「ストーリー・セラー」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|有川浩

「ストーリー・セラー」

【ネタバレ有り】ストーリー・セラー のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:有川浩 2010年8月に新潮社から出版

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ストーリー・セラーの主要登場人物

彼女(かのじょ)
ヒロイン。 大学の頃から文芸部に所属して執筆に励む。卒業後はデザイン事務所でアシスタントとして勤務しながら小説家になる。

彼(かれ)
彼女と同じ事務所に勤めるデザイナー。 2年間の交際期間を経て入籍する。

ストーリー・セラー の簡単なあらすじ

デザイン事務所で働く 「彼女」 の趣味は小説を書くことでしたが、誰にも読ませるつもりはありません。偶然にも会社の同僚に自分の作品を見られてしまい、その日からは「彼」は彼女にとっては恋人でもありただひとりの読者となります。やがてふたりは夫婦となり彼女の小説家デビューも決まりますが、思わぬ試練が待ち受けているのでした。

ストーリー・セラー の起承転結

【起】ストーリー・セラー のあらすじ①

ふたりだけの小説が世に送り出される

彼が初めて彼女の小説を読んだのは、勤め先のデザイン事務所でひとり居残りで残業をしている時です。

彼女の席に置きっぱなしになっていたUSBメモリーを開いてみると、50ページほどの短編小説が書き込まれていました。

この社内での小さな事件がきっかけになって、彼は彼女のたったひとりの愛読者になります。

間もなくふたりは結婚して、彼女は文芸雑誌で小説大賞を受賞して賞金100万円を手に入れました。

経済的な安定のために会社務めを続ける兼業作家か、創作活動に全てをかける専業作家か。

突如として人生の二者択一を迫られた彼女が選んだ道のりは、退職して本格的に作家デビューをして執筆に集中することです。

処女作は大手の出版社から破格の部数で出版されて、高額の印税が夫婦の手元には転がり込んできました。

小説からエッセイに対談まで、次から次へと原稿依頼が舞い込んでいきます。

そんな彼女の成功を妬んだり、快く思わない人たちがいるのも哀しい現実です。

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【承】ストーリー・セラー のあらすじ②

彼女の足を引っ張る者たち

ある時にフリーライターを名乗る人物から、彼女は取材を申し込まれます。

本来であれば事前に原稿チェックをするはずでしたが、一向にゲラは回ってきません。

そのまま雑誌は発売されて、紙面では彼女に対するネガティブキャンペーンが組まれていました。

編集プロダクションに問い合わせてみると、件のライターの身元が判明します。

大学時代に彼女が所属していた文芸部の部長で、彼女の小説家としての活躍を逆恨みしての悪質な嫌がらせです。

1度も会ったことがないような遠い親戚から、金を無心する電話やメールも届くようになりました。

極め付きは若い頃は文学青年だったという、彼女の実の父親です。

娘に対する誹謗中傷はエスカレートしていく一方で、彼女はすっかり参ってしまいました。

受診した心療クリニックで医師から告げられた病名はうつ病で、彼女は服薬治療と通院を続けるようになります。

それでも彼女にとっては、小説を書くことが唯一の生き甲斐です。

【転】ストーリー・セラー のあらすじ③

考えれば考えるほど寿命が減っていく

彼女が精神的なバランスを失って救急車で搬送されたのは、ある日曜日の夕暮れ時のことでした。

1時間近くも病院をたらい回しにされた挙げ句、搬送先の夜間病院では点滴を受けただけで追い出されます。

精密検査を受けるために紹介された大学病院で、彼女の症状に名付けられたのは「致死性脳劣化症候群」です。

思考をすればするほど生命を維持するために必要な脳の領域が失われていき、最悪の場合には死に至ります。

この病気にとっては、複雑な物語を生み出す小説家という仕事はもっとも不適切な職業でした。

彼女はなるべく深く思いつめないように気をつけて、料理や掃除をルーティンワークとしてこなして日常生活を送るようになります。

職業としての作家をキッパリと諦めた彼女でしたが、小説を書くことそのものは捨てられません。

1番読ませたい相手のためだけに彼女が執筆を再開したその時は、 いつ降りてくるか分からない死を穏やかに受け入れた瞬間でもありました。

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【結】ストーリー・セラー のあらすじ④

最後の物語

その日彼が家に帰ると、彼女は机の上でうたた寝をするかのように亡くなっていました。

彼女の生前のメッセージを思い出した彼はノートパソコンを立ち上げて、中に残されていた原稿を出版社の担当に手渡します。

葬儀は予め打ち合わせしておいた通りに、彼女の身内からは母親だけが参列する密葬形式です。

彼の寝室のサイドボードには正絹で包んだ白木の箱に入った遺骨が安置されていましたが、今でもまだ納骨する気持ちにはなれません。

担当編集者が彼女の遺稿を自社の小説誌に掲載させた途端に、賛否両論の凄まじい反響が巻き起こりました。

中には死者を冒涜する行為だと怒鳴り込んでくる愛読者もいましたが、彼女が生きていたら笑い飛ばしたことでしょう。

ある日その編集者が、 彼女にとって最後の本となった作品集を届けてくれます。

短編と絶筆原稿にコラムやエッセイも一緒に纏めて1冊分になった中には、「ストーリー・セラー」というタイトルの夫婦の物語が収録されているのでした。

ストーリー・セラー を読んだ読書感想

小説家としての才能に恵まれながらも、自宅のパソコンで自分だけのために執筆活動を続けてUSBに記録しているヒロインの慎ましさには好感が持てました。

ある日突然に好奇心旺盛な同僚に秘密を覗かれてしまいながらも、お互いに惹かれ合っていく展開も微笑ましく映ります。

たったひとりの読者に見せるためだけに書いた小説が、何時しか多くの人たちの心を掴んでいく様子が感動的です。

作家としての彼女の成功に対して、謂れのない誹謗中傷が浴びせられていく後半パートには胸が痛みます。

愛する人が遺した想いを、作品として世の中に伝えていく彼の決意にはホロリとさせられました。

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