「ラジオラジオラジオ!」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|加藤千恵

ラジオラジオラジオ! 単行本 – 2016/6/18 加藤 千恵 (著)

著者:加藤千恵 2016年6月に河出書房新社から出版

ラジオラジオラジオ!の主要登場人物

島崎華菜(しまざきかな)
ヒロイン。地方の高校に通う17歳。夢はテレビ局のプロデューサーになること。

智香(ともか)
華菜のクラスメート。ふたつ下の弟と4つ下の妹の面倒を見ながら塾通いを続ける。多くを受け入れる包容力がある。

海老沢(えびさわ)
建築関係の仕事に携わりながらラジオ番組の制作で地域を盛り上げる。リスナーとの距離を大切にする。

なつね(なつね)
華菜の友人。27歳の書店員。以前は小説を書いて応募していた。化粧にもルックスを磨くことにも興味がない。

ラジオラジオラジオ! の簡単なあらすじ

女子高生の島崎華菜はクラスでも1番に仲の良い智香と、毎週日曜日にラジオ番組のパーソナリティーをしています。

ふたりの間が気まずくなったきっかけは、東京への進学と就職を考えている華菜と地元に残ることを決めた智香とで微妙に温度差があったからです。

受験勉強に専念するために智香はパーソナリティーを降板しますが、華菜はひとりで番組を続けていくのでした。

ラジオラジオラジオ! の起承転結

【起】ラジオラジオラジオ! のあらすじ①

青春の30分を録音

FMフルスで毎週日曜日の午後8時から始まる「カナアンドトモカの、ラジオラジオラジオ!」は、2001年の9月16日に22回目の放送を迎えました。

パーソナリティーは同じ普通科の学校に通っている島崎華菜と智香で、3年生に進級する前の春休みにオーディションで採用されています。

ディレクターのは海老沢は名詞の肩書こそ「取締役」になっていましたが、ほとんどボランティアでFMフルスを手伝っているようなものです。

この日も海老沢はオフィスに顔を出していないために、選曲からフリートークに録音までとすべてふたりだけでこなさなければなりません。

自分たちの声と好きな音楽で埋めて30分にまとめたカセットテープを、いつものように海老沢のデスクの上に置いておきました。

収録が終わった後には欠かさず今週の反省と来週分の打ち合わせをしていましたが、2学期に入ってからは智香が塾で忙しいためにビルの前の自転車置き場で別れます。

智香が志望しているのは地元の国立の教育大学で、華菜が目指すのは東京の4年生の市立大学です。

【承】ラジオラジオラジオ! のあらすじ②

電波の向こうにつながる東京への道

帰宅した華菜が部屋のパソコンを起動すると、貴重なリスナーのひとりであるなつねからメールが届いていました。

数カ月前に「ラジオラジオラジオ!」を聞いたなつねが、ホームページの掲示板に感想を書き込んでくれたのがきっかけで交流が続いています。

ディスプレイ越しにやり取りするだけでなく、近頃では放課後になつねがひとり暮らしをしているアパートまで遊びに行くほどの仲良しです。

いつもノーメークで服装もTシャツかジーンズと飾り気のないなつねとは、音楽や読書の趣味などで話が合って10歳年齢が離れていることを感じません。

小説家になるために上京して文芸賞の最終選考にまで残ったというなつねでしたが、いま現在では地元の書店でビジネス書のコーナーを担当しています。

華菜がFMフルスで番組をやっているのは、テレビ局に就職するための足掛かりになると考えているからです。

高校を卒業して一度東京に出たら、華菜はこの町には戻ってくるつもりはありません。

【転】ラジオラジオラジオ! のあらすじ③

離れていく相方とリスナー

受験生として勉強に集中するためにラジオを休みたいと智香が言い出したのは、9月23日の23回目の収録の真っ最中でした。

録音用のオープンリールを止めて問い詰めた華菜に対しても、智香は「ごめん」と繰り返すばかりです。

オフィスかブースに入ってきた海老沢の提案で、取り敢えずは1カ月分で4回の収録を華菜ひとりで回してみることにします。

それ以来学校で会っても智香とは何となく華菜のことを避けているようで、復帰の時期は決まっていません。

9月30日の放送から「カナの、ラジオラジオラジオ!」とタイトルを変えた番組は、録音ボタンを押し忘れるという初歩的なミスから始まって散々な結果でした。

ひとりでは30分の尺が持たない華菜はアシスタントとしてクラスの友だちを誘ってみましたが、いずれも部活動や恋愛に忙しいらしくやんわりと断れてしまいます。

共演者として声を掛けみたなつねも、もうすぐ3年ほどお付き合いをしている彼氏と結婚して引っ越すそうです。

【結】ラジオラジオラジオ! のあらすじ④

未来へのチューニング

「ラジオラジオラジオ!」の収録日は木曜日でしたが、華菜は月曜日の放課後に海老沢から呼び出しを受けました。

前回の放送をチェックしていた海老沢は、華菜が自分の好きなテレビドラマの感想を延々と述べていたことを指摘します。

ラジオはテレビの代用品ではなく劣っている訳でもない、受け手との距離が近いからこそできることがあるはず。

海老沢のアドバイスでようやく目が覚めた華菜は、思いきって収録ではなく番組初となる生放送を提案してみました。

10月21日の日曜日午後8時、ラジオブースの中には華菜がひとりで座っていてガラスの向こうにはもしものアクシデントに備えて海老沢が待機しています。

この番組の初回放送の時に智香と相談して選んだオープニングテーマ、aikoの「ボーイフレンド」は変わりません。

近いうちに華菜も智香も高校生ではなくなりますが、この曲を聞いたなら何歳になってもどこに居てもこのブースの風景とふたりの友情を思い出せるはずです。

ラジオラジオラジオ! を読んだ読書感想

人生のうちで最もみずみずしい10代の時間を、ラジオ番組に注ぎ込む女子高校生たちの姿が美しいです。

オープニングはaikoの「ボーイフレンド」でエンディングテーマにMr.Childrenの「口笛」を持ってくるチョイスは、1980年代生まれには共感できるでしょう。

都会やテレビ業界への漠然とした憧れを抱いて止まない夢見がちな島崎華菜と、地に足を着けた堅実派の智香。

ふたりのベクトルが少しずつすれ違っていく過程も繊細なタッチで描かれていて、それぞれに感情を移入できました。

別々の道のりを歩んでいく華菜と智香の、変わらぬお互いへの思いが伝わってくるラストも感動的でした。

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