「フォルトゥナの瞳」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|百田尚樹

フォルトゥナの瞳

著者:百田尚樹 2015年12月に新潮社から出版

フォルトゥナの瞳の主要登場人物

木山 慎一郎(きやま しんいちろう)
主人公。自動車のコーディングをしています。ある日突然、「他人の死の運命」を視る能力を手に入れます。

桐生 葵(きりう あおい)
携帯ショップの店員で、後に慎一郎の恋人になる女性です。

遠藤(えんどう)
慎一郎が勤める工場の社長。慎一郎の恩人でもあります。

黒川(くろかわ)
医師。慎一郎を同じ特殊能力を持っています。

フォルトゥナの瞳 の簡単なあらすじ

家族を失い、1人で生きていた慎一郎は突如「死が近い人間が透けて見える」能力を手に入れます。

慎一郎は能力を活かし、死にゆく人を救っていくのですが、自分の寿命が削られる、という代償があることが分かります。

命を救った葵と恋仲になり、幸せに過ごしている所、近々大事故が起こり、大勢の命が失われることを知ります。

他人を救えば自分が死ぬと分かっていながら、自らを犠牲にして事故を阻止することを選んだのでした。

フォルトゥナの瞳 の起承転結

【起】フォルトゥナの瞳 のあらすじ①

孤独

木山慎一郎は、幼い頃に火事で家族を失い、ずっと1人で生きてきました。

定時制高校を出て就職した会社が倒産してフリーターになり、コンビニで働いていましたがたまたま通った自動車のコーディング工場で新車同様に磨かれた車に感銘を受け、そのまま社長の遠藤に雇ってもらうことになります。

先輩たちにいじめられながらも、真面目に仕事に打ち込み、社長からも腕を認められるようになっていました。

やりがいのある仕事に出逢えて、ようやく人生にも希望の光が見えてきたところでした。

ただ、生活は平凡で、彼女もおらず、ひたすら工場と自宅を往復するだけの毎日を送っていました。

そんなある日突然、出勤する途中の電車で、手が透けている人間を見かけます。

見間違いだろう、マジックか何かだろう、そう思ったのですがそれから立て続けに、手が透けている人、腕から透けている人など、体の一部分が透けている人間を見かけるようになります。

何だろう、自分はおかしくなってしまったのだろうか、と思い悩みます。

【承】フォルトゥナの瞳 のあらすじ②

能力の正体

初めに見かけたのは手が透けているだけの人でしたが、だんだん腕が透けている人、さらには体全体が透けている人まで見かけるようになります。

まるで透明人間です。

体全体が透けている人を追いかけると、直後に事故に遭って死亡してしまいました。

そんなことが続き、もしかして、死が近づいた人間の体が透けて見えるのでは…と慎一郎は気が付きます。

人の死の前兆が見えるということは、危険を回避しその人を救うこともできます。

怪しまれながらも、声をかけたり、誘導したりと、とにかく運命を変えるように動きました。

透けている人を見かけるたびに、この能力を使って何人もの命を救います。

戸惑いながらも、素晴らしい能力を手に入れたのではないか、と喜んでいた慎一郎ですが、だんだんと自分自身にも不調が出てきます。

もっと前から同じ能力を持つ人間、医師の黒川に出逢い、話を聞いていくうちに「他人の死の運命を変えれば、自分の寿命も削られる」ことを知ります。

【転】フォルトゥナの瞳 のあらすじ③

選択

以前、能力を使って命を救った、携帯ショップの店員である葵と親しくなり、ついに恋人関係になりました。

人生で初めての恋人ができて日々楽しく、幸せに過ごしますが、やはり透けた人間のことは気になります。

しかし、これ以上この能力を使って人の運命を変えてしまうと自分も命を落としてしまうことを知ったので、見て見ぬふりをするしかありません。

見殺しにしているようで、苦しくてたまりません。

そんな中、近い場所で、あまりにも大勢の人の手が透けているのを見かけるようになります。

電車に乗っている人、公園で遊んでいる園児…皆同じ透け具合だったためこれは近いうちに大規模な「災害」が起きるに違いない、そう確信します。

調べていくと、どうやらクリスマスイブの日に電車事故が起きるのではないか、と予測できました。

多くの命を救いたい、でも、そうすると「代償」で自分が命を落としてしまう…そんな葛藤をする中、葵と一晩を共に過ごし、心を決めるのでした。

【結】フォルトゥナの瞳 のあらすじ④

真実

事故が起きるはずの朝、慎一郎は電車を止めるため線路に入ってワイヤーロックで自分の体をレールにくくりつけます。

こうすることで事故は起きなくなる、多くの命を救うことが出来る、苦渋の決断でした。

慎一郎の狙い通り、通りすがった人々に取り押さえられたものの予定の電車は来られず、事故が起きることはありませんでした。

しかし慎一郎は、ついに能力の「代償」で命を落としてしまいます。

葵は、新聞でその事実を知りました。

名前は書いてありませんが、線路に侵入して電車を止めた男が慎一郎だと確信しました。

何故なら葵は、慎一郎と同じ能力、同じ「目」を持っていたのです。

慎一郎の様子がしばらくおかしかったこと、そして何より最後に会ったあの夜、葵を抱いていた慎一郎の体が、すーっと透けていくのが見えたので彼は自分を犠牲にする決断をしたのだと、知ってしまったのです。

ただの頭のおかしい男だと世間に思われて亡くなった慎一郎が、実は大勢の命を救った英雄であること、その真実を葵だけは知っているのでした。

フォルトゥナの瞳 を読んだ読書感想

人間は1日に9000回もの選択をすると言われています。

大きな選択をする時は、誰でも迷うと思います。

「死を目前にした人間が透けてみる」という特殊な能力を手に入れたら、どのような選択をするでしょうか。

現実的ではない設定ですが、物語にのめり込んでしまって、自分だったらどうするだろう、と感情移入しながら読めました。

あらすじを読んだ時には、ありふれたヒーロー像、きっと人を救って「良い話」で終わるんだろうな、などと安易に考えてしまっていました。

登場人物たちのさまざまな葛藤が描かれていて、単純な「良い話」ではなく興味深かったです。

エピローグで葵も同じ能力を持っていたことが分かり、涙が出そうなほど苦しかったです。

葵の視点で書かれるのはエピローグだけなので、もう一度葵の気持ちになって読み返してみたくなりました。

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