「ビブリア古書堂の事件手帖4 ~栞子さんと二つの顔~」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|三上延

「ビブリア古書堂の事件手帖4 ~栞子さんと二つの顔~」

【ネタバレ有り】ビブリア古書堂の事件手帖4 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:三上延 2013年2月にアスキー・メディアワークスから出版

ビブリア古書堂の事件手帖4の主要登場人物

五浦大輔(ごうらだいすけ)
物語の語り手。ビブリア古書堂のアルバイト店員。

篠川栞子(しのかわしおりこ)
ヒロイン。ビブリア古書堂の店主。妹・文香と2人暮らし。

篠川智恵子(しのかわちえこ)
栞子の母。10年前から消息不明。

来城慶子(きしろけいこ)
専門学校経営者・鹿山明の愛人。明から別荘と江戸川乱歩のコレクションを譲り受ける。

田辺邦代(たなべくによ)
慶子の妹。

ビブリア古書堂の事件手帖4 の簡単なあらすじ

ビブリア古書堂が大きな揺れに襲われてから20日余り、大規模な震災を古書取引のチャンスと睨んだ篠川智恵子が海外から帰ってきます。彼女が狙っているのは、江戸川乱歩にゆかりのある貴重品が収められている古びた金庫です。アルバイトの五浦大輔と共に母親との知恵比べに挑んでいく栞子は、重大な決断を迫られることになるのでした。

ビブリア古書堂の事件手帖4 の起承転結

【起】ビブリア古書堂の事件手帖4 のあらすじ①

栞子さんの母の影と江戸川乱歩のお宝

地震発生から20日ほどたったある日、ビブリア古書堂で店番をしていた五浦大輔は店主・篠川栞子の母である智恵子から電話を受けました。

次の日には智恵子の知人という女性が、江戸川乱歩の古書に纏わる依頼を持ち込んできます。

お店のライトバンで鎌倉市雪ノ下にある洋風の別荘に向かいますが、依頼人の来城慶子は車椅子に乗り半年前の喉頭がんの手術の影響で喋ることができません。

代理で栞子の質問に答える慶子の妹・田辺邦代から聞いたのは、この別荘を共同管理していた鹿山親子の存在です。

父の総吉は実業家で息子の明は専門学校の経営者、ふたりとも乱歩の熱心な愛読者、明が1年前に亡くなったときにこの家と蔵書を遺言で相続したのが彼の愛人だった慶子。

慶子は家の中にある本を全て売る条件として、江戸川乱歩に縁のある珍しい品が入った金庫を解錠することを栞子にお願いします。

金庫は旧日本軍の特注品になり、鍵とダイヤルと暗証番号の3つが揃わないと開きません。

【承】ビブリア古書堂の事件手帖4 のあらすじ②

ふたつの顔を持つ男が残したメッセージ

ダイヤルの数字を書いたメモは既に来城慶子が別荘で見付けていましたので、藤沢市大鋸にある鹿山家のお屋敷に鍵を探しに行きました。

鹿山明の息子で現当主の義彦は、教育者の父が女性を囲っていたことを公にしたくないために力になってくれません。

義彦の妹に当たる直美は辻堂の古本屋「ヒトリ書房」で働いていて、店主の井上は栞子と旧知の仲です。

井上の協力を得て直美に書斎の仕掛けを動かすように仕向けて、隠し扉の位置を突き止めます。

子供たちの前では威厳たっぷりとした父親の鹿山明も、大好きな江戸川乱歩を読んでいる時には童心に返っていたのでしょう。

秘密の隠し棚に残されていたのは、面と向かっては言えなかった娘へのメッセージです。

直美と井上の仲も今後は上手くいきそうで、栞子と大輔はふたりから感謝されました。

乱歩の稀覯本と共に金庫の鍵を手に入れた栞子たちは、慶子に報告するために雪ノ下へ急ぎます。

別荘のバルコニーでふたりを待ち受けていたのは、黒いコートを身に纏って佇む篠川智恵子です。

【転】ビブリア古書堂の事件手帖4 のあらすじ③

ふたつの顔を持つ女と智恵子の誘惑

ビブリア古書堂の母屋で10年ぶりに娘たちと再会を果たした智恵子は、金庫の暗証番号と引き換えに慶子の蔵書の買い取りの山分けを提案してきました。

母親に対してわだかまりのある栞子はキッパリと断り、明日の午後までに大輔とふたりで暗証番号を入手することを決意します。

手掛かりになるのは江戸川乱歩の短編小説「二銭銅貨」にちなんで、鹿山明が作ったレプリカのコインです。

大輔の何気ないひと言がきっかけになって栞子は暗証番号を解読しますが、中にあった乱歩の直筆原稿を田辺邦代に横取りされてしまいました。

彼女こそが本物の「来城慶子」で、車椅子姿で口がきけない女性が妹の田辺邦代になります。

鹿山明のように、慶子もふたつの顔を使い分けることにスリルを感じていたようです。

栞子を上回る古書の知識と洞察力を秘めた智恵子には全てお見通しで、栞子を慶子を追いかける長期間の旅へと誘い出します。

母親の話に一瞬だけ心惹かれた栞子でしたが、次の日に大輔とデートの約束をしていたことを思い出しました。

【結】ビブリア古書堂の事件手帖4 のあらすじ④

果たされたふたつの約束

栞子に拒絶された智恵子は、慶子に追い付くために鎌倉駅の方角へ去っていきました。

海外で智恵子にお世話になったというせどり屋の志田の話によると、彼女は絶対に手に入らないという古書を今でも探し続けているようです。

慶子の行方も依然として不明なままで、雪ノ下の別荘には田辺邦代が息子と一緒に住むことになります。

約束通り慶子の乱歩関連の蔵書は全てビブリア古書堂が買い取ることになり、地震で被害を受けたお店の改修費用も心配ありません。

栞子と大輔との個人的な約束も、次の日の定休日には律儀に果たされます。場所はみなとみらいの観光スポットやレストランで、栞子は珍しく饒舌です。夕食の後に地元の名所である巨大な時計型の観覧車に乗った時、大輔は初めて栞子に自分の気持ちを伝えます。

初めて会った時から彼女のことが好きだったこと、店長と店員ではなく恋人同士として付き合って欲しいこと。大輔が栞子の返事を聞くには、しばらく時間がかかりそうです。

ビブリア古書堂の事件手帖4 を読んだ読書感想

夕暮れ時の北鎌倉駅のプラットホームから電話越しに語りかけていた篠川智恵子が、シルエットだけを披露するオープニングが幻想的でした。

ヒロインの栞子を凌駕するほどの知識と推理力を誇り、自分の欲しいものを手に入れるためには手段を選ぶことのない冷徹さが不気味です。稀代の推理小説家・江戸川乱歩に関する蘊蓄やこぼれ話が、盛りだくさんで楽しめます。

乱歩が産み出した怪人二十面相のように、表と裏のふたつの顔を使い方けながら生きる人たちの姿が心に残りました。

栞子さんと大輔の相も変わらぬ関係が、動き出していく予感に満ちたラストも微笑ましいです。

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