「回転木馬のデッド・ヒート」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|村上春樹

「回転木馬のデッド・ヒート」

【ネタバレ有り】回転木馬のデッド・ヒート のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:村上春樹 1985年10月に講談社から出版

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回転木馬のデッド・ヒートの主要登場人物

彼(かれ)
教材販売を手掛ける会社に勤める三十五歳・既婚者。成功し、同年代の誰よりも年収は高く、感じの良い妻と乃木坂の3LDKのマンションで不自由ない暮らしをしている。大学まで水泳の選手をしており実家も裕福。

僕(ぼく)
村上春樹。彼とはスポーツクラブのプールで出会い、世間話する仲になる。

妻(つま)
彼の五つ年下。育ちが良く誠実で、がつがつしているところがなく素直な性格。特別美人ではないが、人目をひく程度に美しく、綺麗な歯並びをしている。第一印象はそれほどでもないが、回を重ねるほど魅力的になるタイプ。

彼女(かのじょ)
彼の二十代の浮気相手。クラシックコンサートで席が隣同士だったことをきっかけに親しくなり、男女の関係に発展するも、頻繁に会うことはない。

父親(ちちおや)
中堅クラスの不動産業者だったが、中央線沿線の貸しビル業に進出し、高度経済成長期にはかなりの成功を収める。

回転木馬のデッド・ヒート の簡単なあらすじ

彼との出会いは、会員スポーツクラブのプールサイドでした。大学まで水泳選手だった彼からクロールの腕振り矯正をしてもらったことがきっかけで、世間話する間柄になります。僕が小説家を生業をしていると知った彼は『平凡な話で退屈かもしれないけど……』と前置きしてから、彼自身の人生について語り始めます。三十代にして地位もお金も愛する妻も手に入れ、加えて浮気相手までいる彼の誰にも語られることがなかった心の内。僕は彼の話にじっと耳を傾けます。

回転木馬のデッド・ヒート の起承転結

【起】回転木馬のデッド・ヒート のあらすじ①

プールサイドにて

彼との出会いは、会員スポーツクラブのプールサイドでした。

そこのプールは、カフェテラスがあり、ひと泳ぎした後にビールで喉を潤すことができます。

片側の壁はガラス張りになっていて、眼下にプールの全景が見下ろせる造りになっており、プールの天井には天窓がついていて、太陽光が射し込みました。

趣味で泳いでる僕とは違い、彼は大学生まで水泳の選手をしていたほど本格的で、三十五歳とは思えないくらい若々しく引き締まった体をしていました。

彼にクロールの腕振りを矯正してもらったことをきっかけに、二人は世間話をする仲になります。

お互いの仕事の話になり、僕が小説家をしていると打ち明けると、彼は考えるように黙り込み、話を聞いてもらえないだろうかと持ち掛けます。

『どちらかというと平凡な話だと思うし、君はつまらないと思うかもしれない。

でもどうしても誰かに聞いてもらいたいとずっと思っていたんだ。

自分一人で抱え込んでると、いつまでたっても納得できそうにないんでね』と彼は前置きし、自身の人生について語ろうとします。

彼はつまらない話をくどくどして相手を迷惑がらせるようなタイプには見えなかったので、僕は彼の申し出に快く応じます。

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【承】回転木馬のデッド・ヒート のあらすじ②

折り返し

彼は三十五歳でありながら、教材販売を手掛ける会社の重役的ポジションにおさまり、年収は同年代の誰よりも高く、すでに結婚もして乃木坂にある3LDKのマンションに妻と二人で暮らしています。

