【ネタバレ有り】ヒア・カムズ・ザ・サン のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:有川浩 2011年11月に新潮社から出版
ヒア・カムズ・ザ・サンの主要登場人物
古川真也(ふるかわしんや)
主人公。文芸誌「ポラリス」の編集者。
大場カオル(おおばかおる)
真也の同僚。幼い頃両親が離婚して母の輝子に育てられる。
安藤みずほ(あんどうみずほ)
真也の上司。「ポラリス」の編集長。
白石晴男(しらいしはるお)
「HAL」のペンネームで執筆を続ける脚本家。カオルの父。
榊宗一(さかきそういち)
白石晴男の大学時代の友人。
ヒア・カムズ・ザ・サン の簡単なあらすじ
古川真也には物に触れるだけでそこに残された人々の記憶を読み取れる、不思議な能力が備わっています。真也が選んだ職業は文芸雑誌の編集者で、今回の仕事は謎の覆面脚本家としてアメリカで活躍しているHALの正体に迫ることです。空港でHALを出迎えた真也は、偶然にも自らの力を使って彼がひた隠しにしていた重大な秘密を知ってしまうのでした。
ヒア・カムズ・ザ・サン の起承転結
【起】ヒア・カムズ・ザ・サン のあらすじ①
古川真也が初めて自分に秘められた不思議な能力に気が付いたのは、祖母が持っていた古ぼけた巾着に手を伸ばした時でした。
触れた瞬間に若き日の祖母の姿が見えましたが、家族に打ち明けても一向に信じてもらえません。
見えたり聞こえたりするのはそこに残された思い、強い思いほど長く強く残る。
年齢を重ねるにつれて真也は自分の力を隠すことを学習していき、相手の気持ちが手に取るように分かるようになります。
そんな真也が社会人になって選んだ編集者という仕事は、ある意味では天職なのでしょう。
小説家が自らの原稿に込める思念は一般の人たちをはるかに上回るほど強烈で、真也の能力は彼らと信頼関係を築き上げていくにはピッタリです。
その一方で真也は時折、自分が同僚たちと比べるとズルをしているような罪悪感を抱いてしまうことがありました。
特に同期入社である大場カオルの愚直で誠実な仕事ぶりには、もしも特殊能力が無ければ敵うはずはありません。
【承】ヒア・カムズ・ザ・サン のあらすじ②
ある時に真也たちが作っている雑誌「ポラリス」で、話題の新作映画「ダブル・マインド」を取り上げることになりました。
この映画の脚本を書いているのはアメリカで活躍している日本人でしたが、「HAL」というペンネーム以外は公表されていません。
編集長の安藤みずほが掴んだ情報ではHALの本名は白石晴男で、今回家族に会うために20年ぶりに帰郷する彼の娘こそがこの編集部で働いているカオルです。
白石との単独インタビューを取り付けた安藤は感動の親子の対面を演出したいようですが、カオル自身は余り気が進みません。
白石とカオルの母は20年前に離婚しているために、カオルは父に捨てられたというわだかまりが今でもあります。
成田空港のロビーで真也たちに出迎えられた白石は、ポケットから娘への1通の手紙を取り出しましたがカオルは受け取ることができません。
真也はカオルが落とした手紙を拾って手渡すつもりが、その中に込められた秘密を覗き見てしまいました。
【転】ヒア・カムズ・ザ・サン のあらすじ③
真也とカオルの前で「白石晴男」を名乗った男の本名は榊宗一で、本物の白石とは大学時代からの親友でした。
ふたりは共に脚本家養成講座に所属していましたが、自らの才能に限界を感じた榊はマネジメントコースへと転向します。
友とは別の道のりを歩んでいく榊でしたが、白石が大場輝子と結婚して娘のカオルを授かった後もふたりの友情は変わることはありません。
家庭を顧みない白石に代わって、何くれとなくカオルの面倒を見てあげたのも榊です。
彼女のお食い初めから七五三、更には小学校の入学式に出席したのも実の父親ではなく榊でした。
アメリカへ渡ってHALとして成功して輝子とカオルを迎えに行くことを考えていた白石でしたが、ある日突然の交通事故によってその夢を絶たれます。
死亡届は榊が出して輝子とふたりだけで都内の墓に埋葬しましたが、当時まだ高校生だったカオルには知らせていません。
白石の遺した夢を叶えるために、榊はHALの名義を受け継ぐことを決意しました。
【結】ヒア・カムズ・ザ・サン のあらすじ④
幼い頃からカオルの成長を見守っていた榊の願いは、1度でいいから彼女から「お父さん」と呼ばれることです。
白石のふりをしてカオルに会いに行った榊でしたが、直前になって亡くなった友を裏切ることができません。
榊がカオルに渡そうとしていた手紙から全てを理解した真也は、輝子を交えながら3人で食事をしてみることを薦めてみました。
白石晴男ではなくHALでもなく榊宗一としてカオルと向き合うことを決意した彼は、真也に微笑みながらタクシーへと乗り込んでいきます。
日本での取材と試写会を終えて榊がアメリカへ帰る日、編集部の真也の机に置いてあったのは小さなプレゼントの包みです。
名前は書いてありませんでしたが、真也には触れるだけで贈り主が分かり感謝の気持ちが流れ込んできます。
窓からは飛行機のジェット音が聞こえてきて、空を見上げた真也は近いうちにまたカオルに会いに日本へ帰ってくるであろう榊につかの間のお別れを済ませるのでした。
ヒア・カムズ・ザ・サン を読んだ読書感想
物や場所から残された記憶を読み取るサイコメトラー顔負けの特殊能力を持ちながらも、主人公の古川真也が私利私欲のためには自分の力を使わないところが面白かったです。
あくまでも編集者として作家の繊細な胸の内と原稿用紙に込められたメッセージを汲み取り、プライベートに関しては必要以上に踏み込むことがないストイックな一面には好感が持てます。
「編集者にとって1番大切な仕事は物語に寄り添うこと」という、本書の中に登場するセリフも印象深かったです。
同じ職場で働く大場カオルとの、戦友のような関係性も清々しく感じました。
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