「バイバイ、ブラックバード」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|伊坂幸太郎

「バイバイ、ブラックバード」

【ネタバレ有り】バイバイ、ブラックバード のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:伊坂幸太郎 2010年8月に双葉社から出版

バイバイ、ブラックバードの主要登場人物

星野一彦(ほしのかずひこ)
主人公。会社員。5人の女性に別れを告げる。

繭美(まゆみ)
星野を「あのバス」に連れて行く案内人。

霜月りさ子(しもつきりさこ)
銀行員。

神田那美子(かんだなみこ)
税理士事務所に勤務する。

有須睦子(ありすむつこ)
女優。

バイバイ、ブラックバード の簡単なあらすじ

5人の女性と同時にお付き合いをしていた星野一彦の前にある日突然現れたのは、大きな身体にデリカシーの欠片もない繭美です。「あのバス」に乗ったら2度と帰ってくることが出来ないと知った星野は、女性たちに会いに最期の時を一緒に過ごします。5人目と別れていよいよバスに乗り込む星野は、繭美にひとつのお願いをするのでした。

バイバイ、ブラックバード の起承転結

【起】バイバイ、ブラックバード のあらすじ①

大女と五股男

廣瀬あかりが星野一彦から別れを切り出されたのは、12月の夕暮れ時です。

場所はあかりのマンションで、星野は繭美という女性を連れてきました。身長190センチで体重は200キロ、髪の毛はブロンドで黒いスーツ姿の繭美は賭けを持ちかけてきます。

星野が近所のラーメン屋でジャンボラーメンの大食いに挑戦する、成功したら繭美はふたりの前から消える、失敗したら星野を連れて行く。

あと一歩で食べきれるところだった星野は、隣のテーブルで大食いにチャレンジしていた見ず知らずの男を助けたために挑戦失敗となってしまいました。

あかりは星野の優しさと不思議さを再確認して、別れることを納得します。

その足でふたりが向かった先は、シングルマザーの霜月りさ子のマンションです。

彼女は大手銀行に勤めながら、小学1年生になる息子の海斗を女手ひとつで育てていました。

星野はりさ子へのクリスマスプレゼントをサンタクロースの格好をした繭美に託し、次の女性の家に向かいます。

【承】バイバイ、ブラックバード のあらすじ②

女泥棒と計算女

3人目の如月ユミはこれまでのふたりとは違って、実にあっさりと別れ話を受け入れてくれました。「それどころじゃない」という彼女の正体は女泥棒で、星野は黒いつなぎを身に纏ってぐるぐる巻きのロープを担いで夜の街へと消えていく後ろ姿を見送ります。4人目の神田那美子は乳ガンの疑いがあり、精密検査の結果が分かるのは2日後です。どうしても検査結果が気になる星野は年恰好が同じくらいの女性を替え玉に仕立て上げて病院に送り込みましたが、彼女の元カレが那美子の担当医師であったために作戦は失敗してしまいました。

諦めきれない星野は自らが病院の中に侵入して、待合室にいる那美子の様子を覗きに行きます。子供の頃から算数が大好きだった彼女には、数字で物事を考える癖がありました。

那美子の順番待ちの整理券の番号は「115」で、「カズヒコ(一彦)」と読めなくもありません。

にこやかな表情を浮かべながら番号札を見ている那美子に安心した星野は、5人目の彼女に会いに行きます。

【転】バイバイ、ブラックバード のあらすじ③

夢を叶えた少女と叶わなかった少年の夢

有須睦子が女優になったのは、小学生時代に近所にいた幼稚園児に薦められたことがきっかけでした。大きくなったら「パン」になりたいと言っていたその男の子の顔を、本当に女優になってしまった今では思い出すことが出来ません。

スケジュールが多忙な彼女が星野と会えるのは数ヶ月に1回程度で、那美子を後回しにしていたのも撮影中で忙しかったからです。

撮影現場にまで押し掛けた星野と繭美の前で、那美子のマネージャーは「バイ・バイ・ブラックバード」を口ずさみます。

マネージャーの蘊蓄によればブラックバードは不吉や不運を指していて、別れは幸せの予感とのことです。那美子が出演する映画の監督に気に入られた繭美は、エキストラとして作品に出演することになりました。

繭美の夢が映画に出ることだったことを聞いた星野は、自らの少年時代の夢を打ち明けます。

子供の時にはパンになりたかったという星野の思い出話を聞いた那美子は、思わず涙を流してしまうのでした。

【結】バイバイ、ブラックバード のあらすじ④

バスに乗った星野と役目を終えた繭美

星野が繭美に付き添われるようになってから2ヶ月、いよいよ「あのバス」に乗る日がやって来ました。

別れてきた5人を利用すればバスに乗らずに済むかもしれませんが、星野は迷惑をかけたくないために彼女たちに助けを求めることはありません。 繭美は星野が女性たちと別れる度に、いつも持ち歩いている辞書から単語を塗り潰しています。

星野はバスに乗る直前に繭美と賭けをしました。

もしも彼女の辞書に「人助け」や「助ける」といった単語が残っていたら、バスを追いかけて星野を助ける。遠ざかるバスを見送りながら繭美は辞書を開きますが、「助っ人」も「救う」も見当たりません。

繭美はたまたま通りかかった大学生を呼び止めて、彼が乗っているバイクを強引に借ります。

もしも10回ペダルを蹴ってエンジンがかからない場合は星野を見捨てる、かかった時にはバイクでバスを追いかける。

繭美は車道の先を見つめながら、バイクに跨がって右足でペダルを蹴り続けるのでした。

バイバイ、ブラックバード を読んだ読書感想

二股ならぬ五股を掛けて恋人たちを振り回していながらも、不思議と主人公・星野一彦のキャラクターには憎めないものがありました。

突然の別れを切り出されながら、どろどろの男女の愁嘆場を演じることなくそれぞれの道のりを歩んでいく女性たちの生きざまも美しかったです。

大きな身体からありったけの毒を吐き出しつつも、甘いものには目がない謎めいた女性・繭美も魅力溢れています。

全編を通して傍観者に徹していた繭美の胸の内に初めて人間らしい感情が涌いていくシーンと、最後まで明かされることのない「あのバス」の行方が心に残りました。

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