大学時代まで水泳の選手をしており、彼の人生観をきめる根幹にもなっていました。

水泳は折り返しすることで、残り何メートルかを目安にします。

この区切りの感覚は10年近く水泳のトップ選手だった彼に、多大な影響を与えていました。

三十五歳の誕生日を迎えた朝、彼は人生の折り返しを曲がったこと確認します。

人生を七十年と設定し、三十五歳を折り返し地点と決めたのです。

これはただ彼の中で決めているに過ぎず、寿命がはっきり七十歳と判明しているわけではありません。

実際は八十歳まで生きるかもしれませんし、百歳かもしれません。

それでも彼は、七十歳をゴールと決め。

その折り返しを三十五歳に設定することで、自分が今置かれている位置というものを正確に把握しておくことが、人生においても重要だと考えていました。

【転】回転木馬のデッド・ヒート のあらすじ③

すべて手に入れた男

彼のこれまでの人生は順風満帆と呼べるくらい不自由ない生活でした。

東京の郊外で生まれ、不動産業で成功した父親をもち、私立の一流中学から大学までエスカレーター式に進学し、水泳に打ち込みながら成績も優秀でした。

週五日はプールで泳ぎ、残りの二日はデートや遊びに費やしました。

友人も多く、デートする相手に困ることもなく、大学を卒業してからは、教材販売を扱う小さな会社に就職しました。

一流の大企業を選ばなかったことに周囲の人間は唖然としましたが、三年の間、営業マンとして日本中の中学校と高校を巡り、現場の声を吸い取り、どんなハード、ソフトが必要とされているのか調査します。

そして、新しい教材についての企画書を書きあげ、それは大成功を収めます。

すべて彼の目論見通りの結果でした。

新しい試みが官僚的な会議の連続で潰されるような大会社ではこの企画は破綻していたかもしれません。

二十九歳で五つ年下の女性と結婚。

妻はがつがつしたところがない育ちの良い女性で、派手は顔立ちではないですが、人目をひく程度には美しく、初対面ではそうでもないけれど、回を重ねるほど魅力が増すタイプです。

加えて、彼には浮気相手もおり、クラシックコンサートで隣同士になったことがきっかけで親しくなり、年数回会う程度の危険を冒さない浮気は露見することはありません。

三十五歳にして、やりがいのある仕事と高い年収、幸せな家庭と若い恋人を手に入れました。

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【結】回転木馬のデッド・ヒート のあらすじ④

余生

折り返し前半の人生で、仕事に年収に家庭に恋人、頑丈な体まで手に入れた彼は、これ以上何を求めればいいのかわからなくなっていました。

休日、彼がぼんやりとの家の天井を睨んでいる時に、ビリージョエルの曲が流れてきます。

妻は少し離れたところでアイロンをかけています。

唐突に彼の両目から涙が溢れだし、止まらなくなります。

自分がなんで泣いているのか彼にはわかりません。

10分後、妻がアイロンをかけ終え、隣に来た時にはすでに涙は渇き、何事もなかったように時間は流れていました。

そして二人は銀座の映画館に出掛け、喫茶店で寛ぎ、レコード店をまわります。

ビリージョエルのLPを買う旦那に妻は不思議そうな顔をしますが、彼は笑うだけで、妻にとくに説明もしません。

一通り話終わると、彼はウェイトレスを呼び、追加のビールを注文しました。

そして僕に向き直り、この話は面白いと思うか、それとも退屈か正直に答えてほしいと尋ねます。

『面白い要素を含んだ話だと思うな』と僕は注意深く慎重に返事をしますが、彼は、自分にはこの話のどこが面白いのかさっぱりわからないと言います。

『僕はこの派話の中心にあるある種のおかしみとでもいうべきものがつかめないんだ。

そしてそれがもしうまくつかめたとしたら、僕が僕を取り囲んでいる状況をもっときちんと理解することができるような気がするんだ』と。

この話を原稿用紙に書いてみたら面白味がもっとはっきりすると思うと僕は言いますが、それはつまり発表することになってしまいます。

実在の人物もモデルに書いた場合、大体がばれてしまうことになるので僕はそれでもいいのかいと心配しますが、彼は構わないと答えます。

誰かに嘘をつくのは本当はすきじゃないんだと彼は言います。

『誰かをだましたり利用したりして残りの人生を生きていたくはないんだ』と。

回転木馬のデッド・ヒート を読んだ読書感想

作者の村上春樹が、実在する人物たちとのかかわりを小説にした本作。

作者は前書きで『ここに収められた文章を小説と呼ぶことについて、僕にはいささかの抵抗がある。

』と言っています。

村上作品とは趣が異なる作品なのは間違いなく、ちゃんとした読み物として完成しています。

登場する人物たちが語る物語が面白いのか、聞き手の村上春樹の腕により面白くなっているのか、あるいは両方なのか。

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