「砂の王国」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|荻原浩

「砂の王国」

【ネタバレ有り】砂の王国 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:荻原浩 2010年11月に講談社文庫から出版

砂の王国の主要登場人物

山崎/木島 
 証券会社に勤めていた山崎は職を失いホームレスとなる、路上生活で出会った仲村のカリスマ性に目をつけ、新興宗教大地の会を起こす 

龍斎(りゅうさい)
占い師 いいかげんな性格だが、その実力は確か 山崎に誘われ大地の会の幹部メンバーとなる 

仲村
ラテン系の顔立ちで屈強な体格を持つホームレス 人々を引きつけるカリスマ性を山崎に魅入られ、新興宗教大地の会の教祖となる

砂の王国 の簡単なあらすじ

主人公山崎は明日の飯にも困るほど困窮したホームレスです。自分を追い詰める社会に恨みをもち、復讐してやりたいと思います。不思議と人を引きつける魅力を持つ仲村と出会い、山崎は仲村を教祖に祭り上げ新興宗教を興こすことを企てます。占い師の龍斎を仲間に加え、3人で新興宗教大地の会を立ち上げました。様々な人間たちを信者に従えて徐々に肥大してゆく宗教団体大地の会 カルト宗教にのめりこんでゆく信者たちとソレを裏で操る人間のドラマを描いた作品です。

砂の王国 の起承転結

【起】砂の王国 のあらすじ①

ホームレス時代

主人公山崎はかつては証券会社に勤めていたサラリーマンでした。

失業したせいで家も妻も失いホームレスに転落し、どん底の日常を送ることになります。

心身共に荒んでゆくなか、ある時仲村というホームレスに出会います。

仲村はラテン形の風貌をした、とても身長の高い男でした。

仲村は不思議と人を引きつけるオーラを放っており、仲村に対して人々は献身的なまでに世話を焼いていました。

社会に復讐したいという野望を胸に秘めた山崎は仲村を利用してとある計画を思いつきます。

山崎は路上で占い師をしている龍斎という男と出会います。

龍斎はいいかげんな性格をしていますが、占いの腕は確かで行き交う人々の悩みをずばり言い当てるという確かな技術を持っています。

龍斎の仕事を手伝うことになった山崎は龍斎から得た技術で、ある客を言葉巧みに誘導し3万円もの大金を得ることに成功します。

龍斎と共に山崎は競馬場へ赴き、大金を夢見て有り金を叩き馬券を買います。

これを外したら帰りの電車に飛び込んでやるという決死の決意を固めた山崎は有り金すべてを叩いて大穴の馬券を買い、それが見事に的中し300万円もの大金を手に入れることに成功しました。

そして..競馬で得た300円を元手に山崎は仲山と龍斎を仲間に加えて野望の実現に向けて動き始めます

【承】砂の王国 のあらすじ②

大地の会

山崎が描いた計画..それはカリスマ性を持つ仲村を教祖として祭り上げ新興宗教を勃興することでした。

龍斎は呆れていましたが、山崎が契約金を支払うことで幹部に加わり、持ち前の文才で信者を引きつけるキャッチコピーや書籍を執筆することを承諾します。

仲村も衣食住を提供されることで山崎の計画に加わることを承諾します。

山崎は名を変え木島と名乗るようになり、木島は組織の母体となる建物を借り、宗教名を「大地の会」と命名し、表向きは仲村を傀儡人形のように扱い、裏で木島が糸を引いているという組織となります。

木島の巧みな営業技術..龍斎の人の心理を突いた言葉巧みな誘導..そして仲村の持つ人を引きつける天性のカリスマ性で徐々に..大地の会の元に人々が集い信者となります。

