「秘密のスイーツ」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|林真理子

「秘密のスイーツ」

【ネタバレ有り】秘密のスイーツ のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:林真理子 2010年12月にポプラ社から出版

秘密のスイーツの主要登場人物

村田理沙(むらたりさ)
ヒロイン。都会の小学校から田舎町へ転校してきた6年生。2010年現在12歳。

中森雪子(なかもりゆきこ)
国民学校の4年生。1944年当時10歳。

国本真由子(くにもとまゆこ)
理沙のクラスメート。国本病院の娘。

沢田(さわだ)
理沙のクラスメート。実家は農業を営む。

秘密のスイーツ の簡単なあらすじ

2010年に生きる小学6年生の村田理沙は自らの体型にコンプレックスがあって、転校先の学校にもいまいち馴染むことが出来ません。独りぼっちで神社の境内に隠れていたある日、1944年と繋がる不思議な穴を発見します。戦時下の過酷な毎日の中でも懸命にいきるひとりの少女との交流を通して、理沙は少しずつ成長していくのでした。

秘密のスイーツ の起承転結

【起】秘密のスイーツ のあらすじ①

66年の時をかける抜け穴

6年生になる村田理沙は体重60キロの体型をからかわれたことが原因で、転校した先の小学校に通えなくなってしまいました。

女手一つで娘を育てる母親に不登校を責められた理沙は、彼女の携帯電話を持ち出してプチ家出を敢行します。

向かった先は近所の神社で、ここは神主さんも滅多に姿を見せずにクラスメートとも会うことがない秘密の隠れ場所です。

携帯が鳴りだしたために、理沙は境内の石の柱にぽっかりと空いた穴に隠しておくことにしました。

家に帰ると母が携帯の紛失を大騒ぎしているために、自分の携帯電話からコッソリと母の番号にかけてみます。

呼び出しに出たのは中森雪子という女の子でしたが、彼女は今から66年前の1944年に生きる小学4年生です。

電話越しに携帯の操作方法をアドバイスして周りの風景や雪子自身の写真を撮ってもらい、例の穴の中に戻してもらいました。

母の携帯と引き換えに、理沙は当時としては貴重なチョコレート菓子を向こう側の世界へ送ります。

【承】秘密のスイーツ のあらすじ②

過去へ贈るたくさんのお菓子

その後も理沙は家の中にあった買い置きのお菓子を自分では食べずに穴の中に入れて雪子に渡すために、自然と体重も減少してコンプレックスが解消されていきます。

徐々に学校にも通い始めた理沙の新しく出来た友達は、実家が大きな医院を経営していている国本真由子と農家の息子・沢田です。

真由子の家には患者さんからの贈り物である焼き菓子が洋菓子が有り余っているために、コッソリと分けてもらうことが出来ました。

沢田の自宅には農協関係者が集まってお菓子を作る調理台やオーブンがあるために、時折キッチンを使わせてもらって手作りのクッキーを焼いていきます。

ふたりには「施設の恵まれない子供たちに配る」と誤魔化していましたが、真由子は理沙の携帯に残されていた雪子の画像に見覚えがあるようです。

学校にも馴染んできて行事にも積極的に参加するようになった理沙は、毎年の3月2日にこの街で行われる「祈りの日」について真由子から聞かされました。

【転】秘密のスイーツ のあらすじ③

途切れたふたりの絆

66年前の3月2日にこの地域ではアメリカ軍の激しい空爆があったために、今でも200人以上の亡くなった住人を追悼する記念日になっています。

雪子の身に危険が迫っていることを理沙は幾度となく警告しましたが、日本がアメリカに負けるという彼女の話を雪子は信じてくれません。

挙句の果てには理沙に対して「非国民」を言い渡して、お菓子を受け取ることも携帯電話を使っての交信も拒否しされてしまいました。

その後老朽化が激しい神社では補修工事が始まって、石の柱はコンクリートに建て替えられて過去へ繋がる穴も絶たれることになります。

全てが夢のように思えてきた理沙が意外な事実を知ったのは、小学校を卒業して地元の中学へと進学した2学期のことです。

相変わらず真由子や沢田との友情は続いていて、その日も学校の帰りに真由子の家に遊びに行きました。

真由子はつい先日に仏壇の引き出しから見つけたという、セピア色に色褪せた1枚の写真を理沙に見せます。

【結】秘密のスイーツ のあらすじ④

海の向こうから再会を願って

写真の中には雪子とそっくりな少女が写っていて、彼女は真由子の祖父の妹に当たります。

真由子の曾祖父は空襲で亡くなりましたが、子供たちだけは防空壕にいて助かったそうです。

名前も雪子で兄は海軍の兵学校出身、戦争中は国民学校の4年生。

まさに理沙がタイムトンネル越しに聞かされた中森雪子のプロフィールとピッタリで、現在はブラジルのサンパウロで暮らしているという彼女のアドレスを教えてもらいました。

エアメールに自分の身の周りに起こった出来事をそっくりそのまま書き込んで、地球の裏側へ送信して返事を待ちます。

信じてもらえないかと不安に思っていた理沙でしたが、意外にも返信は早かったです。

戦争中は辛いことばかりだったが理沙のお菓子によって救われたと感謝すると共に、いつか日本に帰るその時までふたりだけの秘密にしておいて欲しいと締めくくられています。

理沙は手紙と一緒に雪子が贈ってくれた、不思議な味のするブラジルのお菓子を食べるのでした。

秘密のスイーツ を読んだ読書感想

ぽっちゃり体型で学校も休みがちでテレビの前に座り込んではお菓子ばかり食べている、冴えないヒロイン・村田理沙がユーモアたっぷりでした。

偶然にも見つけたタイムトンネルを通じて、戦時下の過酷な世界に生きる中森雪子と交流を深めていく様子には心温まるものがあります。

無気力状態だった理沙が、雪子の影響でポジティブに変わり始めていく展開が微笑ましかったです。

ようやく出来た転校先の友達の、国本真由子や沢田と力を合わせて手作りするクッキーも美味しそうでした。

甘いスイーツの中にも、ほろ苦い戦争の悲惨さが隠された物語です。

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