「天と地の守り人 第一部」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|上橋菜穂子

上橋菜穂子「天と地の守り人 第一部」

【ネタバレ有り】天と地の守り人 第一部 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:上橋菜穂子 2006年12月に偕成社から出版

天と地の守り人 第一部の主要登場人物

バルサ(ばるさ)
守り人シリーズの主人公。短槍使いのバルサとして有名な女用心棒。

タンダ(たんだ)
薬草師で呪術師トロガイの弟子。バルサとは幼なじみで互いに信頼しあっている。

チャグム(ちゃぐむ)
新ヨゴ皇国の皇太子。サンガル王国の救援に向かって以降、行方不明となっていた。

シュガ(しゅが)
聖導師見習いの星読博士。チャグムの指南役でもあり、隠れてトロガイから呪術を学んでもいる。

アラユタン・ヒュウゴ(あらゆたん・ひゅうご)
タルシュ帝国のラウル王子に仕える密偵。チャグムをタルシュ帝国へと連れて行った際、チャグムの人柄に惹かれて肩入れするようになる。

天と地の守り人 第一部 の簡単なあらすじ

タルシュ帝国に脅かされている新ヨゴ皇国では、鎖国令が出て誰も国の出入りが出来なくなりました。女用心棒のバルサはサンガルで死んだというチャグムの事が頭から離れない為、体を動かしていないと落ち着かない日々を過ごしていました。鎖国によって異国に取り残された人の密入国を助ける仕事が増えており、今はロタから新ヨゴへ帰りたいという家族の用心棒をしていました。そこへオルと名乗る元海兵が現れてバルサを探していたと言い、帝の狩人ジンからの伝言を聞かされます。

天と地の守り人 第一部 の起承転結

【起】天と地の守り人 第一部 のあらすじ①

チャグムの消息

女用心棒のバルサは、新ヨゴ皇国がタルシュ帝国に怯えて鎖国を決めて以降、密国を助ける仕事をこなしていました。

新ヨゴに取り残されたロタやカンバル人を国へ返したり、その逆の新ヨゴ人を家に帰したりという仕事ですが、国境警備が厳しくなり危険を伴う仕事でした。

今回も危険を乗り越えて新ヨゴへと向かう家族を無事密入国させた所、バルサは追っ手の気配を感じます。

後を付けてきた男は近くに住む木こりで塩を分けて欲しいと言いますが、バルサは嘘だと見抜き警戒します。

バルサが短槍を持って男に近づくと、男は「あなたはバルサか」と尋ねてきます。

実は男はオルという名の元海兵であり、密命を受けてバルサを探していました。

帝の狩人ジンからの手紙を受け取って目を通すと、バルサは亡くなったと聞いていた皇太子チャグムが生きていた事を知り安堵すると共にロタへと向かったチャグムが心配になります。

護衛していた家族を街まで送るとすぐにバルサはロタへ向けて旅立ちます。

バルサはチャグムが行方不明となったサンガルからロタへ向かうとしたらどこに行くかを考え、南の大きな港町ツーラムへと向かいます。

チャグムを追う手掛かりは、旅の資金になると身に付けていた高価な宝石であり、これが闇取引される場所から当たっていきます。

酒場で情報を集めるとそれらしき場所を聞くことができ、バルサが乗り込むとヨゴ人らしき男とすれ違います。

バルサが宝石とそれを売りに来た相手について聞くと、どうやら海賊のようでした。

バルサはその海賊の居場所を調べて船に乗り込むと、海賊がちょうど呪術にかけられていました。

海賊を助けて話を聞き出すと、海賊は高価な宝石が手に入った為にチャグムを人買いには売らずに自由にしたところ、チャグムは丘の頂上に立つ城を見て大領主の城だと分かるとそこへ向かっていったそうです。

