「あおい」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|西加奈子

あおい 西加奈子

【ネタバレ有り】あおい のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:西加奈子 2004年5月に小学館から出版

あおいの主要登場人物

さっちゃん(さっちゃん)
二十七歳のフリーター。スナックで週四日アルバイトをしている。前にアルバイトをしていた映画の配給会社で、二歳上で社員の雪ちゃんから目をかけてもらい、普通のアルバイト以上の仕事を任せてもらうも、雪ちゃんが好意を寄せていたカザマ君を寝取る。現在、カザマ君と付き合って四か月。

カザマ君(かざまくん)
二十四歳の大学生。一年浪人し、二回留年している。映画館でアルバイトをしており、雪ちゃんに誘われた食事会で、さっちゃんと出会いそのまま一緒に暮らすことに。掴みどころのない性格。

みいちゃん(みいちゃん)
さっちゃんが働くスナック近くの本屋で働いている大柄な女の子。小説を書くことを目標にしている。

森さん(もりさん)
さっちゃんが勤めるスナックのお客さん。大阪にいながら標準語を使い、学者のような雰囲気。さっちゃんと店外で食事するようになる。

ママ(まま)
さっちゃんが勤めるスナックのママ。意地の悪い京女で、常に自分がナンバーワンでいるために、お客さんとお店の女の子が店外で会うのを禁止している。

雪ちゃん(ゆきちゃん)
さっちゃんが前に働いていた映画配給会社の広報。美人で仕事もでき人気があったが、カザマ君をさっちゃんに横取りされる。

あおい の簡単なあらすじ

二十七歳、学歴も特技も美貌もないフリーターのさっちゃんは、アルバイト先で親しくなった雪ちゃんの恋愛相談に乗っているうちに、相手の大学生・カザマ君と関係を持ってしまいます。結局、アルバイト先だった映画配給会社を辞め、現在スナックで週四日働いています。カザマ君とは付き合って四か月で、将来のビジョンも何も考えていない二人ですが、それなりに楽しく暮らしていました。しかし、予定外に妊娠していることがわかり……。

あおい の起承転結

【起】あおい のあらすじ①

出会い

二十七歳のさっちゃんは週四日スナックでアルバイトしています。

二十四歳の大学生・カザマ君とは四か月前に知り合い、その日のうちに関係を持った二人は、なし崩し的に付き合うことに。

もともとカザマ君は、さっちゃんの仕事仲間の雪ちゃんが好意を寄せていた相手でした。

映画配給会社の広報部で社員としてバリバリ働く雪ちゃんは美人で仕事ができ、誰からも好かれる女性で、単調な仕事を黙々をこなすさっちゃんに声を掛け、スタッフミーティングで意見する場を設けてくれたり、責任のある仕事を任せてくれたりしました。

さっちゃんにとっていわば恩人のような雪ちゃんから恋愛相談をされたさっちゃんは親身に相談にのり、二人きりじゃ恥ずかしいという雪ちゃんの為に、三人で食事会する段取りまでしたのですが、結局、その日の夜のうちにカザマ君を家に連れて帰る展開に。

カザマ君が持つ独特な雰囲気に飲み込まれたさっちゃんは、自制心がきかないほど、強くカザマ君を求めてしまったのでした。

結果として雪ちゃんを裏切ることになったさっちゃんは、そのままアルバイトを辞め、現在はカザマ君と同棲しながら、スナックで生活費を稼いでいます。

カザマ君はまだ学生の身で、さっちゃんを養うことはできませんし、そもそも将来養う気があるのかも怪しいくらい、その日暮らしな生活を送っています。

【承】あおい のあらすじ②

森さん

さっちゃんは、向上心や野心を持ち合わせておらず、常に楽な方を求めてこれまでの人生歩んできました。

今働いているスナックは、ママの方針で店外でお客さんと会うのは禁止されていて、水商売が向いていないさっちゃんにとってそれはありがたいことでした。

お店で一人留守番していると、月に一度か二度ふらりとやって来る森さんが飲みに訪れます。

三十過ぎで理知的な雰囲気な森さんを、ママは『先生』と呼び、普段は意地の悪い京女のママが、森さんの前ではすっかり少女のようにはしゃいでいるのを見ているさっちゃんは、外で食事しているママに急いで知らせてあげなければと電話をとりますが、森さんの勧めでビールをいただくことになり、それから三十分ほど二人で話をします。

