【ネタバレ有り】テネシーワルツ のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:林真理子 1985年5月に講談社から出版
テネシーワルツの主要登場人物
向井とき江(むかいときえ)
ヒロイン。東京都小平市に住む主婦。夫とふたりの息子の4人暮らし。
葉山サチ(はやまさち)
とき江の異父妹。歌手。
横田栄三(よこたえいぞう)
サチの父。娘の芸能活動のために会社を立ち上げる。
元木春吉(もときはるきち)
小平市内で飲食業を営む。 後にテナントビルの経営にも手を出す。
向井正治(むかいしょうじ)
とき江の次男。 高校卒業後に自動車販売会社に就職。
テネシーワルツ の簡単なあらすじ
平凡な主婦として暮らしていたとき江の運命を変えたのは、血のつながった妹であり歌手として活躍していた葉山サチとの再会です。サチと再会したとき江は付き人としてサチの芸能活動を支えるようになりましたが、次第に彼女の父親からは疎まれるようになってしまいます。ついには単なるお手伝いさんとしてサチの身の回りの世話をさせられるようになったとき江は、妹をうらやむ余りに罪を重ねるようになるのでした。
テネシーワルツ の起承転結
【起】テネシーワルツ のあらすじ①
向井とき江は小平市で夫とふたりの息子・文勝と正治と暮らしていましたが、ある時に同じ市営住宅に住む元木春吉から1枚の新聞記事を手渡されました。
そこには興行師の横田栄三と女優の水島とし子の間に生まれた、葉山サチという歌手の写真が載っています。
とき江と横田の間に血のつながりはありませんが、とし子の方は紛れもなく幼い頃に生き別れとなった母親です。
サチの事務所に自らの生い立ちを説明した手紙を郵送すると、半年後に日劇で開催される予定のサチのリサイタルの切符が郵送されてきました。
舞台が終わった後に楽屋裏に案内されたとき江は、涙を流しながらサチと再会を喜び合います。
とき江が洗足にあるサチの家に泊まりながら付き人をするようになったのは、それから1カ月ほど後のことです。
子供たちの面倒は元木が見てくれていて、1954年当時に7000円の給料を仕送りできるために夫も文句は言いません。
歌手だけでなく映画の出演依頼も舞い込んでくるようになったために、サチは大忙しです。
【承】テネシーワルツ のあらすじ②
戦前から演劇や音曲の興行をほそぼそと続けていた横田の周りには、サチが世に出た途端にレコード会社のプロデューサーやら配給会社の役員やらが押し寄せてきました。
横田はサチをこれまで所属していた事務所から独立させて、「リーフ企画」という会社を親族で設立します。
それとともにサチの母親が後妻でその前に別の男性との間に子供を生んでいることや、父親の違う姉がいることはマスコミ関係者には秘密にしておきたいようです。
サチがとき江を映画の撮影所やレコーディング現場にまで連れてきて、共演者の前で「お姉さん」と呼びかけることも心配していました。
横田によって付き人を辞めさせられたとき江は、サチが新しく建てた家のお手伝いさんとして雇われることが決まります。
小平の家は夫の母親が我が物顔で取り仕切っているために、今さら帰る訳にもいきません。
サチは芸能活動も順調でプライベートでも人気の俳優・奥平勇と結婚していて、とき江は同じ姉妹ながら余りの境遇の違いに不満を抱くばかりです。
【転】テネシーワルツ のあらすじ③
結婚して代々木で新婚生活をスタートさせたサチは、預金通帳と実印を預けてお金の管理をとき江に任せています。
リーフ企画からは生活費という名目で毎月100万円が振り込まれていましたが、サチは家計簿をつけることさえできません。
とき江は金庫から通帳を持ち出して、 定期預金をサチに無断で解約していました。
かつては小平駅の近くでちょっとした飲み屋をやっていた元木春吉は、今では新宿の歌舞伎町に聳え立つ「ます造」のオーナーです。
1階は料亭、2階はキャバクラ、3階はマージャン屋。
この雑居ビルを建てる時に、とき江も共同出資という形で200万円ほど出しています。
とき江が横領して注ぎ込んだ総額は1000万円をこえていましたが、自分のためには1円も使うことはありません。
文勝と正治を失った今となっては、「ます造」こそがとき江の子供であり生きがいです。
ついには代々木の家を抵当に入れて銀行から融資を受けようとしましたが、奥平との離婚を進めていたサチが金庫を開けたことによって全てが明るみに出ます。
【結】テネシーワルツ のあらすじ④
サチによって詐欺と私文書偽造の罪で告訴されたために、逮捕されたとき江には裁判の結果懲役が課せられました。
栃木刑務所に服役していたとき江の面会にきてくれたのは、 22歳になって妻・里美との間にふたりの子供を授かった正治です。
自分たちへの仕送りのために罪を犯したと信じている正治は、出生して行く当てのなかったとき江を引き取ってくれます。
今では埼玉県の外れにある分譲マンションで、息子と義理の娘にふたりの孫に囲まれて静かな余生を送っていました。
いつものように子供たちを学校に送り出した里美は、お茶をすすりながらワイドショーを見ています。
テレビの画面から聞こえてきたのは、葉山サチが酒によって自宅の浴槽で溺死したというニュースです。
奥平との離婚が成立した後のサチはレコードも出さず舞台からも消えて、 地方のパーティーで歌うだけの恵まれない晩年と報じています。
それからしばらくの間、ラジオや商店街の有線は繰り返しサチのヒット曲「テネシーワルツ」を流すのでした。
テネシーワルツ を読んだ読書感想
同じ母親から生まれながらも、正反対の道のりを歩んでいく姉妹の生きざまに引き込まれていきました。
芸能界で華々しく成功していく妹の葉山サチの、自由気ままな生きざまが伝わってきます。
その一方ではサチの付き人や身の回りの世話をするお手伝いさんでしかなかった向井とき江の、思わぬ逆襲が驚きです。
自宅のマンションで孤独死を遂げたサチと、罪を犯しながらも息子と孫と一緒に穏やかな老後を送ることになったとき江とのコントラストには考えさせられます。
必ずしも社会的な地位や財産だけが、幸せな人生の全てではないのかもしれません。
コメント