「ランチのアッコちゃん」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|柚木麻子

「ランチのアッコちゃん」

著者:柚木麻子 2013年4月に双葉社から出版

ランチのアッコちゃんの主要登場人物

澤田三智子(さわだみちこ)
ヒロイン。教材販売会社の派遣社員。すぐに他人の要求を受け入れてしまい自分の意思を示せない。

黒川敦子(くろかわあつこ)
三智子の上司。社内ではひたすら業務に集中して成果を挙げる。黒いおかっぱ頭から「アッコちゃん」と呼ばれる。

近藤洋太郎(こんどうようたろう)
三智子の元彼。倹約家で外食にも興味がなかった。

笹山隆一郎(ささやまりゅういちろう)
三智子の新恋人。老若男女をターゲットにした古書店を経営する。

ランチのアッコちゃん の簡単なあらすじ

自宅と職場を行き来するだけの日々を送っていた澤田三智子は、お付き合いをしていた近藤洋太郎にもフラれたりと散々です。

ある日のお昼休みに部長の黒川敦子にお弁当を渡したことがきっかけで、みるみるうちに運気がアップしていきます。

仕事にモチベーションを見いだした三智子は、私生活でも新しいパートナーと出会って前に進んでいくのでした。

ランチのアッコちゃん の起承転結

【起】ランチのアッコちゃん のあらすじ①

ずっしり手弁当が軽快なランチに

澤田三智子は静岡県の短大を卒業してすぐに上京したものの、とりたてて優秀ではないために派遣会社に登録するしか道はありません。

近藤洋太郎は初めての彼氏でしたが、「イエス」しか言えない三智子に愛想を尽かして同せい中の洗足池のアパートを出ていってしまいます。

いつものように麹町の外れにある「株式会社 雲と木社」の営業部で、アルミのランチボックスを広げていると声をかけてきたのは黒川敦子部長。

ひじき・肉じゃが・五目豆をご飯と一緒に詰めただけで、1度だけ洋太郎に作ってあげた時には「重たい」と言われて喜んでもらえませんでした。

とても美味しそうだとほめてくれた黒川が提案してきたのは、「ランチの取り換えっこ」です。

三智子は来週1週間だけ黒川のお弁当を作る、黒川はランチ代と店の地図と頼むべきメニューを紙に書いて手渡す。

例によって断れない三智子は、言われるままに月曜日の朝早くに出社して部長席の引き出しに弁当の包みを忍ばせます。

就業規則に従って12時10分ぴったりにオフィスを出た三智子は、「カレー専門店ビスマルク」のおかげで満足な食事ができました。

【承】ランチのアッコちゃん のあらすじ②

ジョギングリフレッシュに恋の天丼

女子トイレでスポーツウエアとシューズに着替え、麹町から千鳥ケ淵の並木通りを経由、お堀沿いから有楽町方面へ。

毎週火曜日にこのコースを走って、午後1時10分までにキッチリと帰ってくる黒川が20歳以上も年上だとは信じられません。

国際フォーラムの広場に止まっているワゴン車の屋台「ジェリーフィッシュ」では、サンドイッチとミックスジュースをもらって体が生き返りました。

久しぶりに運動して気持ち良くなった水曜日、地下鉄に乗って神保町までのお使いを頼まれます。

「ハティフナット」の本棚には彩り豊かな絵本や児童書が並んでいて、小学生用の教材を専門にする「雲と木」の取引先です。

小学生の頃の三智子は朝から晩まで地元の図書館に入り浸っていましたが、今ではまったく本を読んでいません。

特に大好きだったリンドグレーンの「やかまし村」を手に取っていると、店主の笹山隆一郎が名刺を差し出してきました。

今週の土曜日に吉祥寺で「スウェーデン子供映画特集」が開催されるそうで、男性から誘いを受けるのは久しぶりです。

昼食はこのお店の脇にある「いもや」、ボリュームがたっぷりの海老天と炊き立てのご飯の相性に自然と胸が弾んできます。

【転】ランチのアッコちゃん のあらすじ③

青空の下でキラリと光るアイデア

さついまいものレモン煮込み、出汁巻き卵、しょうが焼き、しば漬け… 毎日のように黒川の宝物を分けてもらっているような気分の三智子は、料理にも自然と力が入っていました。

屋上に上がって待っているようにという指示通りに、木曜日のお昼は眼下に皇居を眺めながら特上すしの出前をいただきます。

20年以上もここで働いているという黒川をねぎらうための社長の粋な計らいですが、最近になって彼女が手掛けた「ぶたまろんくん」という学習ドリルの売上が落ちているのが悩みの種です。

社長の前でキラキラと光るネタをつまんでいた三智子は、思いきって自分の意見を口にしてみました。

ぶたまろんくんは愛らしい子豚のマスコットですが、明るくて勉強が大好きだという性格は今どきの子供たちからすると面白みが足りないのでしょう。

三智子が考えたのは悪の女王「アッコ」、月曜日から金曜日まで子供たちに難問を与える氷のような性格、その課題をクリアした時だけほほえんでくれる異色のキャラクター。

社長の心を動かして編集部でプレゼンをする機会をもらい、優れた企画には正社員も派遣も関係ないことを証明します。

【結】ランチのアッコちゃん のあらすじ④

身も心も空っぽにして再出発

最終日となった金曜ですが、メモには1日目とまったく同じ「ビスマルク」と書かれていたためにガッカリしてしまいました。

店のマスターとは顔なじみになっていいたために、配達に行っているあいだの店番まで押し付けられてしまいます。

主体性がないところは相変わらずの三智子でしたが、余り物の材料をアレンジしてドライカレーを振る舞ってみるとお客さんからは思いのほかに好評です。

メニューが増えたと戻ってきたマスターにも感謝をされますが、結局のところ何も食べることができません。

一週間分のお釣りをしっかりと計算して黒川に手渡そうとすると、きれいに完食した弁当と一緒に突き返してきます。

今からこのお金で好きなものを何でも食べていいそうで、社長も了解済みです。

4年間をささげた彼と別れたこと、先週までは死にそうなほど悲しかったこと、今週末には新しい人とイベントに行く約束をしていること。

報告を終えた三智子はすっかり軽くなった弁当箱を受け取り、遅めのランチタイムへと向かうのでした。

ランチのアッコちゃん を読んだ読書感想

「Noと言えない日本人」は1980年代の流行語ですが、この物語の主人公は「Yes」しか言えないOL。

20代の前半にしてキャリアアップにつまずき恋愛でもパッとしない残念な澤田三智子、そんな彼女を引っ張っていく「アッコちゃん」こと黒川敦子には何ともインパクトがあります。

某大物歌手のようなヘアースタイルに、さぞかし厳しいパワハラ上司かと思いきや… 仲良くなってみると人情味があふれた一面に触れることができて、何よりもグルメを愛するところにも好感が持てますね。

三智子が腕によりをかけて作るおかずの数々はレシピ本にも負けていないほどのクオリティがあり、黒川がコッソリと教えてくれる名店も訪れてみたくなりました。

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