「八日目の蝉」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|角田光代

「八日目の蝉」

【ネタバレ有り】八日目の蝉 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:角田光代 2007年3月に中央公論新社から出版

八日目の蝉の主要登場人物

野々宮希和子(ののみやきわこ)
同僚の秋山丈博と不倫関係になり妊娠するが、中絶をして子供ができない体になる。その後、丈博の子供を連れ去り宮田京子と名前を変え逃避行を続ける。

秋山恵理菜(あきやまえりな)
秋山丈博と秋山恵津子の娘だが、希和子に連れ去られてしまい薫(かおる)と名付けられる。幼少期を彼女の娘として育てられる。

秋山丈博(あきやまたけひろ)
娘をさらわれて慌てるが、同時に希和子との不倫が世間にばれるのを恐れている男。

秋山恵津子(あきやまえつこ)
丈博の嫁。夫の不倫相手である希和子を恨み、彼女に暴言などの嫌がらせをする。

安藤千草(あんどうちぐさ)
宗教施設でマロンと呼ばれている少女。施設で幼い恵理菜と知り合いその後ある事情で再会する。

八日目の蝉 の簡単なあらすじ

不倫相手の子供をさらった女性の長い年月の逃避行と、その後の顛末を描いています。小説はヒットし、テレビドラマになり映画化もされて世間の大きな話題となりました。希和子と恵理菜の姿は誰の目にも親子に見えてしまい、逃亡先の各地で誘拐犯だとは思われず多くの人の助けを受けます。一方、娘がいなくなった秋山家は複雑な家庭環境でした。恵理菜は数奇な運命を辿って大人へ育ちます。

八日目の蝉 の起承転結

【起】八日目の蝉 のあらすじ①

赤ん坊の笑顔と誘惑

秋山丈博との不倫関係で、妊娠と中絶をして子供が産めない体になってしまった野々宮希和子は、秋山丈博と恵津子夫妻の家に侵入します。

もしかしたら、自分の娘になっていたかもしれない赤ん坊の秋山恵理菜を一目見たいだけでしたが、自分に笑いかけてきた赤ん坊を思わず連れ出してしまいます。

希和子は誘拐犯になるのですが、赤ん坊を連れ出した直後にその家が火事になり、恵理菜の行方と誘拐犯を探す警察の捜査はかなり遅れます。

希和子は赤ん坊を連れて同級生の家に泊まりますが、同級生からは親子にしか見られません。

その後、赤ん坊の恵理菜に宮田薫という名前をつけて、自分は宮田京子と名乗り、さらに遠くに逃亡します。

希和子は逃亡先で立ち退きを迫られている家に一時的に住みます。

立ち退きをせずに居座っているその家の中村とみ子は、周囲とほとんど関わりがなく、希和子と赤ん坊の存在は周囲には分かりません。

そして希和子は赤ん坊を連れて近所に出かけると、自然食品を販売しているエンジェルホームという団体と遭遇します。

【承】八日目の蝉 のあらすじ②

逃亡と一時的な安息の日々

警察が恵理菜と誘拐犯を探していることを知った希和子は、エンジェルホームが身を隠すための潜伏先になるのではないかと考え、怪しいと思いながらもエンジェルホームという団体に入ります。

エンジェルホームは女性しかいない宗教団体であり、日本各地から女性を集めていました。

希和子と恵理菜は、宗教という特殊な環境でしたが、警察の目から逃れて安心した生活の日々を送ります。

幼い恵理菜は施設でマロンと呼ばれている少女の安藤千草と仲良くなります。

しかし、世の中は宗教団体への目が厳しくなっており、ついにはエンジェルホームは警察の捜索を受けることになります。

希和子はこのことに焦り、誘拐がばれることを恐れ、エンジェルホームから離れて逃亡することを決意します。

施設からの逃亡は成功し、フェリーで小豆島に着いてから各地を転々とします。

希和子はエンジェルホームで沢田久美という女性と仲良くなりましたが、久美の母親は小豆島で蕎麦屋をやっていたので、そこに向かいました。

自然と海が綺麗な小豆島の蕎麦屋で働きながら、希和子は恵理菜を育て安息の日々を送ります。

【転】八日目の蝉 のあらすじ③

逮捕とその後

小豆島での安息の生活はずっと続くように思えましたが、「虫送り」というお祭りに参加した後に急な変化が起こります。

お祭りで希和子は写真を撮られてしまうのですが、希和子が綺麗に写ったその写真は周りから好評でした。

ところがそれにより、警察に希和子の行方が知られてしまいます。

希和子はフェリーの上で恵理菜(薫)と引き離されて警察に連行されます。

それから年月が過ぎ、秋山家に戻った恵理菜は大学生となり一人暮らしをしていました。

居酒屋でアルバイトをしていた恵理菜は、ある日安藤千草と再会します。

千草はマロンだと説明しますが、恵理菜には彼女の記憶がありません。

秋山家に無事に戻った恵理菜ですが、自分の本当の家のはずの秋山家は居心地の悪いものでした。

そして大学生になってからは実家を離れて一人暮らしをしています。

彼女は千草もマロンも全然覚えていませんが、渋々自分の家に千草を招きます。

千草はエンジェルホームで生活したことを本にするため、取材で恵理菜のところに来たと言います。

ですが恵理菜からは幼少期の記憶が消えていました。

【結】八日目の蝉 のあらすじ④

運命の繰り返しと帰還

恵理菜は塾講師の岸田と不倫をしていました。

そして岸田の子供を妊娠します。

千草の話や事件の記録から、希和子のことを知った恵理菜でしたが、希和子と同じ運命を辿っている自分に愕然とします。

しかし、希和子のように中絶はせずに子供を産むことを決意します。

そのために岸田とはきっぱり別れます。

千草は妊娠している恵理菜を助けようと考えて、彼女の新しいアルバイトなどを探したりします。

いつの間にか、恵理菜と千草は親友同士になっており、2人は旅行をすることを考えます。

その旅行先は、2人が子供の頃に過ごしたエンジェルホームや小豆島を巡ることでした。

警察の捜索を受けたエンジェルホームでしたが、旅行で行ってみると現在も存在しているようです。

その後、小豆島へ向かうために2人はフェリー乗り場でフェリーを待ちます。

そこで恵理菜は幼少期を思い出したのか、小豆島の方言を言いながら話をし出します。

同じフェリー乗り場では、警察に捕まり刑務所での刑期を終えた希和子がいました。

希和子はフェリー乗り場の近くでパートの仕事をしていました。

仕事後にフェリー乗り場に来るのが習慣なのです。

両者ともお互いの存在に気づきませんが、希和子は薫のことを考え、恵理菜は妊娠した自分の子供のことを考えていました。

八日目の蝉 を読んだ読書感想

多くの有名小説を生み出している角田光代さんですが、今作は特に有名です。

母性をテーマにしたとのことですが、宗教施設に逃れて来る前半は、スリリングなサスペンスとして読めますし、実の母親に育てられることが本当に幸せなのか?という重い問題も考えさせられてしまい、いろんな角度の面から読める小説です。

ラストでは、恵理菜と希和子は結局再会することなく終わりますが、この辺りは深い余韻が残るシーンとなっています。

2人を再会させて欲しいと思った読者が多かったかもしれませんが、希和子は犯罪を犯した身ですので、簡単に再会してしまうのは何か違う気がしました。

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