「神の守り人 帰還編」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|上橋菜穂子

「神の守り人 帰還編」

【ネタバレ有り】神の守り人 帰還編 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:上橋菜穂子 2003年2月に偕成社から出版

神の守り人 帰還編の主要登場人物

バルサ(ばるさ)
守り人シリーズの主人公。短槍使いのバルサとして有名な女用心棒。

タンダ(たんだ)
薬草師で呪術師トロガイの弟子。バルサとは幼なじみで互いに信頼しあっている。

アスラ(あすら)
ロタ王国に住むタルの民の娘。タルハマヤの力を秘めた異能者。

イーサン(いーさん)
ロタ王の弟で、改革派であるが故に北部の貧しい民からは慕われるものの保守的な南部の富裕層からは疎まれている。かつてアスラの母親トリーシアと禁断の恋に落ちた過去がある。

シハナ(しはな)
イーサンに使えるカシャルの頭領の娘。天才的な知略を誇り、呪術や武術にも長けている。父親からも恐れられている。

神の守り人 帰還編 の簡単なあらすじ

女用心棒バルサとタンダはロタの民の子供チキサとアスラを助けた事でロタ王国を揺るがす陰謀に巻き込まれていきます。アスラはタルハマヤ神を招く力を持っており、これを利用しようとするカシャルのシハナに狙われています。シハナは父親のスファルすら裏切り王弟イーハンの為に動いており、タルハマヤの力で国を支配しようと企んでいます。バルサとタンダはチキサとアスラを守りタルハマヤによる恐怖の支配を防ぐ為に尽力します。

神の守り人 帰還編 の起承転結

【起】神の守り人 帰還編 のあらすじ①

タルハマヤ覚醒の兆し

王都ではサンガルの儀式に参加する為ヨーサムが旅立った為、建国ノ儀を代わりに行うこととなり王弟イーハンが悩んでいました。

南部の民に対して威厳を見せてみろという兄の意思を感じますが、イーハンは自信が無く憂鬱な気分になります。

そこへカシャルのシハナが現れ、探していた女性の消息が分かったと報告します。

バルサはアスラを連れてロタへ向かう隊商の護衛を請け負いました。

隊商は気の良い人ばかりでアスラも直ぐに溶け込めた為、バルサは護衛任務に集中できて安心しました。

さらに、ロタ人の隊商と協力して進む事になり、そちらの護衛と協力出来た為に楽ができました。

しかし、途中で吹雪に見舞われて足止めを食い、やっと吹雪が止んだと思うと狼の群れに襲われます。

家畜囲いが壊れて馬が逃げてしまいますが、隊商の長は馬がいなくては進めなくなると危険を顧みずに馬を追いかけます。

バルサが後を追うと、馬には追いついたものの狼に囲まれてしまいました。

長の娘が父を心配して後を追おうとし、アスラも共に馬に跨り狼に囲まれたバルサ達の元へとやって来てしまいました。

バルサは奮闘しますが狼の数が多すぎて殺られそうになった所でアスラがタルハマヤを呼び出し狼を全滅させます。

タルハマヤは普通の人には生暖かい光のようなものとしか見えず、皆何があったのか分かりませんが、バルサだけは恍惚の表情を浮かべながら狼を惨殺するアスラに気づいていました。

