではなかった可能性もでてきました。

三島はクイズ番組だけでなく、本庄に関わる情報ならなんでも集めようとしました。

そこで本庄絆の弟の、本庄裕翔に会う事が出来ました。

弟の話によると、子供の頃山形県鶴岡市に住んでおり、本庄絆が中学時代いじめにあい、自室に篭り図書館の本や図鑑をずっと読んでいたことなどが分かりました。

本庄が決勝戦で答えた「まま、クリーニング小野寺よ」も、山形県を中心として流れているCMの言葉です。

三島は気付きます。

「Q-1グランプリ」で出題された問題は、出演者の過去や経験に基づいて作られているのではないだろうか、決勝戦の問題も三島自身と本庄の人生においての今までの経験をもとに作られていて、本庄はその事に誰よりも早く気付きたのではないか、と。

三島はその考察をもとに、改めて本庄にメッセージを送り、会える事になりました。

やっとクイズの答え合わせが出来るのです。

【結】君のクイズ のあらすじ④

君と僕にとってのクイズ

本庄は、お洒落なイタリアンレストランに三島を誘いました。

そこで三島の、出演者が必ず答ることのできる問題が用意されている事に本庄は対戦中誰よりも早く気付いた、という考えについて、一点を除いてすべて合っていると言いました。

対戦中に気付いたのではなく、放送前から予測していたと言います。

そこで出演者全員の事を調べたそうです。

そして自身については、かつてのクイズ番組で「ママ、クリーニング小野寺よ」が答えの問題に正解した事があり、自分が山形に住んでいなかったら分からなかった問題に答えられた事で、いじめによって自信をなくしていた人生が肯定されたように感じたことがあったと言います。

自分を救ってくれたのがクイズだったと、目に涙を浮かべて話しました。

そういった事情があり、最終問題の答えが「ママ、クリーニング小野寺よ」であると想像できたというのが本庄の話でした。

三島が、そういう事だったのかと納得しかけていると、「っていうのはどうですか?」と、若干の笑みを浮かべながら本庄が言います。

本庄は自身の開設したYouTubeチャンネルで、三島と今の内容を話す動画を上げたいと言います。

今までの話は作り話だったのです。

最終問題を予想出来ていたのは本当だけど、それが正解でも誤答になっても、インパクトが残せれば良かったのです。

すべてはこれからのYouTubeなどのビジネスに活かす為に。

三島と「Q-1グランプリ」は、クイズで稼いでいくという本庄に、利用されたにすぎませんでした。

放送後の本庄の沈黙の時間も、次のビジネスの準備に過ぎなかったのです。

それから三島は本庄に関わることは頭から追い出しました。

そしてこれからも自分の信じるクイズをしていきます。

「クイズとは何でしょう」という問いに100%の自身で答えられます。

「クイズとは人生である。」

君のクイズ を読んだ読書感想

クイズ番組で、一文字も聞かずに正解してしまう、という先が気になって仕方のない始まりに、本をめくる手が止まりませんでした。

三島の今までの経験がクイズの答えに結びついていく過程は、読んでいてとても面白く、まさに人生そのものがクイズになるのだなと感じることが出来ました。

最初は本庄のヤラセの可能性を疑っていた三島も、調べたり考えたりするうちに、ヤラセではないのではと思うようになり、本庄の事を認める事が出来そうになった時、最終的には違う形で裏切られてしまい、読みながらどんどん感情を揺さぶられました。

みんなが同じ気持ちでクイズに臨む事は難しいのかもしれませんが、三島には最後まで自分のクイズをして欲しいと思いました。

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