「神の守り人 来訪編」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|上橋菜穂子

「神の守り人 来訪編」

【ネタバレ有り】神の守り人 来訪編 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:上橋菜穂子 2003年2月に偕成社から出版

神の守り人 来訪編の主要登場人物

バルサ(ばるさ)
守り人シリーズの主人公。短槍使いのバルサとして有名な女用心棒。

タンダ(たんだ)
薬草師で呪術師トロガイの弟子。バルサとは幼なじみで互いに信頼しあっている。

アスラ(あすら)
ロタ王国に住むタルの民の娘。タルハマヤの力を秘めた異能者。

イーサン(いーさん)
ロタ王の弟で、改革派であるが故に北部の貧しい民からは慕われるものの保守的な南部の富裕層からは疎まれている。かつてアスラの母親トリーシアと禁断の恋に落ちた過去がある。

シハナ(しはな)
イーサンに使えるカシャルの頭領の娘。天才的な知略を誇り、呪術や武術にも長けている。父親からも恐れられている。

神の守り人 来訪編 の簡単なあらすじ

女用心棒バルサと薬草師タンダは、都西街道の宿場町で開かれる草市へとやって来ます。タンダが薬の取引をしている間、手持ち無沙汰なバルサは奴隷にされた子供を見かけます。宿でタンダは知り合いのロタの呪術師スファルと会い共に食事をしますが、同じ宿に奴隷商人もおりバルサは昼間見かけた子供が気になります。二人の子供のうち妹の方はタルの民の異能者であり、兄が傷つけられると怒りに我を忘れて商人を殺します。スファルはこの異能者を始末する密命を受けており、二人を連れ去ろうとしますが、バルサは妹の方だけでも助けようとします。