アスラはしばらく熱を出して寝込みますが、元気になると何事も無かったように振舞っており全ては神様が行なった事と信じているようでした。

一方タンダはスファルがシハナに懇願したことで命を助けられ、チキサの話を聞くとアスラを何としても助けなければいけないと感じます。

スファルがタンダを牢から助け、共にシハナの元から逃げ出します。

【承】神の守り人 帰還編 のあらすじ②

シハナの罠

交易市場に着くと、バルサは情報屋から自分達を狙う者について聞くと、王弟イーハンが絡んでいると聞かされます。

思っていたよりも大物に狙われていると知り、バルサは代わりの護衛を紹介して隊商を離れることにします。

バルサとアスラが宿に戻るとタルの民の司祭見習いであるイアヌという女性が訪ねてきます。

イアヌはアスラを知っており、市場で見かけて後を追ってきたそうです。

イアヌはアスラを気にかけてタルの民に紛れて共に街を抜け出せば追っ手からも逃げやすいと提案し、タルの民しか知らない道を案内してくれるそうです。

バルサも追っ手をまくには隠れながら行くしかないと考えており、イアヌの提案を受け入れて共に行くこととします。

しかし、途中吊り橋のかかっている所へ近づくとバルサは殺気を感じアスラ達を逃がします。

盗賊が待ち伏せしており襲われますが、何故か盗賊はアスラ達の後を追いません。

タルの民が全て橋を渡り追えるのを待ちバルサに襲いかかって来た所で、バルサは騙されたと気づきますが時既に遅くバルサは戦うしか無くなります。

バルサは多勢に無勢で全身に傷を負って凍えるような寒さの中、川に落ちていきました。

イアヌはアスラを宥めながらタルの民の聖域へと辿り着くと、そこにはシハナが待っていました。

実はシハナはアスラが幼い頃からタルの民の元を訪れてはアスラやアスラの母トリーシアと話をしており、アスラにはトリーシアの親友に見えていました。

シハナは何年も前からこの計画を進めており、トリーシアや司祭見習い達を扇動しタルハマヤ復活に向けて動いていたのでした。

シハナはチキサも無事ですぐに会えると言い、アスラにはゆっくり休むように促します。

そこへ伝令がやって来て、残念ながらバルサは死亡したと言われアスラは悲しみにくれます。

【転】神の守り人 帰還編 のあらすじ③

サーダ・タルハマヤ

シハナは自身がカシャルであることを打ち明けます。

シハナの主君であるイーハンは、若い頃から改革の意志を持ちタルの民、ロタ人、カシャルなど全ての民が平等に暮らすにはどうしたら良いのかを考えていました。

ヨーサム王は名君ですが体が弱く、王位継承者のイーハンは南部の大領主達からの人望がありません。

この為、シハナはイアヌ達を説得してタルハマヤを蘇らせ、イーハンの支配力を強固なものにしようと考えました。

トリーシアのことは残念だが、スファルが勝手に殺したと責任を押し付けます。

アスラがサーダ・タルハマヤとなる力を身につけたため、皆アスラに期待の眼差しを向けます。

タンダはスファルと共に全国各地の情報を集めつつジタンへと向かっていました。

スファルはシハナの狙いには気づいたものの、ロタ王国全体を巻き込む大きな流れが関わっており、一筋縄では解決出来そうに無い問題だと認識しました。

スファルは部下のマクルにバルサとアスラを追わせており、マクルはバルサが川に落ちていく所を目撃していました。

さすがに助からないだろうと判断し、近くにあった罠漁師の小屋を見つけ止まらせて欲しいと頼みます。

小屋に入ると川に落ちたはずのバルサ、知り合いのアラムが寝ていました。

アラムは魂を狼に乗せてスファルに連絡を取っており、まもなくスファルとタンダが到着します。

バルサは何とか一命を取り留め、スファルとアラムはシハナを止める為に先にジタンへと向かいます。

バルサは皆がアスラをサーダ・タルハマヤにしようとしているが、神の力で人を殺すのを何とか止めたいと願います。

ジタンに着いたアスラは異界の聖なる泉と大木を見てここでサーダ・タルハマヤになるのだと確認します。

また、ようやく兄チキサとも2ヶ月ぶりに再会することが出来ました。

【結】神の守り人 帰還編 のあらすじ④

建国ノ儀とサーダ・タルハマヤの再来

シハナはイーハンに対してタルハマヤの力を使って国を治めるように進言しますが、イーハンは慎重で兄と話してから決めると答えます。

イーハンはチキサ、アスラに会うとトリーシアを不幸な目に合わせてしまった事を後悔し、この2人だけでも必ず幸せにすると誓います。

バルサとタンダはジタンに到着するとスファルと合流してシハナの動向を伺います。

建国ノ儀が始まると、シハナは誰にも見つからない内郭の隠し通路からチキサとアスラに儀式の様子をみせます。

タルの民を侮辱する舞を見て2人は怒ります。

イアヌが儀式場に現れ、タルハマヤ神の復活を宣言すると、ロタ人から怒りの声が上がります。

口々にイアヌを殺せと叫ぶロタ人を見てアスラは何とかしなければと聖なる巨樹へと向かいます。

アスラは巨樹に登りサーダ・タルハマヤとしての力を得ると、タルの民の死を願う醜いロタ人に思い知らせてやると言い、タルハマヤの力でロタ人を脅します。

アスラは心の中で血を求めるタルハマヤと人を殺したくない思いとがぶつかり葛藤します。

その間にアスラを止めようとバルサ、タンダ、チキサが走り、シハナの邪魔が入るとバルサが残って戦います。

タンダとチキサは巨樹を登り始めますが、シハナの手先が弓でチキサを狙い撃ちます。

落ちそうになったチキサと目が合ったアスラは兄やバルサと過ごした楽しい日々を思い出して我に返りサーダ・タルハマヤになるのを拒み、タルハマヤをその体に封印すると木の上から落下しました。

タンダはチキサとアスラを両手に抱えようとしますが支えきれずに共に落ちます。

木の枝でボロボロに傷つきながらも3人は何とか生きていました。

バルサ、タンダ、チキサはイーハンに保護され傷を治しますが、アスラは自らの意思で殻に閉じこもってしまい目覚めなくなりました。

バルサは辛くとも生きなければいけないとアスラに語りかけながら春の野を眺めるのでした。

神の守り人 帰還編 を読んだ読書感想

本作は守り人・旅人シリーズの第5作目であり、ロタ王国を中心とした物語になっています。

来訪編でアスラに宿ったタルハマヤの力の片鱗を見ることができましたが、今回の帰還編ではロタ王国にサーダ・タルハマヤが帰還するのかどうかが最大の問題となります。

シハナに騙されてアスラを奪われ、バルサは深手を負います。

シハナは今回の計画の為に何年も前から準備を進めていた為、スファルでさえ知らない協力者を味方につけています。

武術の腕も一流で、本作のバルサのライバルとも言うべき存在でした。

1度目の対決は不意打ちでバルサが勝ち、2度目はシハナの策略が勝ち、3度目は真正面からぶつかりバルサがギリギリで勝つというなかなか見どころのある勝負が繰り広げられました。

これまでのシリーズで、ヨゴ、カンバル、サンガル、ロタとそれぞれの国を舞台に物語が繰り広げられて来ましたが、各国とも様々な事情がありつつ国が脅かされるような事態が発生していました。

また、南の大陸からタルシュ帝国が侵略の機会を窺っており、ロタやサンガルの国王は危険を察知しています。

今後のシリーズでタルシュにどう対応していくのかも気になるところです。

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