仲村の持つカリスマ性に惹きつけられた人々は熱狂的な信者となり、信者を増やした大地の会は増殖し..徐々に規模の大きな組織となってゆきます。

野外フェスをきっかけに信者の数が爆発的に増え、信者が多くなりすぎたことで木島は次第に組織をうまく掌握できなくなっていきます。

人が多くなったことで、木島は組織に居場所を失いつつあると危機感を抱くようになり..そして、大地の会がインチキだと気が付いた古参メンバーが脱退し、大地の会に反逆する活動を行い始めたことがきっかけで、木島の焦りは次第に現実味を帯び始めてゆきます。

【転】砂の王国 のあらすじ③

肥大化する宗教

大地の会を大きくするために木島は、仲山を使って信者から金を巻き上げる、イカサマオークションを行っていたのです。

そのオークションのイカサマのカラクリに気が付いた女性信者の一人が木島を問い詰め脅迫します。

仲村のカリスマ性は大地の会にとって最も重要なモノで、仲村に対して疑心を抱かせるわけにはいかないと思った木島は必死になって泥を被ります。

そんな悩ましい日々を送る木島の前に追い打ちをかけるように、ホームレスに転落するきっかけとなった借金取りの男が、山崎が木島と名を変え、大地の会に所属していることを突き止め、借金の督促にやってきます。

大金を持っている木島はしぶしぶ金を支払いますが、黒いつながりは消えることはありませんでした。

女性信者の要求はエスカレートし、遂には仲村を抱かせろとまで要求してくるようになりました。

そんな女性信者を疎ましく思った龍斎は借金取りの男を利用して、女性信者を抹殺してしまいます。

組織の運営はクリーンで行こうと思っていた木島にとってこれは許しがたい行為でした。

組織は肥大化し、派閥に別れ、木島は組織をコントロールすることが困難になり、自分は大地の会にとてもはや必要性のない人物だと思うようになりますそんな木島を必要としたのは教祖仲村でした。

仲村はゲイで木島のことを愛すようになっていたのです。

貞操の危機を感じた木島は仲村を拒み、仲村との関係がこじれ 物語は不協和音を伴って最終局面へと突き進みます。

【結】砂の王国 のあらすじ④

再びホームレスに

龍斎は仲村を唆し、大地の会の支配者の座を牛耳るようになります。

龍斎は木島を反逆者として扱い拘束するために追っ手を挿しむけます。

大地の会から挿し向けられた追っ手の追撃をかわし、山崎は当てもなく彷徨いネット喫茶を転々とするようになります。

ネット喫茶で山崎は大地の会を脱退して、反逆者として活動を行うかつて信者のブログを参照します。

ブログには木島こと山崎が大地の会を追われたことが掲載されており、山崎に自分たちの活動に加わらないか?と勧誘の文章が目に留まります。

山崎は居場所を追われ、行くアテのないホームレスに再び転落してしまいました。

大地の会のモノが山崎がネット喫茶を転々としていることを突き止めもはやネット喫茶に泊まることすらままなりません。

山崎はこの後どうするか..と思案します。

元妻の所に赴こうか..あるいは自分も大地の会の抵抗運動に加わろうか..この先自分はどうなるのか..まあ..なるようになるさと山崎の心情を吐露したところでこの物語は幕を閉じます。

砂の王国 を読んだ読書感想

この物語は新興宗教のことを描いた作品で、カルト宗教の成り立ちやその成長の過程など、引き込まれる箇所がたくさんあり、特に物語前半のホームレス時代の描写はとてもリアルに描かれていて、作者は一度ホームレスを体験したことがあるのでは?と思ってしまうほど緻密な描写でした。

木島は物語後半で大地の会の運営に行き詰まり追い詰められてゆきます。

木島はとても繊細な人間です。

彼はあるトラウマを抱えており苦悩する木島が等身大に描かれています。

読んでいる私が木島と同一化し、木島の苦悩が私の中に入り込んでくるかのような錯覚を覚えました。

宗教の成り立ちについてよく描かれている一冊で、新興宗教について興味がある人は読んでみることをおすすめします。

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