【承】天と地の守り人 第一部 のあらすじ②

ヒュウゴとの出会い

バルサは大領主の城にチャグムがいるのかを調べる為、酒場で賭け事をしながら情報を集めます。

しかし、食べ物に毒を盛られ身体が痺れた所を兵士に連行されそうになります。

危うい所を助けてくれたのは見知らぬ男で、バルサは気がつくと男の隠れ家の一室に匿われていました。

男はアラユタン・ヒュウゴという名でタルシュ帝国の密偵だと名乗ります。

ヒュウゴはチャグムを攫ってタルシュ帝国へと連れて行った際、チャグムの人柄に惹かれて少しでも助力になろうとしていました。

その中で同じように情報を集めるバルサの噂を聞きました。

タルシュ帝国は内部で北翼と南翼に分かれて争っており、北翼側に属するヒュウゴは南翼側がバルサを襲ったのを見てバルサを助けたそうです。

大領主は既にタルシュの南翼側に寝返っており、もしチャグムが城に居るなら囚われてしまっただろうと分かりバルサは怒りが湧いてきます。

その頃、新ヨゴ皇国ではタルシュ帝国への対抗策として砦を築くこと、民衆から草兵を徴兵して最前線に置くことなどが決められていました。

星読博士のシュガは作戦を聞いても憂鬱になるばかりで、味方には既に裏切り者がいると分かっているためどんな作戦を立てても無駄だと思っていました。

シュガはわざと帝に楯突くような意見をすると、会議後に副将カリョウが声を掛けてきます。

カリョウは敵味方の情報を握る重要な立場であるが故にタルシュ帝国には勝てないと判断出来ており敵に通じていました。

また、ロタ王国にも既にタルシュの手が回っていることも知っており、シュガにもタルシュの枝国になるように手助けして欲しいと誘いを掛けてきます。

青霧山脈のタンダの元へチキサとアスラが尋ねてきて話を聞いていると、アスラは最近恐ろしい夢を見るようになったと言います。

そこへタンダの兄が尋ねてきてタンダに弟の代わりに村代表で草兵になって欲しいと頼みます。

【転】天と地の守り人 第一部 のあらすじ③

カシャルとの再会

バルサが一日ほど眠った後、外から争うような声がして来て煙のにおいがただよってきます。

ヒュウゴがやって来てバルサを自由にすると、部屋にある隠し扉から地下通路へと逃れます。

未だ毒のせいで身体が上手く動かないバルサは戦力になれず、ヒュウゴが1人で血路を開き敵の船を奪って逃げます。

川の細い支流に入り船が止まってもバルサもヒュウゴも動けません。

バルサは敵の矢を受けたヒュウゴの怪我の手当をすると、そのまま眠りにつきました。

目が覚め会話をすると、チャグムは大領主の城から抜け出したようだと分かり、ヒュウゴはチャグムに会えたらカンバルへと向かうように伝えて欲しいと言います。

カンバルはロタとなら同盟を結ぶ可能性があるので説得する価値があるとヒュウゴは考えていました。

タルシュも周りで攻めることの出来る国が減っており、そろそろ戦争ばかりの戦略を止めるべき時であり、新ヨゴ、カンバル、ロタが同盟を組んで攻めることが難しくなればタルシュの王子達も諦めざるを得ないだろうと言うことです。

バルサは人の気配を感じるとヒュウゴを隠して1人で出ていき名乗りを上げます。

バルサは敵がロタ王の猟犬カシャルであると気づいており、カシャルとは浅からぬ縁がある為、話し合うことができると思っていました。

ヒュウゴ達を襲ったのは、トサハ筋のカシャルで頭領はアハルという女性でした。

話すとチャグムを逃がしたのはカシャルであり、今はカシャルが護衛についてイーハン王子の元へと向かっていると知ります。

バルサはこれで自分の出番は無くなったと判断して新ヨゴへと帰ろうとしますが、宿に着くとヒュウゴを治療した時の革ひもの中に手紙を発見し、チャグムの追っ手として手練の刺客が差し向けられたと書いてありました。

バルサは不安を感じ、慌ててチャグムが向かっているイーハン王子の元へ自分も出発します。

【結】天と地の守り人 第一部 のあらすじ④

チャグムとタルシュ帝国の刺客

草兵となったタンダは新ヨゴ正規兵の厳しい扱いに耐えながら、前線基地の設営に向かいます。

草兵の中には明らかに18歳未満の者も混じっており、その1人でコチャと名乗る少年が仲間に痛めつけられているのをタンダは助けます。

コチャはどうやらアスラ達と同じ異能者であり、異世界の様子が見えて毎晩悪夢にうなされているようでした。

コチャは漠然としたものですが、新ヨゴが滅ぶような恐ろしい出来事が起きる予感を感じており、タンダも不安に思って何とか師匠のトロガイと連絡を取らねばと考えます。

バルサはほとんど休まずに馬を走らせ続け、イーハン王子の元へと辿り着くと面会を求めます。

軍議中であったイーハンはかつて国を救ったバルサの為に抜け出して来て、バルサに一足遅く先程チャグムは旅立ってカンバルへと向かったと告げます。

バルサは雪の中をひた走りチャグムの後を追っていくと、途中でロタ兵の死体を見つけます。

2人目の死体を見つけた先で、チャグムと後ろに迫る刺客を発見し戦闘になります。

何とか刺客を倒したものの、バルサもチャグムも傷を負ってしまいます。

何とか辿り着いた小屋で体を温めて傷の治療をし、少し休むと意識を失っていたチャグムも目を覚まします。

チャグムはバルサを見て夢でも見ているのかと驚きますが、バルサからヒュウゴの伝言を聞き、またイーハン王子は新ヨゴとの同盟は断ったもののカンバルとならば同盟を結んでも良いと言っていたと知ると、何としてもカンバルへ行かなければならないと決意を新たにします。

しかし護衛に付けてもらったロタ兵も殺されてしまいバルサを巻き込みたくはないチャグムですが、バルサは装備を整えて共にカンバルへと向かおうとチャグムを励まします。

こうして、バルサの故郷でもあるカンバル王国へと向かう2人の旅が始まるのでした。

天と地の守り人 第一部 を読んだ読書感想

本作は守り人・旅人シリーズの第7作目であり、シリーズ完結編となる作品です。

長大な物語であるため、三部構成となっておりこの第一部では、前作で新ヨゴを救う為に1人旅立ったチャグムとそれを助けようとするバルサの物語となっています。

また、タルシュ帝国の侵略に備えて新ヨゴ皇国は鎖国すると共に国を上げて防備を整えようとし、民衆からも徴兵して砦の建設にとりかかります。

しかし、国内でもカリョウやシュガのように相手の戦力を知るものは戦っても絶対に勝てないと判断出来ており、既に国や帝を見限っている者もいます。

シュガは何とかして国を救いたいと考えていますが、苦しい立場に置かれてできることは限られてしまいます。

ロタではバルサはチャグムの情報を得るのにもなかなか苦労し、また既にタルシュ帝国がかなり入り込んできており、行く先々で危険な目にあいます。

その中でヒュウゴとの出会い、カシャルとの出会いもあり何とかチャグムの手掛かりを伝っていき、最後の最後で危うい所を助けることが出来ました。

チャグムとバルサの再会は感動する場面ですが、落ち着いている場合ではなく、一刻も早くカンバルへと向かう必要があり、次作でどのような展開が待っているのか見ものです。

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