翌日もお店に来た森さん。

今度、二人で食事をしようと誘われます。

ママにバレたら怒られることを承知で、さっちゃんは森さんと食事に出掛けます。

食事を終え、風をきりながら自転車を漕ぐ帰り道、なんて自分は自由なんだと誇らしい気持ちになります。

森さんと二人で食事したことは、カザマ君にもママにも内緒です。

【転】あおい のあらすじ③

青天の霹靂

さっちゃんに、みいちゃんという女友達ができました。

スナック近くの大型本屋で働いている大柄な女性です。

いつも風変りなTシャツを着ているみいちゃんに興味を持ち、お茶に誘ったのです。

みいちゃんは、本屋でアルバイトをしながら、小説家になることを目標にしています。

とは言ってもまだ一本も書いたことはないですが。

カロリーを摂取しまくるみいちゃんに、痩せる気はないのかと聞いたことがありました。

みいちゃんは『書き始めたら痩せる』と答えます。

小説を書くということは、自分を切り売りするものだからと。

さっちゃんとみいちゃんは、いろいろなことを話す仲になります。

隙をみてはカザマ君の携帯を盗み見、スナックで気ままに働きつつ、みいちゃんと気晴らしにお喋りする日々を送っていたさっちゃんですが、ある日急な吐き気に襲われます。

市販の妊娠検査薬で調べてみると、結果は陽性。

予期せぬ事態に一人パニックになるさっちゃん。

貯金は無く、カザマ君にも打ち明けられず、スナックに行く気にもならず、アルバイトを無断欠勤したさっちゃんは、事の重大さに一人抱えることもできず、みいちゃんに妊娠したこを打ち明けます。

相談され困り果てるみいちゃん。

携帯にはママからの着信と、森さんから連絡がきていました。

【結】あおい のあらすじ④

たちあおい

重たい気持ちを引きずりながら、後日スナックに出勤したさっちゃんは、ママから鬼の形相で詰め寄られます。

無断欠勤したことを怒っているのだと思っていたさっちゃんでしたが、ママは森さんと二人で食事したことに腹を立てていました。

森さんがママに話してしまったようです。

将来の展望もみえず、やけを起こしたさっちゃんは、ママと口論になりそのままお店を辞めます。

そして、思い付きでリゾートバイトに申込みます。

一旦カザマ君と離れようと考えたさっちゃんですが、いざ現地に着くと急に嫌気がさし、その日の夜にペンションに置手紙をし、帰ることを試みます。

深夜ひっそりと静かな山道を一人黙々と歩くさっちゃん。

ふいに荷物を詰めていたキャリーバッグの車輪が外れ、尻もちをつきます。

そのまま地面に横たわり、草花に囲まれながら何も考えないよう努めていると、植物の前に幼い子供の字で「たちあおい」と書かれた札を見つけます。

どっと涙がこみあげ、お腹の中の赤ちゃんのことを真剣に考えます。

そして、誰に何と言われようと産む決意をします。

カザマ君の待つ家に帰り、赤ちゃんのことを打ち明けたさっちゃん。

名前は早々に「葵」と決めました。

あおい を読んだ読書感想

ゆるゆるとした生活を好む登場人物たちが、今の時代を生きる若者たちの姿と重なる『あおい』は、現在人気作家となった西加奈子さんのデビュー作です。

厳密に言うと、今よりも少し前のゆとり世代と呼ばれたアラサー年代の人たちの、若かりし頃の生活の雰囲気です。

若者特有のちょっとなめた感じが嫌味なく良く出ているなと感心します。

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