「ふしぎな図書館」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|村上春樹

ふしぎな図書館(村上春樹)

【ネタバレ有り】ふしぎな図書館 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:村上春樹 2005年2月に講談社から出版

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ふしぎな図書館の主要登場人物

ぼく(ぼく)
物語の語り手。母親と2人暮らしの学生。

老人(ろうじん)
図書館の地下に生息して利用者の知識を吸い取る。

羊男(ひつじおとこ)
ぼくの世話係。ドーナッツを作るのが得意。

女の子(おんなのこ)
ぼくの世話係。羊男には見えない。

ふしぎな図書館 の簡単なあらすじ

学校帰りに図書館に立ち寄って本を返しにきた「ぼく」は、新たな本を借りるつもりが怪しげな老人に地下の牢獄に閉じ込められてしまいました。ここから出してもらうためには、3冊の本を丸暗記して老人の試験に合格するしかありません。ただひたすら読書に励んでいたぼくは、世話係の羊男から恐るべき真実を明かされることになるのでした。

ふしぎな図書館 の起承転結

【起】ふしぎな図書館 のあらすじ①

図書館に本を借りに来た少年と謎めいた老人

「潜水艦の作り方」と「ある羊飼いの回想」という2冊の借りていた本を返すために、ぼくは学校の帰り道に近所の市立図書館のカウンターに行きました。

別の本を探していたぼくは返却手続きを済ませた後に、長い階段を降りた先にある107号室という部屋に向かいます。

出迎えてくれたのは古い机の後ろに立っている、分厚いレンズのメガネを掛けた小柄な老人です。

オスマントルコの税金の集め方について興味があって調べていたぼくでしたが、老人はいとも容易く3冊の関連書籍を持ってきてくれました。

さっそく本を持って帰ろうとしましたが、「貸し出し禁止」と書かれた赤いラベルが貼ってあるために館内で読んでいくしかありません。

老人の後に従って、ぼくは分かれ道が幾つも続いている迷路のような廊下を歩いていきます。

辿り着いた先は「閲覧室」という札が掛けられている、大きな鉄の扉に囲まれている部屋です。

そこは明らかに本を読む部屋ではなく、罪人を閉じ込める牢屋でした。

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【承】ふしぎな図書館 のあらすじ②

羊男のおもてなしと老人の企み

牢屋に入れられたぼくは3冊の本を読んで丸暗記して、1か月後に老人が出す試験に合格することを強要されてしまいました。

牢の中には簡単なベッドと机に、洗面台と水洗便器があるばかりで余り清潔ではありません。

ぼくの身の回りの世話をしてくれるのは、羊の毛皮をすっぽりと被った小さな男です。

老人がからは「羊男」と呼ばれていて、何かと柳の枝で折檻されています。

1日3度の食事を持ってきてくれて、おやつには手作りのドーナッツまでご馳走してくれました。

必死で勉強に励んでいたぼくでしたが、家で待っている母親とムクドリのことが心配で堪りません。

思い余ったぼくが羊男に尋ねてみると、老人の恐るべき正体について打ち明け始めます。

1か月かけて知識を詰め込ませた後にノコギリで頭を真っ二つにして知識を吸い取ってしまうこと、囚人に逃げられた場合は羊男が毛虫の壺に閉じ込められてしまうこと。

ぼくは何とかふたりとも助かる妙案を考えるのでした。

【転】ふしぎな図書館 のあらすじ③

ぼくと羊男と女の子の世界が重なる時

ある日の夕食を運んできたのは羊男ではなく、ぼくと同い年かと思われる綺麗な女の子でした。

彼女は幼い頃に声帯をつぶされてしまったために、身振り手振りでコミュニケーションを取ります。

次の日に羊男に女の子のことを聞いてきましたが、まるで心当たりがありません。

これまで羊男と女の子は、それぞれが全く別の世界で生きてきたようです。

ぼくの存在を通すことによって、ふたりは初めてお互いを認識できるようになっていきます。

以前から羊男は図書館の地下から抜け出して、自分だけのドーナツショップをオープンすることを夢見ていました。

新月の日の夜には老人が深い眠りにつくために、3人が脱出計画を決行するのはその時しかありません。

後からついて来るという女の子を残して、ぼくと羊男は持ち出した鍵で牢屋の扉を開けます。

迷路のような廊下を音を立てないように歩いてようやく微かな光の零れるドアを開けると、そこには先回りした老人が立っていました。

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【結】ふしぎな図書館 のあらすじ④

図書館の夜明けと共に全てが消えていく

老人の横には巨大な黒い犬がいて、ぼくが自宅で飼っているはずのムクドリを鋭い牙で咥えていました。

追い詰められたぼくと羊男を救うために、ムクドリは自らの身体を巨大化して犬と老人を押しつぶします。

ムクドリはぼくたちに逃げるように促しますが、その声は紛れもなく女の子のものです。

ぼくは羊男の手を握りしめたまま、振り返ることなく部屋を飛び出しました。

朝早くの図書館のホールには誰もいなく、気が付くと羊男の姿もありません。

ぼくは家に帰って、母が作ってくれた朝ご飯を黙って食べることにします。

ムクドリは既に居なくなっていて、もぬけの殻となった鳥かごが残されているだけです。

それ以降ぼくは、市立図書館を訪れることはありません。

迷路の奥底にある地下牢みたいな部屋、羊男が粉を捏ねて作る揚げたてのドーナツ、口のきけない美しい女の子。

間もなく母が原因不明の病気で亡くなり独りになったぼくは、新月の夜になるとあの図書館のことを思い出すのでした。

ふしぎな図書館 を読んだ読書感想

一見するとごく普通の市立図書館の地下深くに隠されている、巨大な迷路と恐るべき陰謀がスリリングでした。

知識を無理矢理に詰め込ませた後に脳みそを吸い込んでしまうグロテスクな老人にも、不思議なユーモアを感じてしまいます。

次から次へと降りかかってくる不条理な出来事を受け入れながら、知恵と勇気を振り絞って立ち向かっていく主人公の少年の活躍が痛快です。

羊男が手作りにこだわり抜いた美味しそうなドーナツや、美しくも何処か儚げなイメージの女の子の姿が心に残ります。

冒険の後に訪れるラストの静けさには、少年が大人になっていく物悲しさがありました。

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