神の守り人 来訪編 の起承転結

【起】神の守り人 来訪編 のあらすじ①

奴隷商人とタルの民の子供

バルサとタンダは青霧山脈の麓にあるタンダの家からは10日ほどの距離にある、都西街道の宿場町へとやって来ました。

薬草師であるタンダは毎年この宿場町で開かれる草市を訪れて薬を売買しています。

バルサは付き添いで来ただけなのでブラブラしていると、奴隷商人に連れられた幼い兄妹が目に留まります。

あまり珍しいことでは無いものの、自身の幼い頃に掛けられた蔑みの言葉と同じ言葉を奴隷商人が発した為、何となく気に食いません。

タンダと共に宿で夕食を取っているとタンダの知り合いであるロタの呪術師スファルが同じ宿に泊まっていました。

タンダとスファルが盛り上がっている中、先程見かけた奴隷商人も同じ宿にいたのを見つけ、バルサは後をつけます。

奴隷商人は買い手に子供を売ろうとした所、買い手の男が兄チキサに手を出した為、妹のアスラは怒り目に見えない恐ろしいものを呼び出します。

その何かは奴隷商人と買い手を殺し、近くで様子を探っていたバルサにも襲い掛かりますが、バルサは気配だけを頼りに攻撃を避けます。

チキサが身を呈してアスラを止めたことで攻撃は止まりますが、バルサとチキサも怪我を負い、翌日から寝込むことになります。

バルサは3日程で動けるようになり、チキサも怪我は軽かったですが、アスラはなかなか目を覚ましません。

タンダが呪術で様子を見ようとしたところ、何か恐ろしい存在が見えました。

実はアスラはタルの民の異能者であり、その身に神タルハマヤを呼び出す力を宿していました。

バルサはスファルと話をして単なる呪術師でなく何か裏がありそうだと気づいていましたが、スファルはロタ王のカシャルと呼ばれる隠密部隊の長でした。

スファルは危険な力を持つアスラを殺す命令を受けており、バルサとタンダに気付かれずに作戦を進めようと密かに動いていました。

【承】神の守り人 来訪編 のあらすじ②

バルサの逃亡

スファルは娘のシハナ、部下のマクルとカッハルを宿に呼び、真夜中のうちにチキサとアスラを連れ出そうとします。

しかし、バルサは勘づいておりタンダには手を出さない方が良いと言われますが無視することが出来ずに助けに向かいます。

シハナがアスラを体に結びつけて馬に乗ろうとしていた所、バルサが風のように素早く近づいてきて縄を切りアスラが地面に落ちます。

バルサはシハナが体勢を崩した所で蹴りを見舞い気絶させ、アスラを体に結びつけてシハナの馬を奪って逃げます。

呪術により邪魔をされますが、タンダが呪術を破ってバルサを助けます。

バルサは途中で馬を捨てアスラを背負って逃げます。

しかしスファルが呪術で鷹に乗り移り空から追ってきた為に居場所を発見されます。

スファルはマクルとカッハルに情報を伝えてバルサの後を追わせます。

バルサは追っ手が迫ってくると罠を貼って迎え撃ちます。

マクルは不意打ちで倒す事に成功しますが、カッハルはマクルがやられたのに気づき短弓で攻撃してきます。

バルサは矢の出所に短槍を投げつけて反撃し、カッハルも倒します。

スファルはロタ王の命令で動いていましたが、実は王弟イーハンは若い頃に遭難してタルの民に助けられた経験がありました。

ロタではタルの民は卑しく汚らわしい存在だと忌み嫌われていますが、イーハンは初めて近くでタルの民を見てその美しさに驚きます。

中でもトリーシアという美しい娘に恋をしてしまい、結婚まで考えていました。

陰に生きるタルの民を娶るなど通常考えられないことであり、ロタ王国の大領主達から猛反発を受けますがイーハンは気にしませんでした。

しかしトリーシアは突如姿を消してしまい、イーハンの恋は終わりを告げました。

トリーシアはその後、タルの民の司祭の元へと身を寄せました。

【転】神の守り人 来訪編 のあらすじ③

ロタ王国の歴史

スファルは部下がやられた後、人質にしていたタンダとチキサに昔話をします。

かつてタルの民の中に特別な能力を持つ女がおり、サーダ・タルハマヤと呼ばれタルハマヤ神を呼び出す力がありました。

さらにサーダ・タルハマヤは歳を取らず眠りもせず、圧倒的なタルハマヤの力を使い恐怖により100年近く国を治めていました。

チキサはこれを聞くと否定し、サーダ・タルハマヤは神の力により戦の時代を終わらせたのだと反論します。

スファルはチキサの母トリーシアが禁域に忍び込んだ罪により処刑されたのは、こんな考えを持ったからなのかと納得し、話を続けます。

サーダ・タルハマヤの力が衰えてきた時、奴隷として汚れ仕事をさせられていたカシャルの祖先達は今のロタ王の祖先であるキーランにその事を伝えます。

カシャルの祖先の協力でキーランは都に入り、タルの民の司祭たちも恐怖による支配を続ける事は望んでおらずキーランに協力した事でサーダ・タルハマヤを倒すことが出来ました。

こうしてタルの民は表舞台から身を引き、悲劇を繰り返さない為に森の奥でひっそりと暮らすようになりました。

トリーシアは禁域に入った為にタルハマヤが蘇る事を恐れ、司祭達からカシャルへと引き渡され処刑されましたが、トリーシアでなく娘のアスラが神を招く力を持っており処刑場所のシンタダン周辺にいた人間は全て惨殺されました。

ただ、スファルはアスラの力に気づいていたものの、幼い娘を殺すのを躊躇ってしまったと本音を明かします。

タンダは話を聞いて、何も起こっていないうちからアスラを殺すのは間違っていると指摘します。

スファルはタンダに共にバルサを探すのに協力してもらい、アスラをどうするかは見つけてから話し合うことにしますが、シハナは納得していない様子でした。

【結】神の守り人 来訪編 のあらすじ④

シハナの裏切り

ロタ王国の貧しい北部地域で羊熱病が流行り、北部の民は飢餓に苦しむ可能性が高まっていました。

この為、ロタ王ヨーサムと弟イーハンは氏族長会議にて北部の税を軽くし南部に負担を求めますが、南部の丸々太った大領主達は反対します。

また今後このような事態を起こさないためにも羊熱病に強い茶色い羊の数を増やすように命じますが、茶色い羊は穢れているという思い込みが強い為北部民には受け入れ難く反発します。

イーハンは氏族長がなかなか言うことを聞かない現状に、何か良い手は無いものかと悩みます。

バルサとアスラは四路街の衣装商家に辿り着き、バルサの友人マーサに助けを求めます。

マーサは初老の婦人で、かつて息子トウノをバルサとバルサの養父ジグロに助けられた恩があります。

マーサは人に見られないように屋敷の奥に二人を匿い、傷を負ったバルサに少し休むように促しました。

アスラはマーサが用意してくれた衣を身に纏うと良い気分になり、マーサに衣についてあれこれ尋ねます。

バルサは自分とは違いアスラは普通の女の子なのだと再認識し、何とか普通の生活が出来るようにしてやりたいと思います。

トウノが調べてくれた情報を元に口入れ屋へ行くと、手紙が届いておりロタ王国のジタンというかつて聖都があった場所へ期日までに来なければタンダとチキサを殺すと書かれていました。

バルサはロタへと向かう隊商の護衛を請け負おうとし、先に依頼を受けようとしていた男と争いになりますが簡単に打ち倒します。

バルサへの手紙はシハナが独断で書いており、シハナは父スファルを裏切り自分の考えで動くことにしました。

シハナの息のかかったカシャルが数名現れ、スファルはシハナに従うしか無くなります。

マーサは別れ際にアスラにもし戻ってこれたら衣装職人にしてあげると声を掛け、バルサとアスラはロタへと向かう旅に出て行きました。

神の守り人 来訪編 を読んだ読書感想

本作は守り人・旅人シリーズの第5作目であり、ロタ王国を中心とした物語になっています。

ロタの昔話やタルハマヤという恐ろしい神、これに深く関わるロタ王家、カシャル、タルの民がストーリーの主軸となり、バルサとタンダが巻き込まれていくという流れです。

バルサがたまたま気になって助けた子供がタルの民の異能者でタルハマヤを呼び出す力を持っているという偶然が重なり、第1作目でチャグムを助けた時と同じような状況でバルサはアスラを守る事となります。

バルサは自身は異世界を見ることもできないのですが、毎回異世界に関わる人を助けてしまうという不思議な縁があります。

また、その助けた相手は国を揺るがす程の大事に関わっている事も多く、今回もロタ王国の未来を左右する程の力を持つタルハマヤ神に関わっており、次作でロタ王家も関わってきそうな展開になっています。

本作は来訪編と帰還編の二部作となっており、帰還というのが単にロタへの帰還なのか、タルハマヤがロタに帰還するという意味なのか気になるところです。

タルハマヤはこれまでのシリーズに出てきた異世界の存在の中でも特に凶暴かつ恐ろしい力を持っており、人間などあっという間に虐殺する事が出来ます。

短時間現れただけでもバルサが深手を負わされており、人間が倒せるような存在ではありません。

どうにかしてアスラの力を覚醒させずにタルハマヤを封印し、アスラを普通の生活に戻すというのがバルサの目指す所になっていくと思います。

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