「中島ハルコの恋愛相談室」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|林真理子

「中島ハルコの恋愛相談室」

【ネタバレ有り】中島ハルコの恋愛相談室 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:林真理子 2015年5月に文藝春秋から出版

中島ハルコの恋愛相談室の主要登場人物

中島ハルコ(なかじまはるこ)
ヒロイン。2度の離婚を経験して現在は会社を経営する。

菊池いづみ(きくちいづみ)
フードライター。幼少期を海外で過ごす。10年越しの不倫相手がいる。

三島明宏(みしまあきひろ)
老舗のういろう屋「紫風堂」の社長。

太田(おおた)
ハルコの1回目の結婚相手。印刷会社の社長。

中島ハルコの恋愛相談室 の簡単なあらすじ

フードライターとしても半人前でプライベートでも既婚男性との関係を惰性で続けていた菊池いづみに、パリの高級ホテルで声をかけてきたのは中島ハルコという中年の女性です。初対面でも嫌に慣れない彼女との付き合いは、日本に帰ってからも続きます。ハルコと会ってからは仕事でも恋愛でも運気が上がってきたいづみは、彼女の壮絶な人生を知ることになるのでした。

中島ハルコの恋愛相談室 の起承転結

【起】中島ハルコの恋愛相談室 のあらすじ①

パリで会った不思議な日本人

菊池いづみはレストランやシェフを訪ねて記事を書く、フードライターの仕事をしていました。

ある時に女性向けファッション雑誌の編集長とのタイアップで、パリで人気のレストランを紹介する企画を任されます。

出版社がいづみに用意してくれたのは、パリでも1、2を争うほどの由緒ある高級ホテル「ブリストルホテル」です。

滞在2日目の朝にいづみはロビーにいると、見知らぬ日本人の女性から大声で呼び止められてしまいました。

お洒落な服装で整った顔立ちに年の頃は40代後半か、あるいは50代の前半くらいでしょうか。

ホテルの朝食が高すぎると文句を言う彼女を、いづみはリーズナブルな価格でおいしい街中のカフェへと案内してあげます。

焼き立てのクロワッサンに淹れたてのカフェオレにご満悦な様子の彼女が差し出したのは、「ビュー・コンシェルジュ 社長 中島ハルコ」と書かれた名刺です。

初対面にも関わらずたちまちハルコと意気投合したいづみは、現在抱えている悩み事を相談してみました。

【承】中島ハルコの恋愛相談室 のあらすじ②

いづみの悩みをスッパリと解決

いづみは総合商社に勤めていた父親の転勤に伴って、子供の頃はオーストラリアやベルギーで過ごしていました。

料理が得意な母親の影響もあり、食に関する仕事に携わり始めます。

両親が離婚したのはいづみが中学生の時で、原因は父が部下の女性と親密な関係になったからです。

そんな父を憎んでいたはずのいづみも、現在は妻子ある男性とのお付き合いを続けていました。

1年前に彼から300万円の借金を申し込まれたいづみは、使い道を問いただすこともなく借用書ももらうことなく現金で手渡します。

それ以降は会う回数も減っていき、一向にお金は戻ってきません。

いづみの相談を受けたハルコのアドバイスは、相手の男性に請求書を送り付けて「マチ金から借りても返せ」と迫る荒療治です。

帰国してさっそく言われた通りにしてみると、300万円に利子の20万をプラスして見事に取り返すことができました。

これ以降いづみはハルコに呼び出されると、いつ何時でも駆けつけるようにします。

【転】中島ハルコの恋愛相談室 のあらすじ③

軌道に乗ったいづみの仕事

いづみが昨年に出版した「この店行かなきゃ損をする」という本をハルコに7冊ほど送ると、彼女は取引先の会社や知人に配ってくれました。

和菓子屋「紫風堂」の社長・三島明宏もそのひとりで、いづみを有名な雑誌に記事や評論を書いているジャーナリストとして売り込んでくれます。

紫風堂は大正時代から名古屋市内でういろうを作っている老舗でしたが、先代の時に東京に出店した支店の方は余りうまくいっていません。

近々ひつまぶしの専門店にチャレンジするようで、そこのプロデュースを任されたのがいづみです。

新幹線チケットさえ自分で調達すれば後は面倒を見るからと、いづみは強引に名古屋まで連れてこられてしまいました。

現地で紹介された三島はすっかりハルコに心酔しきっているようで、いづみも「先生」などと呼びかけられると悪い気はしません。

体のいい秘書代わりに散々こき使われたいづみは、帰りの電車の中でハルコの過去について打ち明けられます。

【結】中島ハルコの恋愛相談室 のあらすじ④

ハルコの波乱万丈な人生

名古屋駅から東京駅までグリーン車で向かうハルコは、いつにも増して多弁です。

もともと彼女は名古屋で製菓業を営む裕福な両親に育てられて、地元のお嬢さまたちが集まるエスカレーター式の学校に通い始めます。

短大を卒業する頃に父がガンで亡くなったために、美容師の資格を取得して働き始めました。

26歳の時に印刷会社の跡取り・太田と見合い結婚をさせられますが、社長の妻としての退屈な毎日にハルコは耐えられません。

2回目の相手は美容師時代の知り合ったシャンプーやパーマ液の販売会社の社長で、夫婦でエステ経営に乗り出して成功します。

やがては夫の浮気で離婚することになり、その後は自分で立ち上げた事業と新しくできた恋人に熱中する毎日です。

ハルコの長い身の上話が終わる頃に、アナウンスが品川駅への到着を告げます。

「ハルコさんに会えてよかった」といういづみの言葉に、彼女はにこりともせずに「みんなそう言うのよね」と返すのでした。

中島ハルコの恋愛相談室 を読んだ読書感想

海外でも日本国内でも人目を気にすることなく自由気ままに振る舞う、ヒロインの中島ハルコのエネルギッシュな生きざまが痛快です。

初対面の相手にもずけずけとものを言う厚かましい一面も、不思議と憎むことができません。

破天荒なおばさんに振り回されていくうちに、常識人であったはずの菊池いづみも影響されて変わっていく様子がユーモラスに映ります。

一見するとお気楽な毎日を送っているようなハルコの、若き日の知られざる苦労が語られるシーンが印象深かったです。

やりたい事を見つけて、とことん努力する素晴らしさが伝わってきました。

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